第115話 【12月24日】
「これで3回目です」それを見た後でボクは老人に言った。
「長生きすると色んなものを見るが、何だかあれは世も末って感じがするな」彼はそう言うと電車を降りる支度を始めた。「人ってのは地べたを這いずり回って、ようやっと確かなものを掴むもんだろ。ありゃ一体、どう云う了見だ?」
老人はそう呟くとそのまま電車を降りた。
そして今日はクリスマスイブ。近くのコンビニで調理科の高校生が作ったという格安のクリスマスケーキを買って家に戻った。仕事は30日まで。
今年も雪は降らなかった。あの老人の言葉が気になっていた。何かを信じること。正直云えばボクは怖かったのだ。信じて叶わぬことが。
地べたを這いながら生きてきた老人と、夜空を不可解に飛ぶヒーローが共存する今、ボクはある決意を固めようとしていた。
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