第113話 【12月22日】
「自分が嫌いねえ。自分が嫌い、好きになれない」
「そうです。気がついたのは割りと最近で…、というより気がつかないようにしてたのかも知れませんけどね」
「…」
「どうかしましたか?」
「いや…、こう言っちゃなんだけどね」
「はい」
「だからどうしたの?」
「え?」
「だからどうなんだい?」
「どうって?」
「別にあんたのこと馬鹿にしてるわけじゃないよ。たださ、それってそんなに大事なことなのかね」
「それは…」
「自分を好きになるってのは、何か特別の努力とかするもんじゃねえんじゃないかね。むしろ結果さ。自分のことを大事にしてこなかった結果がとどのつまりそれなんじゃないかい?」
ボクは俯いた。この人には全てお見通しだと思った。そうだ。ボクは大事なことから逃げる言い訳の代わりに何かしらの努力をしていただけなのかも知れない。
「何かさ、あんたら若い人を見てると気の毒に思えることがあるよ。小さい頃からいろんなモノが目の前に用意されててさ、それを上手く使いこなすことだけを次々に教え込まれる。そうこうしているうちに勘違いする奴も出てきて、上手くモノを使いこなすことがさも上等な人間みたいに思い始める。ひどいのになると人までモノみたいにしか考えられなくなってな。全くどこでどう間違ったか、切ないこった」
「分かりますけど、そんなこと今更言われても」
「あんた、変わりたかったんだろ。だからダイエットやってるんだろ」
いや、そうじゃない。ボクは…。言いかけて上手く言葉にできない。
「あんた、神様って信じるかい?」
その唐突な問いかけにボクは顔を上げた。
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