其ノ陸 潜入作戦
–柊真サイド–
明がいるという城までの道中は、ほとんど美沙さんと和さんの茶番で終わったので、割愛するとして。
「ここに……明がいるのか。」
と、俺は城を見上げる。
「でかいね。」
「塀あるね。」
「堀ありますね。」
俺たちは、ついに明が監禁されているという城にたどり着いた。
「さて、ここからは拙者が案内するでありますよ!」
アリマスが、誇らしげに胸を張る。張っているはず。
「アリマスは、どうやってこの塀を越えてきたんだ?」
俺は疑問を投げかける。
「空を飛んだのであります。」
「「「は?」」」
「とにかく、来るでありますよ!」
多少の疑問を抱えつつ、俺たちはアリマスの後を追った。
「ここなら警備が手薄であります。」
「こ、ここから入るの、アリマスちゃん。」
美沙さんが言うのも無理はない。
だってそこは、人通りが多く、門があり、堀に橋がかかった、いわゆる、正面玄関だったからだ。……正面玄関って言うかはわからないけど。
「ここは色々な人が出入りするので、多少よそ者が入り込んでもバレないであります。」
「アリマスちゃん、確かに、武士三人だったら入れるかもしれない。でもね……。」
美沙さんの言わんとすることは分かる。
武士の俺はいいとして、白昼堂々活動する忍者と、短髪の姫がついてきたら流石にバレますって。
「し、仕方ないですね。しゅうまい殿だけ行くでありますよ!」
しゅうまい……。
「俺っ⁉︎しゅうまいって、俺のこと?」
「そうであります。」
「いや、俺の名前違うんだけど。」
「あ、えびしゅうまい殿だったであります。」
高級にすな。
「まあ、しゅうまいくんだけだったら入れるか。」
和さん!
「確かに。えびしゅうまいくんだけなら不審じゃないもんね。」
えっ。
「おらだけじゃ無理ですよ!」
「おら。」
「おら。」
「間違えたんです!」
もう、二人して!
「と、とにかく、美沙さんいないと無理ですよ!」
俺は頭を下げる。
「お、お願いします!」
「美沙大将軍。」
「み、美沙大将軍!」
「ははっ。」
「ははぁ!」
「よかろう。」
美沙さんにいいようにされた気がするけど、仕方ない。
「じゃあ、作戦考えますか!」
「てかさー。」
和さんが言う。
「何でこんなややっこしい格好にしたんだろ、博士。」
それは確かに。
「堂々と行こう、堂々と。」
美沙さんはそう言って正門に向かう……っておい。
「作戦、考えるって言いましたよね⁉︎」
「うん、で、考えた結果、これしか出てこなかった。」
ぬおっ、なんと。
「美沙さぁ、もっとその学年一の頭脳を使って、いい考えを出してくださいよ。」
「ちょ、ちょっと待ってください、」
今、
「学年一の頭脳って言いました⁉︎」
「うん、言った。」
「…え?」
「いつもはこんなにポンコツだけど…痛っ!」
思いっきり美沙さんに足を踏まれる和さん。
「こいつ、一応特待生だよ。」
ひぃ。
特待生。学校全体の成績優秀者五人のみに与えられる称号であり、あの高い学費を払わなくて良いという特権を持つ。ちなみに、うちの全校生徒の数は千人ほどです。
「ま、そんなことはどーでもいいの!」
美沙さん、意外と重要です。
「とにかく、堂々としたらバレないって。短髪のおてんばな姫と、朝型の忍者だと思えばバレないよ。」
「「うーん。」」
見張りの人がそう思うとは限らないんだよなぁ…。
「美沙将軍に従うであります、しゅうまいと大和政権!」
なんか和さん強そうだけど。
「分かったよ。」
和さんが言う。
「大和政権、頑張ります!」
その呼び名、気に入ったんですか?
「ではでは、行くよ!」
俺は無視?
「「おおー!」」
そして、俺たちは堂々と正門を通ることになったのだった。
正門に入る。
「堂々と、堂々と…。」
和さんが隣でぶつぶついい、美沙さんがくないを持って戦闘態勢をとり、俺は緊張のあまり関節を曲げずに歩くという地獄絵図のなか、俺たちはバレずに歩
「曲者ー!」
「「「「バレたー!」」」」
俺たちは走って城の方へと急ぐ。今まで出したことのないスピードで。
火事場の馬鹿力とはこういうことか。
「「「ぜぇぇぇ」」」
垣根の裏に隠れて、ぜぇぜえする。
「大丈夫でありますか?」
アリマスはいいよね、俺の肩に乗って、走らなくて済んで。
「と、とにかく、城についたし進もうか。」
俺は、ちょっぴり違和感を覚えつつ、先へ進んだ。
その後は、アリマスの案内で天井裏に入り、天井裏をてくてく歩き(というかハイハイに近かったが)ばれずに進んで、
「ここが、明殿の部屋であります。」
アリマスが言う。
ついに、着いた。
俺は静かに目を瞑って、息を吐いた。
明、絶対助けるからな。
「行くよ、3.2.1。」
美沙さんの掛け声で、天井を突き破り、下へと降りる。
「明っ!」
しかしそこは、
「何ここ…」
広い広い、武道場だった。
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