第11話 戦いの末に
「よし……! 皆さん、ゴールドゴーレムを撃破しましたよ!」
完全にゴールドゴーレムの動きが止まったのを確認し、我は視聴者に宣言する。
『おおおおおお! ホントに基礎魔法だけで攻略しやがった!』
『一時は死んじまうかと思いましたけど、流石兄貴っす!〈弟分ニキ〉』
『【50000】約束の赤スパだ、受け取れ!〈赤スパの悪魔〉』
『レイさんもナイスフォロー!』
『べ、別にアンタを認めた訳じゃないからね! ボロス様を貰うのはこの私よ!〈ガチ恋ネキ〉』
コメント欄も、今日最大の盛り上がりを見せていた。最早祭りだ。
「悪魔さん、赤スパありがとうございます! そしてこれが、ゴールドゴーレムから落ちた金塊ですねー!」
我の体一つ分はあるであろう金塊を手に持って、視聴者にも見せてやる。
『金塊だぁぁぁぁぁぁぁぁ』
『良いなぁ、俺も欲しい』
『……ぶっちゃけ赤スパ連投で財布きついんで分けてもらって良いすか?〈赤スパの悪魔〉』
『↑無理してたんかいw』
「ハハハ……、悪魔さん、無理のない範囲で大丈夫ですよ。今回は沢山投げ銭してくれてありがとうございます!」
『礼には及ばん。俺は気に入った配信者に赤スパ連投するまでだ〈赤スパの悪魔〉』
赤スパの悪魔やガチ恋ネキ、弟分ニキ達を中心とした者達による投げ銭の額は、既に三十万を超えようとしていた。
……え、三十万? 流石に投げすぎでは?
「えーとりあえず……。レイさん、この金塊貰ってください」
「え……、良いんですか?」
我はレイさんに金塊を差し出す。彼女は信じられないといった様子で我を見つめていた。
「お金が必要って言ってたじゃないですか。俺は大丈夫ですから、これはあなたに貰ってほしい」
『兄貴カッケーっす! ガチ最高っす!〈弟分ニキ〉』
『これもう告白だろwww』
『ボロスが今までにないくらい優しい表情してるwww』
『ちょっと! ボロス様、やめてよね!?〈ガチ恋ネキ〉』
「コメント欄うるさい! これは俺の善意です!」
憶測の声でコメントが溢れていたので、一度釘を刺しておく。
レイさんは少しの間悩んでいたが、しばらくして我に向き直り返事をした。
「ボロスさん……、ありがとうございます! これで母も……! うぅっ……!」
レイさんは途中で泣き出してしまった。それほどまでに母の治療ができるのが嬉しいのか。……本当に良い子だな。
「レイさん、良かったですね」
『いやー、ハッピーエンドってやつ!?』
『ひとまずレイが幸せそうで何より』
『よく見たらレイちゃん可愛くね?』
『↑おい、ボロスさんに失礼だぞ』
コメント欄も良い雰囲気になってきたことだし、そろそろ終わるとしよう。我はカメラに向き直り、締めのセリフを放った。
「という事で、今回の配信はこれで終わりです! 沢山の応援や投げ銭ありがとうございました! 次回の配信はマイッターで予告するので、そちらのフォローもお願いします! では、さらばだ!」
『おつかれ~!』
『次も期待してるぞ!〈赤スパの悪魔〉』
『今日も兄貴最高っした!〈弟分ニキ〉』
『やっぱりボロス強すぎwww』
『ボロス様、その女とくっつかないでね!?〈ガチ恋ネキ〉』
『↑流石にしつこいわwww』
今日はやたらとガチ恋ネキが場を荒らしまくっていたが、何とか無事に配信を終えることができた。
「レイさん、配信終わりましたよ」
レイさんは早速、金塊を袋に詰めていた。これだけの量と、ダンジョンの攻略報酬を合わせれば、手術費は足りるだろう。
……だがしかし、これでレイさんとは別れることになるのか。
そう思った途端、我は心臓が細い糸で締め付けられるような感覚に襲われた。切なさを帯びた、不思議な感覚だった。
そしてさらに、体が大きくふらつく感覚。どうやら、魔法の不調やらで戦闘が長引いたせいで想像以上に疲弊していた様だ。
抗う事もできずに、我は倒れてしまった。
「……そうだボロスさん、連絡先交換———ってボロスさん!? 大丈夫ですか!?」
最後に聞こえたのは、レイさんの慌てふためく声だった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
柔らかく暖かい物に包まれているような感覚と共に、我は目を覚ました。
……そうだ、我としたことがダンジョンを攻略した途端に気を失ってしまったのだった。
「……あっ、ボロスさん起きた! 良かったー!」
目を開けると、何故かそこにはレイさんの姿があった。ダンジョンにいた時とは異なり、今はその白銀の髪を下ろして青いパーカーを着ていた。
その姿も可愛———いや、ひとまずは何があったか聞かなければ。
「レイさん、ここは一体……?」
「ここは私の家です。あのダンジョンから近かったので、なんとか連れてきました。怪我の応急手当はもう終わってますよ!」
そう言われ我は自分の体を見ると、怪我をしている場所(スライムなのでいつでも治せるが)には湿布や絆創膏が貼られていた。
「これ、レイさんが……。ありがとうございます、何から何まで」
「いえ、むしろこれでも足りないくらいですよ。私も母も、あなたに救ってもらったんですから」
レイさんはそう言うと、パーカーのポケットからスマホを取り出した。
「ボロスさんは私達の恩人な訳ですから、連絡先の交換とか、できたら嬉しいなー……」
レイさんはやや遠慮がちに聞いてきた。
……連絡先の交換という事は、今後もレイさんに会えるという事か?
正直、我がレイさんをどう思っているのかはまだ分からない。ただ、我の返答は既に決まっていた。
「……もちろんです! 是非!」
そう伝えた時のレイさんの表情は、我にとってはとても眩しく輝いていた。
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