第9話 浮気かと思ったぁ~? ざんね~ん! 処刑でした♪(まさに外道)

 ラブリー☆マイエンジェルと結婚(仮)が確定した、次の日の放課後。


 俺は我がプリティ☆キ●ガイこと、大和田おおわだ信菜のぶなちゃんの家へと招かれていた。


 ……言っておくけど、浮気じゃないからね、コレ?


 ただ、芽衣が花嫁の代役として依頼人にマイ☆エンジェルを紹介するべく、よこたんと2人でさっさと消えてしまったので、久しぶりに元気と一緒に帰ろうとした所に、大和田ちゃんから、




信菜『シロパイ。今日、ウチに遊びに来ない?』




 という可愛らしい連絡が届いたのだ。


 瞬間、俺の脳裏に稲妻が走った。


 放課後、後輩から連絡、可愛らしい文面。




 間違いない……大和田ちゃんは今――心身ともに『女』を持て余している!




 きっとこの画面の向こう側では、俺の愛しい後輩が、身体のうずきを抑えきれず、悶々もんもんとしているに違いない。


 もどかしさに身を焼かれながらも、授業中はなんとか耐え忍んだが、ついに限界を迎えてしまい、俺に助けを求めて来たのだろう。そうに違いない!




 つまり大和田ちゃんは、今――『男』としての俺を求めている!




 えぇっ、即ダッシュ余裕でした♪


 速攻で元気と別れ、『なんだ、あの少年は!? ワシはついに世界が狙う逸材を見つけたぞ!』と、どこぞの長距離トレーナーが声をかけてきた気がしたが、すべてガン無視して、大和田ちゃんのアパートの前へ到着。


 きっと扉を開けたら、完全に出来上がっている大和田ちゃんが『もう辛抱たまらん!』とばかりに、俺に襲い掛かってくるに違いな……ダメだ!?


 俺にはもう、マイ☆スィートハニーが居るから、冗談でもそういう下ネタを言うのはNGだな。


 もし玄関を開けて、間髪入れずに大和田ちゃんが(性的に)襲ってきたら、そっと優しく彼女の身体を掴んで、そのまま巴投ともえなげ……いや巴投げはマズイか。


 とりあえず、優しく抱きしめ「レディーがこんな事をしてはいけないよ?」と、耳元で甘くささやいて、注意を促そう。そうしよう。


 名案だ、リンリン♪


 俺は改めて覚悟を決め直すと、ゆっくりアパートの2階にある大和田家の玄関の扉を開けた。




「お待たせ、大和田ちゃん! みんなのアイドル☆大神士狼、ただいま参じょ――」

「――待っとったで、喧嘩狼❤」




 ドンッ! というたくましい踏み切り音と共に、扉の向こうから等身大の白い弾丸が、俺めがけて飛んできた。


 な、なんだ、なんだ!?


 精子が擬人化したのか!?


 ギョッ!? と目を見開き、飛んでくる白い弾丸を観察すると、ソイツは俺のよく知っている男だった。




「ワシの愛を受け取ってくれぇぇぇぇぇぇい❤」




 そう言って、森実が誇るハードゲイ鷹野たかのつばさは、満面の笑みで俺に抱き着いて来ようとしていた。


 俺は奴が着ていた九頭竜高校の制服の襟首を両手で握りしめると、飛びかかって来たハードゲイの勢いを殺すことなく、イメージトレーニングそのままに、巴投げで奴を1階の駐輪場へと叩き落とした。


「あぁあぁぁあぁぁっ❤」と、喜悦にまみれた声を上げながら、駐輪場へダイブッ! するハードゲイ。


 あ、危なかった……。


 直前で巴投げのイメージトレーニングが出来ていたから良かったモノの、もしあのままだったら、喰われていたぞ、俺?


 もちろん性的な意味で。


 ドンガラガッシャーン! と、盛大に何かが壊れる音が階下で響く中、扉の奥から鷹野と同じく、九頭竜高校の制服に身を包んだ坊主頭のノッポが姿を現した。




「何をやっているんですか、2人とも……?」

「あっ、お兄たま! チィーッス!」

「誰が『お兄たま』ですか? いい加減、親族に食い込もうとするのは止めてください」




 そう言って、我らがプチデビル後輩の兄君、大和田おおわだ信愛のぶちかお兄ちゃんが、溜め息混じりに首を横に振っていた。




「まったく。そんな事ばかり言ってますと、彼女さんに愛想を尽かされますよ?」

「うっ!? ソレを言われるよ弱い……って、お? 兄者は俺がお付き合いを始めた事を知ってんの?」

「もちろん。こう見えても、耳は早い方ですから」




 そう言って、にやりっ! と不敵に微笑む、大和田の兄様。


 きっと妹あたりに聞いたのだろう。


 まったく、このサンフランシスコンめ!




「改めて、おめでとうございます大神様」

「あ、ありがとう。いやぁ、流石に照れるなぁ……」




 真正面からお祝いの言葉を言われたのは初めてだったので、かなり嬉しい。


 兄上は、今まで俺に見せた事がない邪気のない笑顔で、




「本当に、心の底からおめでとうございます。わたくしは2人の交際を、全力で応援しておりますよ。頑張ってくださいね?」

「兄上ぇ……」




 ニッコリ♪ と、かつてない程やさしい笑みを浮かべる兄様。


 どうしたのだろうか?


 ヤンキー、母校へ帰るのだろうか?




「ほんと、大神様が他所よその女と付き合ってくれて一安心ですよ。もし信菜さんと付き合おうモノなら、どんな汚い手段に手を染めようとブチ殺してやろう覚悟を決めておりましたが、杞憂きゆうに終わったようで何よりです♪」


「ほんと杞憂に終わって良かった♪」




 アハハハハっ! と2人してカラカラ笑う。


 いやぁ、兄者でも冗談を言うんだなぁ!


 ……冗談、だよね?




「さぁ大神様、どうぞ中へ。信菜さんが首を長くしてお待ちです」




 珍しく上機嫌の兄者に、入室を促される。


 おっとぉ、これはイケない。


 我が可愛い後輩を待たせるのは、先輩のする事じゃないな。


 俺は小さく頷きながら「おじゃましまーす!」と、元気よく家へ上がらせて貰った。




「いやぁ、久しぶりに大和田ちゃんに上がるなぁ」




 最後に上がったのは、生徒会長選挙の時だったっけ?


 あの頃の大和田ちゃんは、猫を被っていて、可愛かったなぁ、


 もちろん今もカワイイけどね!


 そんな事を思いながら、俺は大和田ちゃんが待っているであろう居間へと足を踏み入れた。




「おまた~? シロウ・オオカミ、ただいますいさ――」

「――くたばれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~~~~~~ッッ!?」




 瞬間、さすまたを持った大和田ちゃんが、俺に襲い掛かって来た。

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