ex2 知らない二人
――スライム・ジェルを用いたマッサージについての記事がダンジョンドットコムに掲載された翌日のこと。
事務所の部屋には、絵麻と一花、翔琉の三人しかいなかった。英雄と啓子は別室で会議中である。
絵麻と一花は並んでソファーに座り、翔琉は事務スペースの机で勉強していた。
「ね、ねぇ。一花」と絵麻は少し恥ずかしそうに声を掛ける。
「何?」
「昨日のさ、ダンジョンドットコムの記事見た」
「いや、見てないけど」
「ちょっとこれを見て」
一花は絵麻にスマホを手渡され、画面を眺める。最初は適当な感じだったが、徐々に力が入る。
「え、絵麻。これ」
「すごいよね」
「とりあえず、サラダ油とってくる」
立ち上がろうとした一花の裾を掴んで座らせる。
「意味わかんない。何で、サラダ油なのよ」
「代用できるかなと思って」
「できるわけないでしょ。これは、スライム・ジェルじゃないと駄目なんだって」
「お、ずいぶんとノリノリだね」
「べ、別にそういうわけじゃないし。ただ、そう書いてあるから」
「ふーん。それにしても、気絶する気持ち良いマッサージって、どんなマッサージなんだろうね」
「ね。味わってみたいね」
「テニスをしていたときは、たまにコーチとかにマッサージしてもらったけど、気絶するほどではなかったな」
「へぇ」
「翔琉君」と絵麻は翔琉に声を掛ける。「翔琉君は気絶するほど気持ちいいマッサージをしてもらったことある?」
「……無いかな」と翔琉は参考書を眺めたまま答える。
「そっかぁ。翔琉君も無いか」
「ねぇ、一花。このスライム・ジェルってさ、魔力の微調整が重要なんだって。何かそれが得意な人に心当たりはない?」
「あー。あるね。お願いしてみようか。絵麻もやるでしょ?」
「私は別に」
「じゃあ、あたしだけか」
「……やらないとは言っていない」
「なら、絵麻もだね。翔琉君は?」
「僕は遠慮しておくよ」
「そっか」
「ってか、あんまりそういうお願いを兄貴にしない方がいいんじゃないかな」
「と言うと?」
「兄貴はさ、破廉恥な女の子が好きじゃないんだって。もっとこう、奥ゆかしくて大人しい子がいいらしいよ」
「え、そうなの?」と絵麻。
「この間、そんな話になってね」
「あれ? でも、私たちに言っていたときは、好きになった人がーみたいなぬるいこと言ってたけど」
「まぁ、男同士でしか言えないこともあるんじゃない?」
「そっかぁ。大人しい子が好きなのか」
「大丈夫だよ、絵麻」と一花が不敵な笑みを浮かべる。「あたしたちがさ、破廉恥な女の子の良さを教えてあげればいいだけじゃん!」
「……確かに。まぁ、私は破廉恥じゃないけど、一花がそう言うなら、協力してあげる!」
「よし! なら、マッサージをしてもらう方法について考えよう!」
「うん!」
「やめたほうがいいと思うけど……」
しかし二人は、翔琉の制止を聞かず、英雄にマッサージをしてもらうための策を練る。
そして後日、英雄にマッサージをお願いするも、速攻で断られた。
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ここまでお読みいただきありがとうございます!
投稿を始めてから一か月ほど経ちましたが、この間に、6000人以上の方にフォローしていただき、また、2000を超える★評価をいただきました(2023/11/13時点)。
これも、ここまでお読みくださいました皆様のおかげです。
誠にありがとうございます!
物語はまだ続くので、今後も楽しんでいただけると幸いです。
引き続きよろしくお願いします!
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