第2話
家に帰ると、外よりも暗い世界だった。
電気をつけて、居間に行く。スーツを脱いで、洗濯かごに投げ入れる。やりすぎてコントロールは身についた。上裸で今日買った本を読む。
『世界はエンターテイメント』
その物語は、生きる希望を見失った少年と、その生き様を支える大切な人、彼女とのお話だ。
冒頭には、こう綴ってあった。
『貴方は、世界の面白さを、知っていますか?』
彼は言った
「おはようでさえも、言うのがもう面倒なんだ。たった一言さ、でも、皆が敵なんだ、僕の味方なんて、誰もいやしないんだ!」
すると、彼女は、少年の頬を叩いて、
「なら、一緒に消えちゃう?」
と言った。
少年は、何も言えなかった。生きて欲しかったから、でも、自分の生きるはずだったものを託すのも、責任を押し付けるのも、嫌だったから。
翌朝、早朝の電車に乗って、仕事に向かっていた。昨日、自棄酒をして、二日酔いである。
暑っ苦しい外気が、電車から降りるのを拒ませる。改札を出て、会社まで歩いていく。東京の人の多さは、田舎とは比べ物にならなかった。
昨日読んだ小説を思い出す。
「おはようすら、めんどくさい…か。皆が敵…そうか…」
会社に着くと、後輩が「おはようございます!」と、挨拶をしてきた。俺は、「あぁ」とだけ答えた。きっと、俺も「おはよう」を言うのが、めんどくさかったのだ。早く、小説の続きが読みたかった。あの小説が、唯一の味方のように、ふと、感じた。
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