第12話身バレする魔王様

 俺はそれからも転移トラップで遊んで……いや、リスナーに教示していた。


「また転移トラップが発動したぞ。今度は転移トラップが発動する前に転移魔法を使う。どうだ? 転移出来ただろう?」


 ”当たり前”

 ”意味わからなくて草”

 ”転移トラップ君無駄になってて草”

 ”何がしたいのか分からん”


 転移魔法で移動した先は下層だった。

 転移トラップと違い、転移魔法は任意で移動先を選べるが、特に下層に移動した意味はない。


 リスナーに転移魔法を見せるためだったので、どこでも良かった。


 何やらリスナーの様子がおかしい。


 ”あれ?”

 ”なんだあれ?

 ”こんな下層に人?”

 ”女性二人?”

 ”おい、やばくないか……”

 ”モンスターに襲われてる!”


 転移した先で女性二人がモンスターに襲われていた。

 異変に気付いたリスナーが教えてくれた。


 モンスターが斧を振りかぶり、女性に斬りかかろうとしていたので、俺は魔法でそのモンスターを倒した。


魔炎ダークファイア


 間一髪間に合った。

 良かった。


 その女性たちの口から出た言葉は……


「剣持……」


「剣持君……」


 え……? 何故か本名呼ばれたんだけど……。

 どういうこと……? いや、二人に見覚えがある。


 同級生の琴宮さんと古城さんだ。

 何でこんなところに……?


 ”ケンモチ?”

 ”ケンモチクン?”

 ”魔王様の本名?”

 ”魔王様身バレして草”


「えぇい、黙れ貴様ら! 我は魔王。それ以外の何者でもないわ」


「正直、もう終わったと思った。あんたに感謝するのは癪だけど、ありがとう、助けてくれて」


「剣持君、ありがとう。天音を助けてくれて」


「ケンモチ? 誰だ、それは? 我は魔王! 人違いだ。それに貴様らなど助けるわけなかろう。我の前に立ちはだかる者がいたから滅しただけだ。感謝される覚えなどないわ!」


 ”めちゃくちゃ助けてた”

 ”立ちはだかってない”

 ”魔王様、相変わらず誰かが困ってたら助ける良い人”

 ”良い人バレしてて草”

 ”こういうところがあるから魔王様推せる”


「だから助けてないと言っておろうが! もういい。今日のところは終わるぞ。さらばだ」


 俺は転移魔法を使い、ダンジョンの入口まで戻ってきた。

 もちろん、二人を連れて。






「剣持君、モンスターから助けてくれただけじゃなく、ここまで連れてきてくれてありがとう。私たち、転移魔法使えないし、魔力が尽きてたから助かった」


「ほんと、あんたお人好しね。天木の時といい」


「だから貴様らなど助けてないと言っておろうが、しつこい。それにケンモチとは誰だ? 人違いも甚だしい」


「あんた、それ徹底してるわね。ほんと感心するわ。流石トップ配信者」


「ふん、何を言っておるのかさっぱり分からん。さらばだ」


「あ、ちょっと待って!」


「何だ?」


「あたしたち、今回のことで実力不足を痛感させられたわ。そこでお願いよ。あたしたちを仲間に入れて」


「天音……」


「断る。我は孤高の存在、慣れあうことなどせん。それに戦力は我一人で事足りておる」


「ケチ……別にいいじゃない……」


「天音、悪いって。助けてくれただけでありがたいのにその態度はダメだよ」


「うぅ……」


「そこで我から提案だ」


「「?」」


「貴様らは勇者パーティーに入れ。奴らはまだ弱い。奴らが少しでも我の高みに近づいてくれる事を切に願っておる。まあ、無理であろうが」


「あんた、今でも天木のことを……」


「何を言っておる? 奴らの戦力が整ってきたところで潰す。弱い者を潰してもつまらんからな」


「どうしても譲らないのね。あたしたち二人じゃこのまま続けるのは無理だから、その選択肢しかなさそうね」


「分かってくれたのなら良い。では、さらばだ」


 また二人勇者パーティーに加入することになった。

 これでまた優子ちゃんを守る人間が増える。


 俺の願いは着々と叶えられていく。

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