噂をすれば手毬の影

 まあ、既読スルーされて久しいし。

 ひょっとすると手毬は俺という人間をもう必要としてないのかもしれないな。


 …………え、マジ?


 なんでこんなに悲しく感じるのだろう。

 手毬すら俺と疎遠になってしまったら、もう友達がガチでいなくなってしまう。


 もう右手の親友とともにこの先生きなければならんのかもしれない。

 ぼっち・ざ・ふxっく!


 いやこれ、俺にとっちゃほんとうにセのつくフレンドでも貴重じゃないか、友達を選ぶ自由すら許されないジーザス! 


 と思っていたその時。


『ボイン♪』


 誰も得してない飲み会以来沈黙していたスマホ内のライソアプリが、メッセージの着信を知らせてきた。


「……手毬から?」


 メッセージの送り人の名前を確認した俺の顔は、他人が見たらきっと間抜けだったに違いない。そのくらい呆けていた。


 が、同時に嬉しくもある。

 俺はまだ手毬に不要だと思われていないんだ……という感じのへんな安堵。

 これはぼっちを経験した者にしかわからない心境だろう。


 ここでの問題は、そのメッセージの内容である。


『ちょっと優弥!! あんた真尋とセフレになったって本当なの!?』


 ついさっき起こった事件なのになんでもう手毬が知ってんだよ。

 

 メッセージの感想はそれだった。悪事もファック事も千里を走るのは一緒、ってか。

 推測するに、真尋あたりが調子に乗って手毬とかにベラベラしゃべっちゃったんだろうな。そんなに自慢でしたかったんかよ、セフレが出来たのが。

 おそらくこの様子なら苗木さんにも同じ内容の報告が飛んでるはずである。


 怖い。


 これもし真尋とセフレ継続したら性癖とかテクニックとか全部赤裸々に暴露されるやつじゃん。

 人間ってもんはなくて七性癖、あって四十八性癖だからな。体位の数だけ性癖もあるのだよワトソン君。


『なんだそれ、初耳だぞ』


 あえてしらばっくれるふりしていろいろ探るため、手毬にそう返事してみる。


『真尋が嬉しそうに自慢してきたわよ』


 おおう、即レス。これが半年以上俺からのメッセージを既読スルーしてきた女のレスポンススピードとは思えない。今までは何だったんだこんちくしょう。


『それに関してはいろいろと言いたいことはある。少しばかりツラ貸せ』


 真尋対策も手毬対策も、ついでに苗木さん対策もせねばならないかもと思うと頭が関節痛になりそうだわ。慢性脳リウマチにはなりたくないので言い訳の機会を作らせてくれよ。


 まあ、通話とかじゃなくて、直接会いたい気持ちもなくはないからな。



 ―・―・―・―・―・―・―



「……髪、切ったんか」


 とりあえず直接会うようになんとか手毬を押し切って、久しぶりに近所の図書館前で落ち合う事にしたわけだが。

 俺が待ち合わせ場所に到着すると、すでに手毬は待ちぼうけていた。なんや、そこまでして真尋とのセフレの件を聞く気マンマン、興味チンチンってコト? 


「ん。なんとなく気分で。というか切ったの、もう結構前なんだけど」


「はっはっは、既読スルーもさることながら、しばらく避けられてたからな。手毬の姿を見る機会もなかった」


「……ごめんって」


 ちょっと気まずそうにそう謝罪してくる手毬であるが、まあはっきりと存在を主張しているうなじに免じて許してやろう。

 思ってた以上に似合うじゃないか、ベリーショートも。



────────────────────



短くてすまんことです。時間がなかったです。

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