第110話 【12月19日】

 気がつくと週末。今週はダイエットのことをほとんど考えなかった。ダイエットが上手くいっているからではない。むしろ方向性を見失っている。

 噺家のおじさんとはあれきりだ。まだ話足りなかった気もするが分からない。おじさんはどうだったろう?

 考えてみたらボクはずっと宙ぶらりんなのかもしれない。人には「竹を割ったような性格」と評されることもあるボクだが、自分自身は竹がそんなに固いものだとは思っていない。

 夜、珍しく実家の母から電話があった。

「正月はいつ帰ってくるの?」

 ボクが「いつもと同じ。29日の夜か、30日」と答えると、

「今度は駅までエマと迎えに行くから」と言った。

「えま?エマって?」ボクは訳が分からず聞いた。

「何?兄ちゃんのお嫁さんやろが!」

 ああ、そうだった。次兄は結婚するんだった。それもインドネシア人の女の人と。

「最近、エマがよく家に来るんよ。日本語も割とよくできるしね。お父さんも最初は緊張しとったけど、今は二人でもよう喋るっとるよ」

 母の話はそれだけだった。

 電話を置きながら思った。ああ、世界は変わっていきよるなぁ。わいも変わらないかんなあ。

 それは久しく聞いてない父の喋り方に心なし似ている気がした。

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