第35話 【10月5日】

 この三日間、体重計に乗るのをサボっていた。風呂の後に恐る恐る乗ってみたら一キロ太っていた。やれやれ、次兄のせいにするつもりはないが、生活のリズムが多少揺らいだらしい。

 とにかく筋トレをする。体を支える二の腕がいつもより軋む気がする。しかし「やるべきことはやる」。そこに理屈も感情も要らない。

 夕方仕事先から実家に電話したら思いがけなく本人が出た。

「なんだ、お前か」彼はまるでこの数日間が嘘だったかのように妙によそよそしかった。

「帰ってたんだ」

「ん?ああ、親父に散々小言言われたよ」そう言う兄の声は意外と穏やかだった。

「またさ、遊びにおいでよ」ボクは心にもないことを言ってみたが、

「バカ、俺も忙しいんだよ」逆にそう返されてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る