第141話 武術の基礎
そうだ! いいことを思いついた。
あれをやってみよう。
無駄にはならないだろう。
そもそも、俺は武術なんてまともに教えられない。
この際なんでもいい。
この場を乗り切ろう。
「トンチキ君。まず普段の生活に生かせる、窓ふき 床磨き 柱ふき 薪割り 土手登りを覚えよう」
「それが武術に関係あるだか?」
「ある!・・・たぶん」
「よくわかんねーけど オラやってみる」
「トンチキ君。動きをしっかり見て そのとおりの動きをするようにね」
「わかっただ」
「疲れても楽な動作をしないようにね」
「でーじょーぶだ」
「窓ふきは、こんなふうに大きく円を描くように掃除してね」
窓ふき動作(右手は胸の前から時計回りに。左手は胸の前から逆時計回りに窓をふく)
「床磨きは、こんなふうに大きく円を描くように掃除してね」
床磨き動作(右手は胸の前から逆時計回りに。左手は胸の前から時計回りに床をふく)
「柱ふきは、こんなふうに上下に掃除してね」
柱ふき動作(右手も左手も同じ。肘を伸ばして曲げずに上に、下に柱をふく)
「薪割りは、こんなふうに片手で割ってね」
薪割り動作(右手も左手も同じ。片手で斧をもって薪を割る)
「土手登りは、川の土手をこんなふうに登ってね」
土手登り動作(右足も左足も同じ。片足を上げて外に広げて登る)
生活に役立つ5つの動作を教えた。
「どんなに疲れてもこの動作をするようにね」
「これで強くなれるだか。おらワクワクすっぞ」
「と、とりあえず。ほんとうに正確にやって身体に覚えさせることが大事だよ」
「オラ楽しみだ。ヘイサクさまに武術を教わって、村を守れるようになるだ」
「お、応援してるよ」
「オラ、ベコと肥やしのことしか分かんねーけど、しっかり修行すっぞ」
「もう少ししたら、村を離れるけど、戻ってくるまでに その動きをマスターしておいてね」
「オラやるだ。やっほー」
トンチキくんはハイジャンプして喜んでいる。
彼は すごいやる気がある。
生活がしやすくなるために教えただけって わかったら怒るだろうか。
まずい気がしてきた。
まあ、掃除と薪割りはうまくなるからいいだろうか。
土手登りも体力はつくし生活がしやすくなるのは間違いない。
とりあえず なんとかなるだろう。
そもそも
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「まず普段の生活に生かせる、窓ふき 床磨き 柱ふき 薪割り 土手登りを覚えよう」
「それが武術に関係あるだか?」
「ある!・・・たぶん」
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武術に「関係ある」とは言い切っていない「たぶん」って言って濁したし、
生活に生かせる技を覚えようと言ったのだから嘘ではない。
あとのことは王都から帰ってきたら
考えよう。
うまくいかなかったら あきらめてもらおう。
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ナレーター キー〇ン山田風
しかし、トンチキ君は死に物狂いで「窓ふき 床磨き 柱ふき 薪割り 土手登り」をやり続けるのだった。
ヘイサクの運命は いかに!
王都から帰還後につづく・・・
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