第29話 物件を決める

第29話




チマキ町長の選んだ物件を見て回ることにした。


「最初の物件はここだ」


最初に連れられてきたところは町の繁華街に位置する大きな建物だった。

こんなでかいところを借りれるのかな。


「俺なんかがこんな立派な建物を借りれるんですか?」

「最初なのでな。大きな物件からと思ったのだ。大丈夫だ。借りれるぞ」



いい物件ではあるがでかすぎる。

3人でやるとなると広すぎて掃除だけで一苦労しそうだ。



「いい物件ですね。大きな商売をするならばもってこいですね」


俺には良すぎる物件だが村長のセンスの良さが分かったのでよかった。


しょっぱなから変な物件見せられたらたぶん全部おかしな物件になるだろうから

その中から選ぶとなったらきついもんな。


「次を見に行こう」

町長は次に向かった。


「ここだ。大きくはないが建物自体はきれいだ。手を入れなくても使えるし家賃も安い」


繁華街からは離れた小さな物件だがやはりセンスは良い。

兵舎や町長の屋敷が近いところだ。


3人でやるにはちょうどいい建物だ。



「最後の物件を見に行こう」

町長は最後の物件に向かった。


「これだ」

繁華街の中ではあるが中央から離れた所にある物件だ。


「最初と次にみた物件の中間の大きさと場所だな。家賃もそこそこで広さもあり人の往来もある。ここがわたしの一押しだ」


確かに。

場所的には人の往来もあり立地もいい商売をするなら最適だろう。


最初の物件は大きすぎるが3件ともセンスのいい物件だった。


「どこにする?最初の物件でもかまわんぞ。大々的に商売をはじめるか?」

町長は町に住み着いて商売をしてもらいたいのだろう。



デカい物件をおしてくる。



あんた最後の物件が一押しじゃなかったんかい。










「相談してもいいですか?」

「もちろんだ。相談してきめてくれ」


ミマファとブンセさんと話し合って決めることにした。



3人で円陣を組みコソコソと話し合う。


「どれがいいかな?」

「1番目の物件はなしでお願いします」

ブンセさんが言う。



「なぜに?」

「おにいさん。1番目の物件は掃除だけで1日かかる広さだよ。毎回お店開けるの夜になっちゃうよ。」

ミマファが答える。


掃除のことを一番に思ったのは2人も同じだったか。


「了解。1番目のは外して、2番目と3番目どっちにする?」

「2番目のがいいと思います」

ブンセさんが言う。



「なぜに?」

ミマファが答える。

「3番目の物件はこの中で一番の条件だと思うよ。

でも、なにかあったとき兵舎近くのほうが安心できると思う。

お母さんはそう思うんでしょ」


「そうなのよ。兵舎が近くにあればトラブルがあってもすぐ来てくれると思うのよ」



なるほど。


立地も大事だが身の安全も考慮すると2番目の物件のほうがいいな。


この中では家賃も一番安いし気兼ねしなくていい。


町長の家も近いし相談事もしやすそうだ。


「そうだな。2番目の物件にしよう」

「「異議なし!」」



3人の円陣相談を終え町長に2番目の物件にすることを伝えた。



「え・・わたしの一押しじゃないところを選ぶのか・・・」



ちょっとすねた町長だったが

町長の屋敷に近いから

料理やお菓子を食べてもらうためというと



「ヘイサク殿ー!」



と涙を浮かべて喜んでいた。




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