第3話
三木は改めて透宅を訪問し、庭を調べた。そして、いくつかの足跡を見つけるに至った。
「底の溝が消えかけているスニーカー痕…。足のサイズは二十五くらいか?」
三木は思う。この
三木は足跡を視線で追った。三木の視線は地面から壁を這う雨樋、そして透の部屋の前の軒に向かった。
三木は目をそこに置いたまま、おもむろに胸ポケットから携帯電話を取り出して、周辺住民への聞き込みを行っている後輩に電話を掛けた。
「槙島。体型は小柄で痩せ型。恐らく身なりは綺麗じゃない」
〈なんの話ですか?〉
「犯人だ。恐らくな」
〈本当ですか?!〉
「多分な。悪りぃがもう一丁聞き直してくれ。オレはもうちょいこの大山上家を調べる」
三木は電話を切るともう一度大山上家に上がり、透の母の案内のもとで透の部屋にやって来た。
透はベッドに拘束され、三木を見るなり雄叫びをあげて噛みつこうとあばれながら口を開閉し始めた。手足は拘束具で擦れて血が出ている。目は充血し、口からは涎が垂れ、顔つきは少年のものとは思えないほど憎悪に満ちた悪魔の様な顔をしていた。
透の母は、透の姿を直視できないため部屋の外で待っており、三木には小さい嗚咽が聞こえていた。
三木が憐れみを感じながらひとりごちた。
「悪魔ねぇ……」
三木はオカルトは信じないが、それでも悪魔憑きという表現は適していると思えた。それから三木は床に顔をつけて、床に泥が落ちてないかを確認した。
三木はそのままの姿勢で叫んだ。
「奥さん、部屋の掃除をしたのはいつです?」
透の母が涙混じりに部屋の外から答える。
「透が……こうなって……からは……」
「どうも」
とすると、泥が落ちていない以上、部屋への侵入はないと考えて良いか。三木は顔を上げて、部屋に唯一ある窓から軒先を見た。屋根には不自然に表面の苔が剥がれたところがあった。
やはり何者かが侵入している。
しかし、部屋への侵入は無い。だとすれば、窓で薬物のやり取りをしたことも、窓から少年に向けて遠隔で催眠を掛けたことも想定し得るところだった。
考える三木のもとに着信があった。
「うぃ、三木だ」
〈三木さん、庄司です。二十四件目の事件が起こりました〉
「ほぅ。そりゃ面白い。詳細を聞かせてくれ」
三木はこの着信で確信した。犯人は自信を深めており、調子に乗り始めている。三木の脳裡に未だ誰も想定していなかった犯人像が浮かび上がった。
シリアルキラーのような被害者の年齢や性別など統一的傾向がない。そのことから組織犯に思えたが、そうではない。調子に乗っている。傾向がないと思えたのは思考に統一性が薄い知能のせいではないか。
「若者か……?」
三木は癖で口元に手をやり、煙草を吸っている時のようなポーズをとった。
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