社会人編

のーみそコネコネ職権濫用

「……なんでアンタがここにいるんすか」


「はあ? それは仮にも先輩に対して、新入社員がとっていい態度だと思ってるの?」


「……」


 期待一割、不安九割の心境でおっかなびっくり初出社した日の新入社員歓迎飲み会にて、まさかの吉崎百合パイセンと運命的な再会を果たすことになるとは夢にも思わなかったよ。むしろ夢ならまだよかった。


「新入社員の名簿データ見たら聞いたことある名前があったからまさかとは思ったけど、こんなに早くリベンジできる機会がやっていたとは、やっぱりアタシ持ってるわ。自分の強運が怖い」


「寝言すら通り越して辞世の句をここで詠まないでもらえます? というかなんですかリベンジって。おれ、吉崎パイセンにそんな恨み買うような真似しましたっけ?」


「あたしの懇願をないがしろにしたあげく、てまりんの初めて、略しててまはじをこともなげに奪っていったおにちく駄種牡馬がほざいてんじゃないわよ!!」


「その発言の一部始終に言えることですが、アンタの願望を手毬が許すかどうかを一切考慮に入れてないってどんだけ脳みそお花畑なんですかね。そんな懇願したところでイエスどころかノーしか答え返ってきませんよ。しかも後半は誤解もはなはだしいというか花田兄弟というか。シコ名どころかシコリ名は和姦の花とバカの花ですか? 花どころか花ビラビラが伸びてそうですけど」


「イミフな反論であたしをごまかそうったってそうはいかないわ!!」


「……はぁ」


 あんな三年前の飲み会の顛末をいまだに根に持っているとはなんという狭量きょうりょうな女だ。タメイキのひとつやふたつくらい、心の中出しをかましても許されるだろう。


 それにしても、吉崎パイセンこれがこの会社で働いていく以上ずっと俺の先輩として君臨するのかと思うと、頭痛どころか脳幹出血起こしそうだよ。

 二浪して俺の一学年上なんだから、吉崎パイセンは年齢的に俺と三つ違うはずなんだが、精神年齢はとてもそうとは思えないし、IQに至っては年中発情期のせいでダダ下がってること間違いなし。

 いくらTH大というブランドがあれど、よくこの会社入れたな。ここの人事部の目は確かなのか不安しかねえわ。


「まさかとは思いますが、パイセン」


「なによ」


「お父様がここの会社の人事部にいるとか、そういうオチはないですよね?」


「よくわかったわね、さすがあたしのライバル」


「マジかー……」


 タダのコネ採用確定。俺はともかく、このパイセンに関しては間違いなく父親の職権濫用としか思えん。

 後で他の社員の方に吉崎パイセンの評判聞いてみようっと。大学の時みたいに猫かぶりされてたらまだ広まってないかもしれんが、どーせ本性はすぐ露呈するもんだしな。


 俺の思惑など知らぬが仏、吉崎パイセンはアルコールのドーピングであらぶっている。


「まあ、あんたは前座よ前座。本番は来年度だから」


「ひとを勝手に本番の前戯扱いしないでもらえます? 俺をなめてると本番前に果てるかもしれませんぜ?」


「あんたは本番前にさくてまに舐められて果てたことがあるの!?」


「あーいるよなー、どこの世界にもアルコール入ると下ネタ製造機になるやつが。というか手毬の呼び名を固定しろっつのわかりづらい」


「真顔でそういう事言ってて、あんたは自分が恥ずかしくない? まあいいわ、此処で会ったが百合年目! あんたをとっとと始末して、あたしは手毬ちゃんとのハッピーターンを取り戻すのよ!!」


「ハッピーパウダーどころか大麻ハシシやってんだろパイセン……って、まさか」


 おいおい、パイセンってば手毬がここの企業の内定もらったことも知ってるよな、この言い分じゃ。

 俺のマウスはあんぐり、なんちゅうファンキーな偶然じゃ!

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