第17話攻略ペース配分

 五人は猪型のモンスターの群れと戦っていた。

 Dボアという名前だ。


「みんな、突進に気を付けて!」


 Dボアは突進が脅威のモンスターだ。

 逆に言えば、それ以外大した怖さもない。


「前衛は無理しないでいいから。私たちが魔法で仕留める」


「そうよ、いくら突進してくるからって先に魔法で倒してしまえばいい」


 倉木さんと琴宮さんの魔法でDボアの群れは一網打尽になる。

 Dボアごときが勇者パーティーに勝てる訳がない。


 ”いいコンビネーション”

 ”声かけ出来てえらい”

 ”安心して見てられる”


「ナイス、トモミ、アマネ」


「当然よ、ユーコ」


「あたしらの実力を持ってすればこの程度のモンスターには遅れを取るわけないわ」


「凄いよ、アマネちゃん、トモミちゃん」


 ”てえてえ”

 ”いつまでも見ていられる”

 ”仲良し助かる”


 五人の攻略はコンビネーションが上手く取れて危なげない。

 早い内から自分たちの形を作っておくのは大事だ。





「Dボアか。今度の今度こそ貴様らに分かりやすく倒し方を教えてやろう」


 ”全く期待してません”

 ”深層配信はよ”

 ”ドラゴン倒して”

 ”日和り魔王様”

 ”物足りない”


「突進してくるDボアがおるであろう。さらにもう一匹突進してくる。一匹を掴み、その方向を反対にしてやる。そうするとどうだ? お互い頭をごっちんだ。そこを魔法で殲滅する。魔炎ダークファイア。さらに突進してくる前のDボアの群れも魔法で殲滅する。魔炎ダークファイア。どうだ? 簡単だっただろう?」


 ”簡単とは?”

 ”ごっちんは草”

 ”幼児ですか?”

 ”赤ちゃんですか?”

 ”突進してこない奴とばっちり”

 ”魔法使えない定期”


「そうかそうか、役に立ったか。良かったぞ。貴様ら、習ったことはしっかり実践しろ。頭で理解するのと、実際にやってみるのは違うぞ。ただし、倒せるだけでは駄目だぞ。長期攻略を考えて魔力の温存は大事だぞ。我がここまで教えてやるのは珍しいぞ。有料級の情報だ。感謝するが良い」


 ”全然役に立ってません”

 ”頭でも理解できてません”

 ”倒せるだけって……そもそも倒せる訳ないやん”

 ”魔法使えないのに温存もへったくれもない”

 ”魔法使えない定期”


 実際に魔力の温存は大事だ。

 目の前の戦闘が全てではない。


 もちろん、温存しすぎてピンチになるのはどうかと思うが、しっかり長期的な目線を持ってダンジョン攻略を進めないといけない。


 勇者パーティーは五人だから助け合えるが、俺は一人だから自分で全ての配分を決めないといけない。


 琴宮さんと古城さんの無謀な攻略は、他人事ではない。

 俺が起こしたことではないが、関係ないことと思わず全て自分に起こりうることだと見通しを立てないといけない。


 油断は全てを台無しにする可能性がある。

 勇者パーティーは今のところ問題なく攻略が出来ている。


 でもこれから何があるか分からない。

 五人はさらに先に進む。


 俺も先に進むことにする。

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