2章 ダンジョンとは何なのか?
#104 検証の時間だぁぁぁ!!
階段を上がった先にあったのは、青い海が広がるビーチだった。
ここは千葉ダンジョンの第4階層、本日の配信のターゲットであるデカいザリガニのモンスターが生息してる場所だ。
「近くに1体いるな。それじゃぁコイツの試運転と行きますか」
俺は最近新しく作った『切断能力付与の毒薬』が入っている改造注射器を自分の体に差した。
毒薬が自分の体に循環しているのを自覚したら息を殺してモンスターに近づき、最適なタイミングで飛び出す。
「あらよっと!!」
「ギィィ」
ザリガニ達の赤い甲殻は打撃に強い耐性を持つ一方で、一定以上の切れ味を持つ斬撃にはめっぽう弱い。
だからダンジョン用の武器を作ってる会社なんかのプロモーションによく使われてる。
『切断能力付与の毒薬』の効果を試すなら持ってこいの相手って訳だ。
毒薬の効果で切断能力を得た右手で繰り出したチョップがザリガニの背中に直撃する。
動き自体は完璧。
渾身の一撃だった自身があるんだけど……手ごたえは無しだなこりゃ。
・全然効いて無さそうで草
・衝撃音そうはならんやろ
・本日のMAD素材
・安い銅鑼みたいな音で草
ザリガニは大きな体を勢いよく翻し、二つのハサミで猛攻撃を開始する。
毒薬の効果で強化されている右手でその攻撃を何とかいなすが、相手の攻撃が重いし切り返せないしでしんどい。
こんな事だったら『鋼鉄化の毒薬』使った方が100倍マシなんだが?!
もう今回の検証配信以外で『切断能力付与の毒薬』使う事は無いかもなぁ。
・『切断能力付与の毒薬』弱くない??
・実践前はあんなに盛り上がってたのに
・事前情報で盛り上がってた俺達のロマンは何処?ココ?
・今日は珍しくクソザコ毒薬だったか
・クソザコ回好きだからもっとやれ
リスナー達も完全にネタ毒薬として見てるなコレ。
だけど、実際の戦闘ってのは毒薬一つだけを使うもんじゃ無い。
組み合わせ次第では、『切断能力付与の毒薬』が役立つ場面もあるはずだ。
右手で攻撃を払いながら、左手で2つの改造注射器を取り出す。
中に入っているのは『鋼鉄化の毒薬』と『足をバネ化する毒薬』だ。
こいつらを同時に体の中へ流し込む!!
「おいザリガニ。今度は上手く狙えるかな」
バネ化した足で地面を強く蹴り、ザリガニの頭部へ一直線に移動する。
ザリガニは俺の動きに反応出来てない。
「鋼鉄化と切断能力の合わせ技なら」
そう叫びながら俺は右腕をザリガニの頭にぶっ刺した。
右腕は僅かにザリガニの甲殻を切り裂き、緑色の液体がブワッと溢れ出る。
・やったか?!
・いや、浅くね
・逆に引き抜けなくなってんじゃねーか!!
・ファーwwwww
・重ね掛けでこれは
鋼鉄化と併用で切れ味がちょっと増しただけかよ。
こんなの最安値で売ってるダンジョン用剣買った方が強いじゃねーか。
「ギシャァァァ!!!」
「うおっ!!」
こいつ、このまま俺を振り落とす気か。
中途半端に突き刺さってるから回避も碌に出来ない。
「仕方ねぇ。あんまり検証配信でこいつを使いたくは無いんだが」
ベルトから『腕を爆発させる毒薬』の入った注射器を取り出し、それをそのまま左足に突き刺した。
ザリガニの頭に突き刺さっている俺の右手が赤い光を帯びる。
「ぶっ飛べ」
次の瞬間、俺の右腕と同時にザリガニの体が内部から爆発した。
・いつもの
・困ったときにはいつもコレ
・右腕君が可哀そうだとは思わないんですか?
・でも、モンスターの内部から爆発ってのは今まで無かったくね?
・『切断能力付与の毒薬』はロマンコンボ用のパーツだったんだなぁ
「いてて……まぁ剣の代わりにはならないけど使い道自体は見つかったな」
リスナーのコメントに返答しながら『体を再生する毒薬』を打ち込む。
まぁ、内部からモンスターを爆破させるってのは結構強力な武器になる事は間違いない。
問題は、その攻撃の為に最低でも3つの毒薬を同時に打ち込まないといけない事。
とてもじゃないが使い勝手が良いとは言えないな。
「んじゃ、今日の企画はこれで終了だ。明後日、大手ダンジョン考察系チャンネルの『アカレコch』にお邪魔してコラボする予定だから楽しみにしてろよ」
・考察おっさんだぁぁぁ!!!
・良かった、吹き飛ぶ右腕君にも休暇があったんですね
・おつ、次も楽しみにしてるぞ
エンディングを取りながら俺は配信を終了した。
思ってたのとちょっと違う配信に成っちまったけど、まぁリスナー達が楽しそうにしてたし良しとしよう。
「そう言えば今日、あの荒らしbot配信に来なかったな」
佐藤さんによれば、警察の方で本人と家族に直接注意喚起を行ったらしい。
これで俺に関係の無い配信者さん達に迷惑が掛からないと良いんだけどな。
そんな事を考えていると、メールの着信音がピロンとなった。
確認してみると、メールの送り主は修羅だった。
『問題解決したって聞いた。この前の埋め合わせ、奢って』
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