第121話 3度目のドンセシュ町





3度目のドンセシュ町にきた。


約束の品は仕入れて前回と同じメンバーだ。


子爵の屋敷に行く前に町で露店を開いて料理を売りさばいた。


前回と同じカレー シチュー 焼きそばだが

ケブヤが焼きそばを焼きはじめると一目みようと人だかりができた。



料理は今回も大好評ですぐに完売した。


前回と今回の行商で借金の足りない分の金貨4枚は補えた。



・・・・



子爵の屋敷に行き、子爵と会うと

もう一人、30代の男性がいた。


「はじめまして。長男のキース・ニゼクブアでございます」

子爵家の長男が同席していた。



ネカオ子爵と長男に挨拶して


「約束の品物でございます」

砂糖 塩 コショウ 味の素

を出した。


すると


「ご用意できたのですね。すばらしい!しかし、うーん・・・前に提示した金額は訂正させていただきたい。わたくしに相談なく父上が勝手に言ったことでございますので」

長男が言う。



「どのような訂正でしょうか」


「金額を半分にしてもらいたいのです」



「半分?約束の金額は金貨143枚ですが」


「申し訳ございませんが72枚でお願いします」


長男ニゼクブアがニヤニヤしながら言う。



半分・・・




「申し訳ございませんが取引はなしと言うことで失礼いたします」


さすがに半値にしてくれと言われたら取引はしたくない。




帰ろうとすると


「ふぉっふぉっふぉっ。チマキテイカ男爵かつらが似合ってますな」


「なっ!」

マッキーが見抜かれて驚いている。



「伯爵さまも人が悪い。町の代官を変装させて同行させるとは。おまえたちがペッリギニ町からきた行商人だということはわかっている」

ネカオ子爵が言う。


前回、馬車はケブヤとモブズに預けて子爵の屋敷にきた。

どこから来たのかも秘密にしてたのに。


門番に見せたギルド証の情報が子爵に届いたのか。


なんにしても調べがついていたようだ。


「大変失礼いたしました。しかし、伯爵さまの命令で変装して同行したわけではありません。ネカオ子爵さま 取引は約束の金額でお願いできませんでしょうか」

カツラをとったチマキ町長が交渉する。




「半額にしてくれないと、そちらが困るのではないか。なぁニゼクブア」


「はい。カタユ伯爵のご子息は元気でございますか? このお薬を代金の半分でお譲りします」


子爵ズはニヤニヤしている。




なるほど。


こいつら薬を ちらつかせて足元を見てやがる。


半額にさせて、さらに薬を残りの半額でゆずるってわけね。


ようするに薬1つと こっちの品物すべてを交換ってわけか。



「焼きそばカレーシチューという珍しい料理があるそうだな

安心しろペッリギニ町ごと わしがもらってやる ふぉっふぉっふぉっ」


町を狙ってやがる。


ノモコは血管が切れそうなほどの怒りの表情で子爵ズを睨んでいる。



そろそろ利子返済が出来なくなるころだと思ってるな。


子爵はこっちが白金貨3枚以上あることを知らない。 

利子しか払えない状態と思っているようだ。



「半額にしてもらえないなら この薬はゆずれないな」


「その紫色の薬は上級回復薬ですか?」


「そうですよ。紫色の薬が本物の上級回復薬ですよ。見たことないんですね」


「必要な薬なのですよね~」

子爵ズが薬をもって近づいてきて目の前で ちらつかせている。


そして席に戻ろうとして子爵ズがうしろを向いた瞬間、その薬をモノクロでちらっと鑑定すると

〈上級回復薬もどき〉と見えた。


たぶんもどきなので回復ではなく病状の進行をとめる薬なのかも知れない。

もしくはわざともどき品を伯爵にうっているのかも。


上級回復薬は濃い緑色だ。

作ったことがあるから分かる。

このもどき薬は紫色だ。


薬の値段を聞くと金額50枚だそうだ。


しかし、今回は手に入れるのに少し手間があったので金貨72枚になるのだそうだ。


上級回復薬だって金貨10枚なんだから、もどきがそんなに高いとは思えない。



この薬のせいですごい借金になったとわかった。



許せない。


病気の弱みにつけこんで人の命をなんだと思っているのか。



とりあえず薬を買わなければいけない(証拠品として)


もちろん今の会話もスマホで録音している。





悔しいが品物を半額で売り薬を買った。


大量の調味料が、効くかどうかもわからない<もどき薬>1本と交換になった。



はらわたが煮えくり返り、暴れてやろうかと思った。


しかし・・・



















ルウナシーイの言葉を思い出した。


------

「キース子爵は珍しいものが大好きでな、特にこの世に一つしかないものは欲しがる」

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「!」

いいことを思い付いた。










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