第6話不良女子グループ


 学校での俺の過ごし方は、自分の席でラノベを読んでいるだけだ。

 クラスの皆からはぼっちと認識されているから話しかけられることもない。

 優子ちゃん以外からは。


 休み時間になって俺は何故か校舎をぶらぶらしてみたくなった。

 毎度同じことばかりで気晴らしに散策してみようと思う。


 一人でぶらぶらしていると普段人気のない場所から声が聞こえた。


「天木、お前最近調子に乗っているよな。勇者とか言われてちやほやされてよ」


「調子に乗ってるだなんて……私は仕事でやってるだけですし……」


「こいつ勘違いしてるよな? 皆?」


「そうそう、ちやほやされて調子に乗ってる」


「そ、そんな……」


 優子ちゃんが化粧の濃い金髪や赤、緑髪のガラの悪い女子グループに絡まれていた。

 嫌だ、嫌だ。女子の僻みは。


「はい、それまで~」


「何だお前は? ちっ、キモオタかよ」


「皆さんお馴染みのキモオタです。朗報ですけど、今のやり取りは録画、録音しているよ。ステルスドローン飛ばしてたから。気付いてなかったみたいだね」


 俺は常に絡まれた時の証拠保全のためにステルスドローンを飛ばしている。

 僻みや妬みで絡まれやすいからだ。


 何かあったら躊躇なく学校や警察、ネットに上げる準備は出来ている。

 自分のために飛ばしていたドローンがここで役に立つとは。


 俺はステルスドローンを可視化モードにし、ドローンを飛ばしていたのが嘘でないのを目の前の女子グループに見せつける。


「てめえ、盗撮とか盗聴とか犯罪だろうが! ふざけんな!」


「そっちのやってることの方がヤバいと思うけど。別に俺はどうなってもいいよ。そうなったらさっきのやり取りネットで上げるけど。俺の10億人いるダンチューブアカウントで。ウェックスでもね。世界中に君らの蛮行が拡散されるね。嬉しいな~」


「てめえ、なめてんのかよ!」


「誰が撮影止めたって言った? まだ撮ってるよ? どんどん悪事が積み上げられてるね」


「クソが! おぼえてろよ!」


「捨て台詞乙」


 不良女子グループは去って行った。


「真央君、恥ずかしいところ見られちゃったね……」


「恥ずかしくないよ。恥ずかしいのはさっきの人たちだって。複数人で一人に絡んでるなんてかっこ悪い。言ってる内容も完全に言いがかりだし。気にしないでいいって」


「ごめんね……私、真央君に助けられてばかりだね……」


「謝らなくていいって。俺は優子ちゃんのことを助けたことないって」


「ふん。勇者ならもっとしっかりしろ」


 その場に上級生の女子がやって来た。

 さきほどの不良女子とは雰囲気が違う。


 凛とした雰囲気の女性だ。

 俺はこの人のことを知っている。


「あのような馬鹿をのさばらせるな。しっかりと教育しろ」


「教育って暴力ですか?」


「そうだ。貴様の方が奴らより遥かに強い。黙らせてやればいい」


「私の力は配信で皆さんに楽しんでもらう為のものです。力を誇示するためのものではありません」


「甘っちょろいな。舐められたままでは歯がゆいだろう」


「式町先輩、天木さんは平和主義者なんですよ。先輩とは違います。もういいじゃないですか」


「剣持か。勇者が舐められるとダンジョン探索者や、配信者全てが舐められる。黙って見過ごすことは出来んな。お前にはプライドはないのか?」


「考えすぎですって。俺はプライドなんてないですよ。そんなことどうでもいいじゃないですか」


「相変わらずだな。お前みたいな奴がトップ配信者とは世も末だな」


「お褒めに預かり光栄です。じゃあ、天木さん行こうか」


「う、うん」


「待て。勇者、いや、天木といったか。私と勝負しないか? 剣道で」


 この人は女子剣道部主将式町塔子先輩だ。

 全国大会上位入賞常連の猛者だ。


「式町先輩、待ってください。天木さんは剣道の素人です。先輩と勝負になるわけないじゃないですか」


「勇者であれば剣の扱いに長けているだろう。ならば勝負を受けてもいいだろう。正々堂々とした勝負だ」


「剣道とダンジョンでの剣の扱いが同じなわけないじゃないですか。天木さん、もう行こう」


「剣持君待って。式町先輩、その勝負受けます。暴力でなく正々堂々とした勝負なら断る理由がない」


「優子ちゃん……」


「その意気や良し。来い」


 何故か優子ちゃんと式町先輩が戦うことになった。


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