第18話 ボロスの覚悟と最強配信者

 両肩のガトリング砲を破壊されたマシンゴーレムだが、今度は指の先から小型の銃を出現させて追撃してきた。


「コイツ、どんだけ武装があるんだ!」


 先程のガトリング砲よりは威力は低そうだったが、両手の指合計十本から放たれる銃撃は、何というかウザい。

 我はマシンゴーレムについてある程度の知識は持っていた。此奴は魔法が一切使えない代わりに、魔力を使用して自らの体を武装することができる。

 そのため、状況に応じて自身で学習して適した武器を生成でき、火力自慢の背中のミサイルもほぼ打ち放題となる。


「ボロス! 連撃でアイツの動きを止めよう! ハイドロウェーブ!」


 カイトが大波を発生させ、マシンゴーレムにぶつける。その圧倒的質量に、マシンゴーレムさえも押し倒された。


「ボロス、やれ!」

「了解! 炎魔幻骨インフェルノラッシュ!」


 起き上がろうとしたマシンゴーレムに対し、我は炎の拳を大量にぶつけ、動きを止めた。


『というか、こんなに攻撃してもヒビ一つ入らないアイツの装甲、マジでどうなってるんだよ』

『硬すぎる』


「やっぱそうだよね、コメント欄! 結構攻撃してるけど、全然手ごたえが無い!」


 カイトがコメントに反応しつつ言った。我らの攻撃を何度も受けたに関わらず、マシンゴーレムの装甲には傷一つついていなかった。

 これ程硬いとなると、やはりかなり威力の高い炎魔弓を撃つしかなさそうだ。

 だがそれは、この遊園地の多くをこの手で破壊することになるだろう。

 レイさんと訪れた記念すべき場所。だが、やらなければマシンゴーレムを倒すことができない。

 ……いや、考えるまでもない。多くの犠牲者の血で塗られた遊園地を残すよりも、一般人を助けるためにこの場所を犠牲にする方がマシだろう。


「カイト、覚悟は決めた。最大火力の炎魔弓でコイツを破壊する。かなりの範囲を巻き込むだろうから、一般人の避難が終わったらお前も離れてくれ」

「分かった! この様子だと……、あと十分あれば避難が終わるハズ! それまで耐えるぞ!」


 あと十分。ここを耐えれば我らの勝ちだ。

 我らは再び気合を入れ、マシンゴーレムと対峙した。


「肉弾戦で奴と対等に渡り合えれば、銃撃に回す余力がなくなるハズだ! 現れよ、水聖巨人ネロタイタン!」


 カイトが超多量の水を出現させ、それを巨大な人型に収束させる。次の瞬間にそこにいたのは、マシンゴーレムに並ぶ三メートルの巨躯を持った水の巨人だった。


水聖巨人ネロタイタン。魔力の水で巨人を生成して戦わせる魔法だ。コイツを正面からぶつけて、俺達で武装を破壊する!」


 水聖巨人ネロタイタンはある程度の自立行動が可能なようで、マシンゴーレムに向かって行って激しい肉弾戦を繰り広げた。


「カイト、まずは背中のミサイルから破壊するぞ! アレを刺激して爆破させ、少しでもダメージを与える!」


 水聖巨人ネロタイタンの相手で手一杯になっているマシンゴーレムの隙をついて後ろに回り込み、同時に魔法を発動する。


「ハイドロビーム!」

「フレイムキャノン!」


 我らの魔法がミサイルに着弾し、ミサイルが暴発した。その勢いで前に倒れこんだマシンゴーレムの頭に水聖巨人ネロタイタンがかかと落としを喰らわせる。マシンゴーレムの頭は水聖巨人ネロタイタンに抑えられ、起き上がれない状態になっているようだった。


「頼むから長く持ってくれよ……!」


 カイトが願ったが、その願望はあっさり打ち砕かれた。

 マシンゴーレムが右手で水聖巨人ネロタイタンの足を掴み、左手でそれを力強く殴る。その攻撃を受けて水聖巨人ネロタイタンの体は崩壊してしまった。


水聖巨人ネロタイタンがやられた……!?」


 カイトが驚愕の表情を浮かべるが、次の瞬間にはマシンゴーレムは動き出していた。

 掌の内側に生成したキャノン砲から、高速でビームを放つ。我は咄嗟にカイトの肩を持って共に回避したが、我らがいた場所は綺麗に一直線上に抉られていた。


『味方の火力も敵の火力もエグすぎる……』

『インフレ進みすぎだろ』

『あと五分、何とか耐えてください!〈弟分ニキ〉』


 かなり焦った様子のコメント欄だったが、あるコメントにより突如その流れが変わるのを感じた。


『これって東京シティパークに出現した魔物の討伐配信か? 今どうなってる?〈轟ガンマ〉』


『ガ、ガンマ様!?』

『ガンマさん降臨キター!』

『同じ枠にAランク三人集合www』


 轟ガンマ、その名前は我でさえよく知っていた。

 全ての冒険者の頂点に立つ、Aランクトップランカー。さながら配信者でもあるという、圧倒的エリートだ。


『今そっちに向かってる。あと十分くらいで着くはずだが、それまでこの配信で状況を追おうと思って〈轟ガンマ〉』

『あと十分で現着と。という事は流石に今回はガンマさんの出るまでもないかな?』

『あと五分経って一般人の避難が終われば、ボロスがやっつけてくれるからな!』


「ガンマさん! 自分もいるんで大丈夫っすよ!」


 コメントに続いてカイトも名乗りを上げた。


『カイト君もいるのか。なら大丈夫そうだな。ボロス君も頑張れ!〈轟ガンマ〉』


「ガンマさんに応援されちゃあ、ますます負けられないなァ!」


 ガンマの激励を受けて、カイトの目が今までで最も輝いたように見えた。


「喰らいやがれ! 水聖穿閃ネロスターショット!」


 カイトが手を銃の形にして、先程のハイドロビームと同じように高速で水を打ち出した。だが、その速度と水圧は先程とは比べ物にならないほどだった。

 これには流石のマシンゴーレムも、防御態勢を取ったにもかかわらず、大きく吹っ飛ばされた。


「ガンマさん、見てくれましたか!? 俺もトレーニングしたんですよ!」


『強くなったな、カイト君!〈轟ガンマ〉』

『あのガンマ様に褒められるとは……!』

『Aランク、やっぱりレベチ』

『良いな、私もガンマ様に褒められたい!〈ガンマ親衛隊〉』

『↑なんか出てきたwww』


 カイトがこれ程憧れるとは、ガンマもその名に違わない実力者と見受けた。

 だが、マシンゴーレムを倒すのはこの我だ。レイさんとのデートをぶっ壊した此奴は、我が叩き潰す。


 一般人の避難完了まで、あと二分。

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