第13話 クソガキ登場
「惜しい?」
話の流れは予想がつくが、一応、先を促す。
サルートも、それを察したらしい。
両手を胸の前にかざすと、言った。
「
「ほお。じゃあ誰が、俺を追い出してくれるんだ? ――その役目を、誰が?」
マップと『鑑定』で見た限り、旅隊の中で、サルートはそれを任せるに足る順位の強者だ。
では、サルートでないとするなら、誰が?
「『彼ら』だ」
サルートが、次のタバコに火を点けた。
「護衛任務は、たいがいが寄せ集めだ。腕も性根もバラバラな寄せ集めの連中が、折り合いを付け、それが付けられないやつは切り捨てながら任務を全うする……そういうもんだ。その点、この旅隊はかなりのもんだ。最初から
「俺がそうだと?」
「いや、あんたは違う。あんたはもう1つの方……とにかく、そういう奴らを『彼ら』は見逃さない。すれ違った商人に目配せしたり、休憩中にほんの僅かのあいだ姿をくらましたり……そういうのを『彼ら』は見逃さず、夜のうちに始末する。そいつらが何を企んでたのか、俺たちが知るのは何もかも終わった後だ」
「ほお……」
「そして『彼ら』が始末するのは、そういう奴らだけじゃない。もう1つ……あんたはこっちの方だ。『彼ら』があんたを始末しようとするだろうと、あんたが『彼らに』始末されるだろうと判断するに足る、
「もう1つの方の……理由?」
「『強さ』さ」
「…………」
「あまりにも強すぎる誰かさんを『彼ら』は見逃さない――旅隊への帯同を許さない。
火が震えている。
サルートの持つ、タバコに点る火だ。
指先から始まった震えが、たちまちサルートの、太い全身を支配していた。
突然、現れた気配が言った。
「おじさん、強いんだって?」
声は、サルートの背後からだった。
その気配に、俺も震える。
「セシリアのお気に入りなんだって?」
震えが、止まらない。
「ウラガンや、ミギルにも一目置かれてるんだってね――気に食わないなぁ」
サルートの背後から現れたのは、二人。
二人の、子供だった。
どちらも顔立ちは美しく、着ている服も上等なものだ。
一人の陰にもう一人が隠れるように立ち、こちらは気が弱そう。
そして前に立つ、さっきから喋ってるもう一人。こっちは言うまでも無いだろう――見事なまでの、クソガキ面だった。
「でも信じられないよねえ。ザコ面だしぃ。ぶるぶる震えちゃってるしぃ。ザーコザーコ。怖くて何も言い返せな~い」
クソガキがクソガキ的な語彙をクソガキ的な声で放つと、サルートがタバコを落とした。
粘っこそうな汗を流しながら、驚愕の目で俺を見てる。
ああ、俺は――
顔を伏せ、サルートのタバコを目で追いながら、歯を剥き出し、俺は笑っているのだろう。
『うわあ、こわ~い。おじさん、顔が真っ赤になっちゃうよ~』
そして、ボコボコにしてやるのだ。
マップを見ると、
1つは、イベントの起点となるNPC。
そしてもう1つは――レイドボスだ。
クソガキが言った。
「ほら、強いんでしょ? 震えてないで来なよ――
ここは
だから、垢BANの心配はない。
だから、暴言を吐いても無問題――俺は言った。
「てめえが来いよ、クソガキ……ぶっ殺してやる」
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