第33話 町長・・・

第33話




「またせた。ワインをふるまってくれるときいたのだが」


なにおごってもらう気まんまんなんだ。

試飲だよ。試飲。



「試飲をお願いしたんです。お店で売るのに感想を聞かせてほしくて。

1ランク上のワインを1本もってきたので是非意見をききたとおもって」


「ワンランク上のワインだと」

町長の目が光った。



「早く飲もう!今日は宴会だ! 父が亡くなり貧乏町長を引き継いで苦節3年!

 このまま永遠にエールすら飲むことも出来ずに 職務を全うするだけだと思っていたがカレーと出会い! 高級ワインに出会い!今日はもっと高級なワインを味わえるという! 町長やっててよかった!今日は宴会だ!」


町長が涙を浮かべてこぶしを握る。



「え、宴会はしませんよ」

宴会なんかやらないよ。

試飲だっての。



「「うう。わたしたちも秘書やっててよかった(確実に)」」

秘書ズも涙を浮かべてこぶしを握る。




俺はどうしたらいいんだ・・・



ほんとに不憫だなこの人たち。




町長ズはまともな生活してるのだろうか。


「もっと町が豊かになれば私たちも豊かになるんだが」

とつぶやいてたっけ。


町のために頑張っているんだろう。

気持ちは善良な町長だから。



1袋ずつ予備に買っておいたアンパンとクリームパンがあるのでそれを町長ズに上げよう。


試食用に3個ずつ使ってしまったからアンパン3個クリームパン3個だけど

ちょうど2個ずつになるし大丈夫か。



「これ今日売り出したふわふわパンです。3個ずつ合計6個あるので3人で分けてください」



町長の手が早かった。




すべて奪い取り、においをかいで「う~~ん」とうなっている。



「お前たちは1個でよかろう。のこり4つはわたしがもらいうけよう」


「チマキちゃん。ひどいですよ。わたしたちに偵察してこいっていったじゃないですか」


「そうです。確実にひどいです。屋敷の仕事は後回しにして何を売ってるか隠れて見て来いっていったじゃないですか」


秘書ズは泣きながら訴える。


路地から見張らせてた元締めはお前かよ。チマキ町長。

なにやらせてるんだよ。まったく。



「バラすんじゃない。それに公の場では町長と呼ぶように。ヘイサク殿これはだな・・あの・・その・・」



プライベートでは秘書ズにチマキちゃんって呼ばれてるのか。



「なにかあったときにすぐに対処できるように見守ってくれてたんですよね」


「そうだ!そうそう!見守っていたのだ。ヘイサク殿はわかってるな。うんうん」


町長ってこんな人だったのか。



カステラとケーキも出そうかと思ったが今回は見送ろう。



「では。チマキ町長。わたしたちにも労いをお願いします。パンは2つずつということで」

「確実に2つずつで」


「わ、わかった」


町長はしぶしぶ了承した。




それがいいよな。


なかよく分けよう。


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