雪の虫
@Prociphilus000
冬の使者
ㅤ降雪を知らせる風物詩として馴染み深い雪虫。
そんな雪虫と呼ばれる虫は「アブラムシ」の仲間であり、白い蝋状の物質を分泌し綿のように身に纏い飛んでいる。
それ以外にも雪虫は身に纏う綿が取れた時点で命の火を絶やしてしまうらしい。白い化粧を纏った儚い虫というわけだ。
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高校生の秋。
小学生から今迄、ずっと傍に居た親友の「平島 ささら」という女の子は不健康そうで棒の様に足の細さに特徴的な乳白色の肌、小柄だが豊かな胸部を備えていた。
そのような容姿を兼ね備えているからか、異性からの人気根強く幾度と想いを打ち明けられている。
残念なことに、この私「槇山 海莉」は平島に対して重く強い恋愛感情を抱いている。平島が他の男女と話しているところを見ると、嫉妬してしまう。私がいるのに他人にニコニコしているととても苦しい気持ちになる。
他に強いて言うとするのなら、私は平島にこの想いを打ち明けていない。永久に胸に秘めている。
女子が女子を好きになるのは、この世界ではまだ理解が進んでいないから、余計伝えづらい。
「もう、雪虫が舞う季節なんだね…今年もあっという
間に終わっちゃうのかな。」
「自転車登校の人かわいそうな季節!"雪虫が口に入
る~"だなんて友達が言ってた…」
私は友達という言葉に反応してしまい、ふと目を逸らしてしまう。
少し肌寒いからか、平島はブレザーの中にカーディガンを着込んでいてとても可愛らしい。
そんな可愛らしい平島が他の友達と話しているということに、その事実を知った私は胸の中に多大なモヤモヤを募らせてしまう。
「でも、今年が終わっても私達は一緒なんだから。
惜しむ必要はないよ、海莉ちゃん!」
「それ自分で言っちゃうの?
でも、まぁ…平島が居るから確かに惜しむ必要も
無いのかもしれないね。」
「冗談だよ、冗談!
でもさ、ずっとお友達でいようね。」
「もちろん、友達だよ。
この先もずっとずっと。」
「へへへ…
お友達よりも親友なのかもしれないけどね!」
登校中の平島はニコニコとしている。
ずっとずっと友達でいる事がどれ程嬉しくて、どれ程苦しく辛い事なのか、平島は何をどう足掻いてもわからないのだろう。
私がひたすらに隠し続ける事で、この関係が続いて行くのならば、私はこの苦しく辛いものを我慢できるような気がする。平島の笑顔さえあれば…
「あっ…そろそろ学校着くけどさ。
私数学の宿題やるの忘れてたかも!」
「えぇ~…?
珍しいね平島が宿題やり忘れるなんて、真面目
で勤勉な平島は何処かな?」
「完璧人間じゃないもん。
たまには忘れちゃうものだよ…そういう海莉ち
ゃんこそ宿題やったの?」
「私にはあの数学の問題は解けなかったね。
あの問題と戦うにはちょっと早かったかもしれ
ない…」
「海莉ちゃん…
教えてあげるから、朝一緒にやろうね…
このままだと、成績も危ういよ!」
「私、そんなに成績はピンチじゃないけどね。」
平島 さららは雪虫のようだ。
いや、乳白色の肌に友情という綿を身に纏っている雪虫に違いないだろう。
私はこの雪虫に触れ、友情を恋愛感情に昇華させてしまいたい。この雪虫の命を絶やしてしまいたい。
ずっとずっと自分のものにして、永久にこの人生の全てを平島と居られたらどれほど幸せなのだろうか。
雪の虫 @Prociphilus000
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