白衣の勇者と再会

第83話 白衣の勇者、作戦を練る

 菜々子がゴブリン・バーサーカーを倒した動画は、翌週の金曜日に公開され、いつも以上に動画の再生数が伸び、わずか三日で百万再生を超えた。


 火曜日に出社した英雄は、啓子とともにその理由について考える。


「コメント欄を見るに、土井ちゃんの復帰を喜んでいるようだから、それが理由なんじゃないかしら」と啓子。


「そうですね。それも要因の一つだとは思います。ただ、土井ちゃんの復帰を喜ぶのって既存のファンですよね? そして、既存のファンは登録者が全員そうだとすると、公開時点ではおよそ15万人です。それだけで、百万もいくとは考えにくいです。実際、登録者じゃない人もたくさんこの動画を見ていて、この動画をきっかけに、登録者が10万人以上増えています。なので、新規の人にも刺さる要因があるように感じるんですよね」


「なるほど。刺さる要因ねぇ」


 啓子と英雄は、コメント欄や動画サイトが提供するデータをもとに分析を進める。


 そして、英雄は一つの仮説を得る。


「『青春』ってやつがキーワードですかね」


「あ、それ、私も今、思った。と言っても、私は青春というより、部活みたいな感じがウケたんじゃないかって思ったんだけど」


「そうですね。俺も高校球児的なものを想像した上で、『青春』という言葉を使いました」


「じゃあ、考えていることは一緒だ」


「ということは、部活系の動画を増やせばいいんですかね」


「うん。……部活系って、何?」


「……何なんですかね。すみません。俺も今、適当に言いました。ただ、そうですね。彼女たちの成長が感じられるような、そういった作りの動画づくりをすればいいんじゃないですか?」


「成長が感じられる。つまり、彼女たちの動画に、ストーリーを持たせればいいのかもね」


「確かに。今までの動画でも、成長を感じられないわけじゃないけど、もう少しストーリー性を強調するような作りにしたら、見やすくなるのかもしれません」


「なるほど。それはありね」


「それに関連して、普段のトレーニング風景なんかも投稿してみたら、どうでしょう? そうすれば、動画の投稿頻度も増えて、ユーザーの接触機会も増える。あと、ちょっとずれちゃうんですけど、そのトレーニングに、他の人がマネしやすいものを取り入れれば、それが話題になって、人を呼び込めるかもしれませんし」


「そうね。じゃあ、もう少しこの案を練ってみようかしら――」


 それから今後の方針について話し合った後、絵麻たちの了承を得て、ダンジョン探索の動画だけではなく、普段のトレーニング動画も増やすようにした。


 その結果、動画の投稿頻度が増加し、登録者ではない人にも見てもらえる機会が増えた。


 また、探索動画に関しても、青春めいたストーリー性を持たせたことで、動画の再生数が伸び始める。


「この路線でいけそうね!」


「ですね!」


 そうやって自信を深めた英雄は、絵麻たちへの指導にも熱が入り、 彼女たちをディーバ―としても、冒険者としても成長させていく。


 そして、急成長するディーバーグループの話題は、海を越え、遠い異国の地まで届いた――。

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