其ノ伍 運命の出会い

–明サイド–

とりあえずここに住めと言われて連れてこられたのは、どこかのお城。

城の中なら自由に動けはするんだけど……

「十二単重い!」

播磨はすっごい身軽そうな服に着替えてるのに、私は十二単のまま。

たぶん逃げにくくなるからだと思う。

ちょー動きにくい訳です。

というわけで、私は寝室の中で待機。

「ひっ、ひまぁ〜っ!」

何にもない殺風景な部屋で、柊真の動きを追うだけの日々。

……あ、部屋にね、GPSの画面があるの。

赤い点がヒューって動くやつ。

ご丁寧に画面の下に『柊真につけたGPS』って書いてある。

その意図は、全くもって不明。

てなわけで、昨日から動きを眺めているわけだけど……

「早く下山しないかな。」

全然下山する様子ないけど、何やってんだろ。

早く来てくれないかな。

正直、これからどうなるのか、怖い。別に命を取られたりはしなさそうだけど、できれば早くここから逃げたい。

怖いから、テンション上げてないと身がもたないのだ。

と、そのとき。

「こんにちはであります。」

後ろから声がした。

な、何⁉︎怖いんですけど。

恐る恐る振り向くと……

りすがいた。ちょんまげ生やした。

「うん、幻聴だ。」

無視無視。

「りすはしゃべらないもんね。」

うんうん。

「無視するなであります!」

もう一回振り返る。

「こっちはあなたに話しかけてるのでありますよ!」

りすの口の動きと声がシンクロする。

うん、これは、

「り、りすがしゃべってる⁉︎」

「そんなに驚くなであります!」

「だって、りすがしゃべるなんて信じらんないもん!」

「と、とにかく、受け入れるのであります!」

分かった。

「あなたのお名前は何でありますか?」

「明だけど……。」

「明殿でありますね。」

「明殿って……、あなたの名前は?」

「ないであります。」

「ないの⁉︎」

「5歳になったらつけてあげると母に言われ、3歳で家を追い出されました。」

壮絶な人生…栗鼠リス生。

「じゃあ、私が名前つけてあげる。」

「本当でありますか⁉︎」

「じゃあ……名前はアリマスにしよう!」

語尾が「あります」だから、アリマス!

「アリマス……いい名前であります!」

おお、よかった。

「お礼に、何かするであります!」

「おっ、ホント!どうしようかな…」

その時、GPSの画面が目に入った。

「そうだ!柊真達をここに連れてきて!」

「しゅうまい?」

「しゅうま!この、山の麓の町に行くはずだから、適当に『柊真〜』って言ってれば、多分気づくよ。会えたらここに連れてきて!」

「しゅうまい殿〜」

「しゅうま!」

「えびしゅうまい殿〜!」

グレードアップ。

「だめだ。じゃあ、美沙さんの名前を呼んで。」

「美沙さん殿〜!」

「美沙殿。」

「美沙殿〜!」

「美沙将軍。」

「美沙将軍〜!」

「よしOK。じゃあ、美沙将軍とそのお付きのもの二人を連れてくるために、行ってこい!」

「ラジャ!」

アリマスは窓から出ていった。

「達者でな!」

あとは、アリマスが何とかしてくれることを祈ろう。

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