其ノ玖 決闘

「嘘……。」

呆然と立ち尽くしてしまう。

なんで?ずっと味方だったのに。

「うぅ……。」

後ろで声が聞こえた。

「明っ!」

はっと我に帰り、明の方を見る。

明は……、男達に両腕を引っ張られて、身体が若干浮いていた。

明が、苦しそうに顔を歪める。

「⁉︎」

俺は怒りのままに鞘から刀を抜いた。


明を…苦しませるな!


いつもバカ言ってる明が、


泣き虫なくせして強がりな明が、


いつも笑ってる明が俺はっ!


「明を離せ!」

そしてあいつらに向かって走り出す。

もう周りが見えない。俺はもう明しか見ていなかった。


明。


明っ。


明っ!


「ストップ!」

後ろにぐいっと引かれて、俺は立ち止まる。

その声の主は、和さんだ。

もう少しであいつに斬りかかれたのに!

「和さん!なんで止めるんですか!」

「落ち着け!」

その静かな力強い声に、一気に頭がクールダウンする。

「あの男たちに柊真君一人で勝てるわけがないよ!申し訳ないけど!」

そうだ。俺なんかが……一人で勝てるわけがない。

「僕も、戦う!」

そう言って、和さんは竹刀を取り出した。

「だから心配すんな!絶対勝てる!」

頼もしい和さんの声に、俺は力強く頷いた。

「行くよ!ゴー!」

そして、2人で男たちに斬りかかる!

しかし、

「「くっ…。」」

こっちは両手、あっちは片手で刀を持っているのに、力で負けてしまう。鍛え方が違うのか。

それに、明がいるから思い切り動けない。明を傷つけてしまう。

「「おらっ!」」

男たちが、まるで蚊を払いのけるかのように俺たちを押し返す。

「ぐはっ」

頭を打ち付ける。身体を動かせない。

「柊真っ!」

俺は、必死に立ち上がる。

明を、助けないと……!

「うぉぉぉぉ!」

俺は男に切り掛か、

シャッ

「えっ……?」

何が起こったのか分からなかった。明の悲鳴が聞こえる。

その瞬間、感じたことのない強い痛みが、俺を襲った。

右肩を、切られていた。

俺は、男に強く蹴り飛ばされ、後ろに吹っ飛ぶ。

「がはっ」

呼吸が止まる。

明の、泣きそうな声が聞こえた。

「もういいから……きゃ!」

明の短い悲鳴に、必死に頭を持ち上げて明を見る。

「……⁉︎」

明が床にうずくまっている。

男たちは、明から手を離していた。

「ったく、これからって時に呼び出しか。」

「ま、しゃーねー。」

そして、どこかに行ってしまう。

「明っ!」

痛む体を無理に動かして、明に駆け寄る。

「明……明っ!」

明の横で膝をついて、肩をゆする。

「柊真……。」

そして、明は起き上がり、

「柊真!」

泣きながら抱きついてきた。

「怖かったよぉ……。」

俺は頭を撫でる。

「ごめんな。」

しかし、そうしている間にも、意識が朦朧としていく……

「あっ」

俺は、床に倒れ込んだ。

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