しょーもないのはしょーがない

 やばい、真尋の目が座っておる。このままではベッドの上どころかアパートのリビングの片隅で、安心できないことこの上ない『シュレディンガーの童貞』を喪失してしまうことは明らかだ。記憶に残らないものはもちろんノーカウントである。


「お、おいおいちょっとは冷静に考えろ真尋。おまえは以前橋爪に都合のいい女扱いされた記憶をすっかり忘れちまったのか」


「忘れてないよ。ないけど、でもさすがに優弥がアレと同じ人間だとは思ってないし思えないよ。だって、優弥はちゃんとわたしのことを考えて発言してくれているよね」


「……は?」


「高校時代、サッカー部のアレにいいようにされているときはわたしの愚かさを諭してくれたし、自分の愚かさを嘆いているときには励ましてくれたし」


 え、なにそれ記憶にない。

 ひょっとして橋爪との真実の愛を応援したこととか、もしくはその後、落ち込んで引きこもっていた時に罵倒したこととかを指してるんであれば、曲解としか言いようがないんだけど。


 それにしても橋爪はすでにアレ扱いか。女ってのは過去の男に縛られないんだな、ガチで。その理論で行けば俺も過去の男なはずなのにどうしてこうなっている。


「いやいやいやそれは違う。というか他人の思考を推し量ることができないから騙されるんだといい加減気付いて……」


「わたしもほんと、男を見る目なかった。その時その時の外面だけの良さばかりに惹かれて、優弥みたいな本当にいい男をないがしろにしていたこと、すごく後悔してたの」


「いやもうそれはどうでも……」


「あの頃のわたしの言葉がどれだけ優弥を傷つけたか、なんて今のわたしならすごくわかるのに、それでも優弥はわたしにやさしくしてくれて、本当にありがとうしかないよ」


「だからおちつけって」


「いつか本気でお礼したいって思ってた、ううん、優弥とこのまま疎遠になりたくはなかった。だからまずは自分に恥じない自分になろうって決めて、真面目にやってみて、でも自分を磨いてもなかなか優弥と接する機会がなくて」


「なにそれ初耳」


「それでも、わたしが優弥に彼女ができたって聞いたあと、やけになってフーゾクで働き始めた時にも、真剣にわたしのことを思って怒ってくれたよね」


「……」


 ちくしょう。真尋は無意識なんだろうが、あの『フーゾクで真尋に遭遇事件』は俺にとっても恐ろしいほどの低確率で起きた偶然が『ねじれてねじれてぴゃぴゅぴょ』と変化したあげくの黒歴史だ、今さらほじくり返すな。

 おまけにあの時は、ほとんどが千尋さんのことをおもんばかっての発言なんだぞ。


「だから、優弥にこれまでの恩返しをしたくてしょうがなかったの。一度優弥をフったわたしが彼女になりたいです、なんていうのは虫がいい話だって分かってる」


「それはそうだが……」


「でも、優弥の幼なじみだというつながりだけは他の誰にもないし、この立ち位置は譲れない。だから、それを維持できるのなら、わたしはセフレでも構わないの。優弥が満足してくれるならそれで」


「おうふ……」


「そうすれば、少しは恩返しもできるし、優弥はわたしのそばにいてくれるでしょう……? 手毬みたいに」


 なんか最後に不穏な単語出てきた。その手毬にはライソ既読スルーされまくってるけどな!!

 なんや、真尋は手毬の立ち位置がうらやましかったんかい!! 無理に決まってんだろ、過去に振られた女と友人関係築くなんざ!!


 しかしいくら心の中で悪態をついても、表面からは痴態にしか見えないのである。なんせ股間の量産型海綿体が臨戦態勢だからな。

 なんだかんだいって真尋のカラダはやたらミルク的、間違えた魅力的だ。まだお〇〇ぽミルクをスプラッシュする時間じゃない自制しろ俺。


 でもヤバくね、これ? 股間のスプラッシュマウンテンは時間の問題でしかない。

 理性に抵抗するも、事態は平行線。このまま性交したら、確実に閉口する事後が待っているはず。セフレ関係など励行したところで、未来には最高の栄光どころか人類としての退行しか見えないわ。まさしく性欲サル、太閤秀吉である。


 わりと『○○こう』って単語多いよね……って脳内で現実逃避している場合じゃない。サカったビッチ様を説得説得ゥ!!


「だ、だから冷静になれってば! いいか現実を見ろ、セフレってのは『責任を取りませーん』って言ってるも同然の関係だぞ!? 行為にふけったあげくに、万が一妊娠とかして俺が真尋の前からフケちまったらどうするんだ!?」


「大丈夫だよ。前に優弥がそれを心配してたから、ピル飲み始めたんだ」


「ファッ!?」


「ね、だから一回も百回も百億兆万回も変わらないよ、バッチリ」


「チ〇ノレベルのバカになってどーすんだ!! とにかくステイ、ステイ!!」


 本能と理性のはざまで押し切られまいと頑張る俺。千尋さんという救世主がここに帰宅してくるまで、この押し問答は続きそうである。




 ────────────────────



 ・三十分後の優弥


『アッーー!!』



 さぼりすぎごめんなさい

 どこまで書いていたか全部きれいさっぱり忘れました


 まあこの話の完結までは責任取ります

 更新頻度は上がると思います(とか思ってたら今度は異動が出やがった)

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