其ノ捌 真意

「逃れ者……?」

俺は恐る恐る言う。

「そうよ、こいつは逃れ者。私たちと同じ一族の末裔のくせに、私たちの計画から逃げ出した。」

葉月が吐き捨てるように言う。

「計画?」

「そうよ。過去を変えるの。」

「過去を……変える……?」

「私たちは、ある一つの戦いで、地位も名誉も……そして誇りまで奪われた。それが、今私たちがいるこの時代の、この年の話なの。」

どんどん早口になっていく葉月。

「だから、私たちの一族は、この年の戦いに参加して、現代の最新兵器で戦う。そうすれば勝てるでしょう?」

「過去を変えるなんて!そんなのだめだ!」

「どうしてだめなの?」

「……っ」

うまく言い返せない。

「そして、その計画のために作っていたのが、今あなたたちが使っているタイムマシンよ。

私はタイムトラベルできるけど、私が一度に連れて行けるのは私を含め2人まで。現代から1000人は連れて行こうと思っているから、私が連れていくのはあまりに大変。」

そんな裏があったのか。

「美沙は、その戦いで勝つために、小さい頃から英才教育を受けた。身体的能力もそう、頭脳のこともそう。」

だからあんなにすごいんだ、美沙さんは。

「でも、4年前–––タイムマシンができる前にあなたと博士は逃げ出した。何を思ったのかは知らないけどね?」

そして、葉月は、急に優しい声色で美沙さんに話しかける。

「あなたのご両親は、急にあなたがいなくなって、悲しんでいるわよ。帰ってきなさい。」

「美沙さんだめだ!」

美沙さん、行かないよね?

「そうね……わかった、あなたたちのところに帰るわ。」

「美沙さん!」

和さんは何も言わない。

「美沙さん!和さんも何とか言ってください!」

和さんはニヤリと笑う。

「何で⁉︎」

美沙さんは俺にぶつかり、葉月のところへと行った。

美沙さんの手には、腕輪が…2つ。

美沙さんは腕輪を一つしか持っていなかったはず。

もう一つはどこから?

「柊真君。懐には気をつけなさいよ。」

慌てて懐を探ると……入れておいたはずの腕輪がなくなっていた。

「あれっ⁉︎」

「あら、言い忘れていたかしら?美沙は、犯罪の手口も英才教育されているのよ?」

何で組織なんだ……。

「じゃあね、和、明ちゃん、柊真君。」

美沙さんと葉月は、腕輪をつけると、お互いの腕輪同士を触れさせる。

眩い光を放ち、光が収まった頃には、2人はいなくなってた。










きなこもちです(^^)/

美沙さんが一族の末裔だったわけですが、伏線に気づいた方はいらっしゃいますか?

戦国編で、明と葉月がしゃべっている場面で、『鬼を倒した一族』と言っていましたが、江戸編で、美沙さんも『先祖が鬼を倒した』と言っていました。

明ちゃんが屈強な男にたまたま勝っちゃったあの場面です。

微妙な伏線ですが、気づいた方はすごいです!

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