仲間ワレメ
なんか変な話をしたらのどが渇いた。
自律神経仕事しすぎだろ。先に副交感神経を優位にしておったてなきゃ始マラないってのに。
ちなみに男の場合、勃起時は副交感神経が優位になってて、射精時は交感神経が優位になってるらしい。性行為は自律神経のジェットコースターだ、そりゃ腹上死する人間が出てもおかしくないというもの。
さて、遅い時間だけどライフガートでも買いに行こうか。カフェイン慣れした体には、夜のエナドリなどマキマさんレベルの雑魚となる。もうなにも恐くない。
……などとうかつに外に出たら、通り道の近所の公園で、なにやら騒いでいる人間がいた。そう、以前に真尋と橋爪の件について話した公園だ。
何だろうと思って少し離れたところから見てみると、女二人が揉めている。揉んでいる、ではない。
そして、その一人は。
「真尋……か?」
その後、もう一方の女に目をやると……すげえ、紫色の髪に、現代風にアレンジされてるとはいえ、ヘアスタイルが聖子ちゃんカットだ。いつの時代のアイドルだよ。
つーか紫の髪なんて大阪のおばちゃんくらいしかしないと思ってたぞ。
「ほんと、なにしてくれちゃってるのよ、真尋!」
「だ、だって……」
「ヘルスで客の一人もこなせないで辞められたら、何の意味もないでしょ!」
「そ、それはマミちに申し訳ないとは思ってるけど、でも、やっぱり、わたしには向いてないって……」
「向いてる向いてないの話じゃないの!! いいから一回始めたんだったら、無理やりにでもしごくなりしゃぶるなり後ろ指刺されるなり前立腺刺激するなり、きっちり発射させなさいっての!! 社会人としての心構えはないの!?」
なんだなんだ。会話の内容から察するに、例のヘルスを敵前逃亡した真尋に対する怒り爆発か?
それにしても、真尋と話をしている女子の名は『マミち』というみたいだが、内容が笑〇亭鶴光のラジオ番組並みにお下劣ー!! 社会人じゃなくて社会の窓人なくせになにを偉そうな。
……いや待て、マミち? ひょっとして、さっき手毬と話をしていた、あの?
なんというご都合主義的展開だ。
だが、なんか知らんがマミち(仮)の様子が怖い。金の亡者のような荒ぶり方である。きっと目が血走ってるに違いない、あたりが暗いからよくわからんけど。
要は真尋がまともに仕事もせずヘルスを去ってしまったから、自分に紹介料が入らなくて真尋のことを
尻私欲で友人を巻き込んだくせに厚かましいやっちゃな。
「おさわりまーん! こっちでホス狂いしてる自称・家事手伝いの女が、金のために自分の友人を貞操の危機にさらしていまーす!!」
思わず叫びながら歩を詰めてしまったわ。
「ゆ、優弥!?」
「な!? ヒョロガリ!? き、聞いてたの?」
二人とも驚いておる。
「阿呆、聞かれたくないんなら会話のボリューム絞れ。絞ってんのは下の口ばっかりか? ああ、いや下の口は絞ろうと思っても絞れねえか、ガバガバだもんな。搾り取るくらいしか役に立たねえ骨董品ビッチが、こいつはまさに近所大迷惑なんだよ」
「……」
「……」
そしてどちらも黙った。やればできるじゃねーか。妊娠確定。
いやしかし久しぶりにヒョロガリとか言われたわ。ちょっとむかついたので口撃してやろう。先に逝っとくが、口に突っ込んで撃つ、とかじゃないぞ?
「で、その紫色の湘南爆走族みてーな頭してんのが、モブB子改め栗見マミか。おいオマエ、デリケートゾーンにスキンして金を稼ぐだけに飽き足らず、自分の友人までも赤線内に引っ張り込むとはとんでもねえマンカス野郎だな。そこまでして自分の推しを売上ナンバーワンにしたいのか? 少しは
「な!?」
「オマエが夢を金で買うのはオマエの自由。ただ、ならば自分で責任とれる範囲でやれ。オマエがホス狂いで破滅したなら、自分の漫湖とか肝臓とか腎臓とか売って済むレベルで止めておけ。真面目に生きようとする友人を巻き込むなっつーの。で? 自分の思惑通りに真尋を巻き込むのはちょろかったか?」
「……」
「学費がかかる、という友人の弱みに付け込むとか、いただき女子レベルで終わってんぞ、オマエ。まだイキっぱなし絶頂女子のほうがまともだわ」
抜きたかったのに抜けなかったせいで、うっぷんとリビドーが溜まってたのだろうか。いままでになく罵倒がシモい。射精の瞬間はIQが2になるというネタ話をきいたことはあるが、あながち間違ってなかったりして。
俺のシモ罵倒後、しばらく沈黙が訪れたが、やがて赤いパトランプの光が公園に届いた。
あ、さっき俺がネタで叫んだから、本当に誰かが通報したっぽい。
捕まったらめんどくさいことにしかならない、逃げよう。
「逃げるぞ、真尋」
「あっ……」
俺はモーっと牛のように立っていた真尋の手をつかんで、公園からすたこらさっさと逃げ出した。
マミのほうは知らん。俺の友人でも幼なじみでもないし。
「……もうバカなこと、すんなよ」
そして駆け足のまま、真尋に念を押す。
「……うん」
「とにかく、あのマミって女とは今後縁を切れ。絶対にめんどくさいことに巻き込まれるぞ」
「わかった……」
諭すのはいいとしても、真尋が本当にわかってるのかはわからん。うつむいたままだし、あたりは暗いし。
「万が一、縁を切れなくて困ってるようなら、俺に言え。他に誰にも頼れないだろうからな」
「う、うん!」
だが、仕方なく俺がそう言った後に、顔を上げてこっちを見た真尋の目の奥には。
不気味な色が、眠っていた、気がする。
…………
ま、気のせいだろう。うん。
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