第96話 隣の町に向けて
カタユ・ゲリシ伯爵は人が良すぎることがわかった。
俺と町長とノモコで話し合った今後の計画を伯爵に詳しく話した。
俺も借金返済に力を貸すこと。
隣町に行商にいくこと。
町の発展のことなどなど。
「それはいいね。わかった。任せるよ。君たちには苦労を掛けるね。お礼は言い値でするからね」
もはや「言い値」が口癖みたいな伯爵だ。
王都の屋敷を売った金額を聞くと
「白金貨1枚だったよ。僕は貧乏伯爵だからね。王都にある屋敷も伯爵の身分にしては小さいんだ」
子爵位の貴族よりも小さい屋敷を王都にもっていたようだ。
でも白金貨1枚なら俺の2枚と合わせるとあと2枚分だ。
それをなんとかできれば完済できる。
「先ほどは失礼しました」
農作業着で草刈りをしていた女性が着替えて出てきた。
伯爵の奥さんカタユ・ゲナハ婦人だった。
王都から帰ってきて屋敷の庭が荒れ果てていたので頑張って草刈りしてたそうだ。
本当はチマキ町長が手配して管理するのだが貧乏すぎて出来ないらしい。
秘書ズも忙しすぎて、結果 草ボーボーになってしまったようだ。
奥さんもたいへんだね。
使用人を雇えず自ら庭の手入れやら家事やらやっているのだろう。
最後に伯爵にもしものときのことをちょっと聞いて確認もしておいた。
「カクカクシカジカだから。もしものときはそうすればいいよ」
伯爵から確認も取れた。
これで大丈夫だ。
伯爵も奥さんもフレンドリーでいい人たちだ。
・・・・
俺とケブヤとノモコと部下ABCで隣町に行商(視察)にいくことにした。
ノモコの屋敷にきた。
ケブヤとノモコと部下ABCを連れて
借金してある隣領にいって商売しながら情報を集めることしたのだ。
ABC
「「「俺たちにも名前はあるっす」」」
ノモコの部下3人
タシンサ
タシテ
ボノクデ
三人とも名前があったのね。
完全なモブだと思ったのに。
「移動する馬車はおれたちが用意します」
「おまかせくだいっす」
「少々おまちくだせいっす」
タシテ ボノクデが馬車を取りにいった。
「オジキ! おつとめご苦労様っす!」
タシンサが近づいてきて 頭をさげる。
え? おれオジキなの?
おつとめ?
おれ懲役してたっけ?
「お、おう オジキはやめろって」
「いえいえオジキはオジキっす。ボスのきょうだい分ですから」
ノモコのきょうだい分って いやなんだけど。
ノモコはやたらと俺のことを「きょうだい」「兄弟」と言う。
それに任侠の親分になるために異世界にきたんじゃないのに。
その呼び方やめてほしいんだけどな。
「ケブヤアニキ おつとめご苦労様っす」
「おう、出迎えご苦労」
ケブヤは手をあげて答えている。
友達少なかったみたいだから嬉しいのだろう。
タシテ ボノクデが馬車を持ってきた。
タシンサは馬車に案内する。
「さあ これに乗ってくだせい。お送りいたしやす」
いやいや 俺たちムショ帰りじゃないんだから。
黒塗りの馬車・・・
と思いきや 痩せたロバが1頭の農業馬車だった
「ふざけんなこら! こんなのに3人も乗れるか! おまえらもっとましな馬車を用意しろ!」
ノモコの怒号が飛ぶ。
「ボスもうしわけねーっす 」
「これしかなかったんすよ」
「借金の返済頑張りすぎて貯蓄がねーっすよ」
「そ、そうだった。きょうだい、ケブヤの旦那すまねー」
なんてこった。
歩いて行くか別の馬車を用意するか考えていると・・・
「へいさく殿~~!」
チマキ町長が走ってやってきた。
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