ex1 男子会

 翔琉のキャラが決まった後も、二人はファミレスでご飯を食べていた。


 英雄がデミグラスハンバーグを食べていると、翔琉に質問される。


「兄貴って、彼女いないんですか?」


「いないよ。そういう翔琉はどうなの?」


「僕もいませんよ」


「え、マジ? モテそうだけど」


「まぁ、今はそんなことをしている場合じゃないですし。ディーバーに集中したいところです」


「なるほど。殊勝な心掛けだ」


「兄貴はどんなタイプの女性が好きなんですか?」


「うーん。どんな女性……。まぁ、好きになった人がタイプなんじゃない」


「はぁ」と翔琉がため息を吐くので、英雄は眉を顰める。


「すまんなかったな。望むような回答ができなくて」


「まぁ、それはいいんですけど……」


 翔琉は周りの目を気にしてか、声を潜めて言う。


「一花ちゃんとか絵麻ちゃんはどうなんですか?」


「論外でしょ。未成年だし」


「あ、そうなんですね。良かったです。兄貴はその辺の倫理観がしっかりしているんですね」


「まぁね」


「じゃあ、啓子さんはどうですか? 啓子さんは仕事もできるし、美人じゃないですか」


「んー。まぁ、俺にはもったいない人だよ。それに、俺は職場恋愛禁止派の人間だから、啓子さんは無し」


「え、職場恋愛禁止なんですか?」


「俺はね。って、何でそんなに嬉しそうなの?」


「いや、そんなことないですけど。でも、そうか。職場恋愛禁止なんですね」


「ああ。と言っても、あそこのボスは啓子さんだから、啓子さんの意向に従うけど、俺がボスになったら、その場で職場恋愛禁止にする」


「どうしてですか?」


「……ん。まぁ、職場恋愛は、当事者は良いかもだけど、苦労するのは周りだからね」


 英雄は遠い目になるが、翔琉は「ふーん、そういうもんなんですね」と他人ごとのように語る。


「じゃあ、ゆづ姉はどうですか?」


「どう、というのは?」


「話の流れから察してほしいんですけど」


「……話しやすかったし、良い人だとは思ったよ。でも、優月さんくらいの人なら、彼氏がいるでしょ」


「いや、これがいないんですよ。だから僕は、ちょっと心配してて」


「へぇ」


「で、どうですか?」


「え、いや、どうこう言えるほど、優月さんのこと知らないし」


「……仕方ないですね。なら、僕がゆづ姉の良いところを教えてあげます。まず、ゆづ姉は――」


 普段は大人しい翔琉だったが、優月のことになると饒舌になる。


 その様を見て、英雄は思った。


(翔琉は、優月さんのことが大好きなんだな)


 そんなことを思いながら、男子会は過ぎていく――。

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