第57話 白衣の勇者、衝撃を与える

「まずは俺の魔力を送りますね」


 英雄が魔力を流すと、菜々子の体がぶるっと震え、頬がほんのり染まる。


「なんだか変な感じがしますね……」


「どんな感じですか?」


「その、あったかいです」


「その感覚を覚えておいてください。魔法を発動する際に、魔力の流れを理解しやすくなりますから」


「わかりました」


「それじゃあ、もう少し流しますね」


 英雄が流し続けていると、菜々子の頬の赤みが増し、「っ♡」と甘い声が漏れだした。


 英雄は菜々子の様子を眺めつつ、給湯室にいる絵麻たちの様子も確認する。


「あれー? お湯が出ないなぁ」


「こんなときに故障?」


 故障じゃない。英雄が給湯器に魔法を掛けて、あえてお湯が出ないようにしている。しかし、やりすぎると絵麻たちが戻ってくるかもしれないので、それほど時間は稼げないが、多少の足止めにはなるだろう。


 英雄は菜々子に視線を戻した。彼女の体も問題なく英雄の魔力を受け入れている。英雄の魔力が、菜々子の魔力胆にできた結石を包んだ。


「それじゃあ、衝撃を与えますね。ちょっと刺激を感じるかもしれませんけど、頑張って耐えてください」


 英雄が石に衝撃を与える。


 瞬間――。


「あっ♡」と声が漏れ、菜々子の顔が赤くなる。「ごめんなさい」


「大丈夫ですよ。それじゃあ、続けますね」


 英雄は衝撃を与え続ける。その衝撃は、細かい振動となって、菜々子の下腹部を刺激した。何度もやってくる刺激で、菜々子は内股になる。


 ヴィィィ――。


 スマホのバイブレーションが鳴った。絵麻からの電話である。お湯が出ない件についてであろう。英雄はそれを無視して、治療を続けた。バイブ音が鳴り続ける中で、菜々子は細かい刺激に耐え続ける。


 しかしそれも限界に達し、菜々子は震えるような声で言う。


「や、八源さん。その、もう少しっ、弱く、できませんか?」


「弱く?」


「何のことですか?」


「し、しんっ♡ どう、です♡」


「振動? あぁ、ちょっと強かったですか? すみません。弱くしますね」


 英雄が振動を弱めたことで、菜々子の表情は軽くなる。とはいえ、依然として顔は赤いままで、下腹部の細かい振動で、内股は深くなり、体全体のビクつきも増えてきた。その姿は生まれたての小鹿のようである。


 英雄は絵麻たちに意識を移す。


「何であいつ電話に出ないのよ。って、お湯が出た」


「よし! さっさと汲んじゃおう!」


 絵麻たちがバケツにお湯と水を入れて、戻ってくる。


(このままじゃマズい! すまん! 一花!)


 英雄は一花の右足を【念力】で動かし、一花の左足にぶつけることで、もつれて転ぶように仕向ける。――が、一花は前のめりに倒れそうになるも、左足で踏ん張り、流れで右足をしっかり地面につける。


(やはり転ばないか。体幹、強いもんな)


 しかしそれも想定の範囲内。バケツが揺れたのを利用し、そのままお湯の一部を外にはじき出す。


「あっ」


 お湯が床に飛び散ってしまい、一花は立ち止まる。


「どうしたの?」


 絵麻も立ち止まって振り返る。


「お湯をちょっとこぼしちゃった」


「そうなの? なら、さっさと拭こう!」


「絵麻は、先に行って」


「いいよ。ちょっと拭くだけだし、二人でさっさとやっちゃおうよ!」


「うん!」


 二人の友情に感動しつつも、時間を稼げたので、英雄は心の中で拳を握る。


(この間に仕上げちゃおうか)


 幸いなことに、結石にヒビが入っている。ここで強い衝撃を与えれば、簡単に砕ける。


「ごめん、土井春さん。一気に終わらせちゃうね」


「えっ、あ、はい」


 菜々子が頷いたのを見て、英雄は衝撃を強める。


 瞬間――。


「んはっ♡」


 想像以上の刺激に、菜々子の体が跳ね、そのまま腰が抜けそうになる。だから英雄は、手の位置を変え、倒れそうになった菜々子を抱える。左手は菜々子の背中に、右手は菜々子の腰に当てる。


「ごめんなさんんっ♡」


 なおも続く強い振動に菜々子の声が上ずる。


「つ、つよぃょ♡」


「すみません。あと少しなんで我慢してください」


「だ、だめぇ♡ このままじゃ、おか、おかしくなっちゃうぅぅうん♡」


 菜々子の体がひと際大きくビクつき、そのまま完全に力が抜けてしまう。英雄は優しく抱えたまま、菜々子をソファーに座らせる。


 コンコン、とドアをノックする音で英雄は慌てて振り返る。


「あの、大丈夫ですか? 何か大きな声がしましたけど?」


 翔琉の声。


「あ、うん。大丈夫! ちょっともう少し、外の様子を見てて!」


「……わかりました」


 英雄は安どした表情で、菜々子に視線を戻す。


「はぁ、はぁ」


 菜々子は、頬を上気させ、肩で息をしていた。痺れているかのように、体がビクつく。


「あ、あの、もう終わりですか?」


「はい。結石は破壊できました。だから今度は――結石を含んだ魔力を外に出しましょうか」



*長くなる+処置内容が変わるので、分割します。治療はまだ続きます。

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