第423話 ラビスレさんのルーティン
町民のみなさんがラビスレさんのループトークを流さず受け止めていたころの話
ラビットスレイヤーこと、ラビスレさんの朝は早い。
「ぐうぐう・・・ホーンラビットか・・・ホーンラビットが・・・ぐうぐう」
夢の中でもホーンラビットの話をしながら、ブリーフ一丁で寝ているラビスレさん。
しかし、枕の横にはいつ何があってもすぐに装備できるようにフルフェイスと鉄のパンツをおいている。
いつもの起きる時間になり目を覚ます。
「よく寝た 今日もいい朝だ」
起き上がるとすぐに宿屋の自室をチェックする。
「ホーンラビットが現れた形跡はないな」
幾重にも張り巡らせたホーンラビット用のトラップ。
宿屋の中にホーンラビットが侵入してきたとき用に毎日トラップを仕掛けている。
毎朝チェックするがトラップにホーンラビットが掛かったことは一度もない。
そのチェックが終わると
腰に手を当てコップ一杯の水を一気に飲み干す。
ゴクゴク ゴクゴク
「うまい・・・」
鍛えぬかれた筋肉。
お腹はシックスパックに割れている。
履いているブリーフはお尻のところにデフォルメされたホーンラビットが刺繍されている。
そして、ラビットブリーフの上に鉄のパンツを装備する。
そして鏡を見て確認する。
「アイム ウェアリング アイアンパンツ・・・お尻の防御は完璧だ」
鉄のパンツを履く理由は、ラビスレさんの父親がホーンラビットにお尻を刺されて重症を追ってしまったからだ。
慎重に装備のチェックをして
そして、フルプレートメイルを装着する。
「今日もホーンラビットを狩りに行く」
鏡の自分に語りかけ宿屋を出る。
ギルドまで歩いて10分で到着する距離なのだが、ラビスレさんがギルドに到着するのに2時間かかる。
それは・・・
「ラビスレさん おはよう」
「ホーンラビットか?」
「は?」
「ホーンラビットがおはようとしゃべったのか」
「ちがいますよ。あなたにおはようです」
「そうか」
「今日も頑張ってくださいね」
「ホーンラビットか?」
「は?」
「ホーンラビットが頑張るのか」
「そんなわけないでしょ。あなたに頑張ってですよ」
「そうか」
「応援してますよ」
「ホーンラビットか?」
「は?」
「ホーンラビットを応援し──「何でもいいから頑張って!」・・・そうか」
トコトコ
別の町民
「ラビスレさん 今日も朝早いですね」
「ホーンラビットか?」
「え?」
「ホーンラビットが朝早く現れたのか」
「あなたですよ」
「そうか」
「今日はど─「ホーンラビットか?ホーンラビットが─」まだ何もいってないでしょ」
「そうだった・・・すまない」
たまに、早とちりすることもある。
トコトコ
さらに別の町民
「ラビスレさん おはよ──」
「ホーンラビットか?ホーンラビットが──」
という風に町民1人1人にループトークをするため、なかなか進まないのだ。
ラビスレさんの朝が早いのはこのためだった。
やっとギルドに到着すると受付嬢にホーンラビットの討伐依頼がないか訪ねる。
「ホーンラビット討伐の依頼を受けたい」
「北の草原に集団で現れたみたいです。討伐依頼が出ています」
「ホーンラビットか?ホーンラビットが集団で現れたのか」
「はい。ですので北の草原に─「ホーンラビットか?ホーンラビットが北の草原に現れたのか」─だからそう言ってます!」
「そうか」
「討伐をお願いしてもい─「ホーンラビットか?ホーンラビットの集団を討伐するのか」だからそうですって!」
「わかった・・・全滅させてくる」
ラビスレさんはギルドに到着すると受付嬢にもループトークをして依頼を受ける。
そしてホーンラビット討伐に出発し・・・
しなかった。
まだ、出発しない。
「おやじさんの串肉を買いたい・・・」
串肉屋の屋台に到着。
「まいど!いつものやつだね」
「そうだ・・いつものやつを頼む」
オヤジさんの串肉屋台に通い詰めているラビスレさんは「いつものやつ」で話が通る仲になっている。
約1時間後・・・
「ホーンラビットか、ホーンラビットが──」
「串肉買ったら早く討伐行けよ!毎日毎日1時間もホーンラビット、ホーンラビット言われるのは疲れるんだよ!」
「ホーンラビットか、ホーンラビットがオヤジさんを苦しめてるのか・・・」
「おめーさんだよ!」
1時間近く、串肉屋の親父さんにループトークで絡み、ストレスをバリバリ与えたあと、やっとホーンラビットの討伐に向かうのだった。
このときホーンラビットの狩りに行くのは昼近くになっている。
狩りを始める前に串肉を食べて、
そして慎重に装備のチェックをして2時間・・・
それから狩りが始まる。
しかし、独特の戦い方でホーンラビットを全滅させる。
ラビスレさんは今日もホーンラビットの脅威から町の人々を守るのだった。
討伐依頼を達成させた帰り
トコトコ
「おやじさん 今日は調子が良かった。夕飯に串肉を3本買いたい・・・」
「また来たのか。頼むから1時間もホーンラビット、ホーンラビット言い続けるのはやめてくれよ」
1時間後・・・
「ホーンラビットか、ホーンラビットが・・・」
「やめてくれっていったのに! もう帰れよ!」
「そうか・・・」
今日のオヤジさんのストレスはマックスを振り切っていた。
ラビスレさんのホーンラビットとの戦いは つづく・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます