意思の疎通も精通もできない
ひでえサブタイだ。
まあそれはどうでもいい。
「彼女ができたって聞いたのに、なんで優弥はこんなところにきてるの……」
「質問に質問で返すな。もういちど訊くぞ、なんで真尋はこんなところにいるんだ」
「あ、あの、さすがに私大はお金がかかりすぎて……」
「阿呆が!! もっとまともな仕事があるだろうが!!」
「そ、それはもちろん思ったけど、でも、優弥に彼女ができたって手毬から聞いて」
「それが何の関係あるんだ」
……やっぱりあそこから佳世、噂の出どころは。
「なんか、それを聞いたら、まともに働くとかどうでもよくなっちゃって、前にマミから誘われて断ってたんだけど、半分やけになって……今日から始めたの。だから、最初の客にまさか優弥が来るなんて思わなくて……」
言ってることの半分も理解不能なんだがどうすればいいだろうか。
なんで俺に彼女ができたらまともに働くとかどうでもよくなるんだ。そのりくつはおかしい。
あと、マミ……って誰だ。まあ話し方からして真尋の友人ぽい感じだが、俺の記憶には残ってないぞ。
しかし俺が真尋の最初の客とは、本当に運がいいのか悪いのか。いや、真尋にとっては運がいいかもしれないが、俺にとっては最悪だよ。
「だいいち真尋は俺みたいな人間が生理的に無理なんじゃねえのか!! こーいうところは無条件でそんな奴の相手をしなきゃならねえんだぞ!!」
「えっ……?」
おいそこできょとんとした顔をするのはどういうことだ。
「二年半前に自分で言ったこともう忘れてるのか、そんな記憶力でよく大学合格したな」
「! あ、ああああの、そ、それは、それはちがう」
「違わねえだろ」
「ちがう、ほんとに違うの! 今はそんなことこれっぽっちも思ってないし、むしろ真面目に勉強してTH大学に合格した優弥はすごいって思ってるし、優弥と前みたいに話せなくなったことを後悔してるし!!」
今は……ねえ。くだらねえ。
ま、真尋の中で俺の株が少しだけ上がっていたらしいことは理解できたが。
それってあくまでも高校卒業したからそう思ってるだけじゃねえのか? 大学のレベル的な意味合いなら、いちおう俺の場合、胸も見栄も張れるもんな。
結局、真尋は俺が現役TH大生だからそう思えてるだけであって、ブランド的に連れて歩いて他人に自慢できる、という部分でしか見てないんだと思う。
あほらしい。
俺が脳内でそう結論付けたとたんに、真尋が今度は逆に俺へと切り込んできた。
「ね、ねえ、それで、なんで優弥は、彼女がいるのに、わざわざここへ来たの? 彼女にしてもらえばいいのに……」
くそう。こうツッコまれたくなかったからさっきは切り返して黙らせたのに、隙を見せてしまうとはうかつだった。
しかしここで『実は付き合うどころじゃなくて、すでにフラれた』などといえるはずもない。俺にだってプライドってもんがある。
「付き合って即パコるような真尋と俺の彼女をいっしょにするな」
というわけで見栄張った。神様うそついてごめんなさい、初詣に行くことがあったら賽銭フンパツするから今は許して。
「えっ……じゃ、じゃあ、彼女さんとは……」
「まだ何もしてねえよ」
というか『付き合って即パコる』という部分は訂正しなくていいんですかそうですか。
「ということは……まだ、優弥は、DTなの……?」
「うるせえな余計なお世話だよ!! 悪いか! だが少なくともヤリマンビッチよりはまともだよ、倫理的な意味でも性病的な意味でもな!!」
なんでこう、経験者ってのは未経験者を見下す傾向が強いんだ?
本当にイラつく……
「な、ならさ、優弥がよければ」
「なんだよ」
「優弥のDT……わたしで、捨ててみる?」
「…………」
「も、もちろん優弥さえよければ、だけど」
「…………は?」
「優弥は……わたしじゃ、いや?」
ありえない提案されたので脳みそが発酵しすぎて思考停止しちまったわ。
「いやいやいやヘルスって本番行為禁止だろうがよ!!」
違う問題はそこじゃない。俺もあまりの超展開に混乱しているようだ。
冗談じゃない、真尋とここでヤッたりしたら『恐ろしいビッチ相手にDT捨てた節操なし』の称号ゲットだけでなく、わが息子が淋しい熱帯病に感染して、カテーテル突っ込まれた痛みに耐えきれずハートオンウェーブ踊っちゃうかもしれんし。
挙句の果てに手毬あたりに『優弥って、みこすり半で昇天しちゃったのよー、早すぎマジありえない、笑点だわー』とかガールズトークで俺の恥ずかしい秘密を暴露しちゃうんだろ?
「やっぱり……いやなんだ……」
「だから問題はそういうことじゃねえっつってんだろ!! おまけけけけにな、こんなところで働いて大学の学費稼いたところで、千尋さんが喜ぶとでも思ってんのか!? 思考回路が高校時代からなんも成長してねえじゃねえか!! もっと自分を大切にしてくれよ、お願いだから!!」
「!!」
「とにかく、このことは俺の胸の内にしまっとくから、今すぐやめてまっとうに働いてくれ!! そうじゃないと俺の気が休まらない!!」
ほんと勘弁しろ。ここでDT捨てても一緒に失うものが多すぎるっつの。
どうでもいいゴタゴタに巻き込むな俺を! そして千尋さんを悲しませるな!!
あと、そのマミっていう友人とは今すぐ縁を切れ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます