第13話 (ゴールデン)ボールは友達、怖くない!

『朝、目を覚ましたら、自分の部屋にスク水を着た女子中学生が居た』


 これだけ聞けば、事案発生案件、東京都襲来、妄想の結晶、ファンタスティックが止まらないが……俺、シロウ・オオカミは静かにベッドの中でほくそ笑んでいた。


 はっは~ん? なるほどな。


 もう間違いなく、俺の目の前に居るスク水ガールは、異世界からやって来た亡国ぼうこくの姫君であり、何故かその出口が俺の部屋に通じていたのだろう。


 きっと俺はこのあと、巻き込まれるような形でその姫君を守りながら、愛と勇気だけを頼りに、悪の組織と世界の命運をかけた戦いに身を投じていくのだ。


 もちろん、お姫さまとの愛をはぐくむためにも、俺の通っている中学に、お姫様が転入してくるサブストーリーも忘れてはならない。


 そんな楽しく愉快な生活を送っているうちに、何の変哲もない俺は、壮大な物語の主人公として、後世に語り継がれることになるのだろう。


 あっ! そういえば主人公といえば昔、24時間ぶっ続けで放送し続ける、実に男気溢れる番組があったじゃん?


 ほらアレ、全国のピュアな心を持った子ども達の懐から【募金】としょうして金を巻き上げ、上層部が飲み会やギャンブルに使いまくって打ち切り寸前まで追いやられた、あのテレビが終焉しゅうえんを迎えたと言ってもいい、ヤベェ番組ね。


 毎年の恒例なのか、それともその日たまたまだったのかは分からないが、あの番組の放送最後に『本当の主人公はアナタですっ!』みたいなテロップが流れたのだが、ソレを見たウチの姉ちゃんが『おい愚弟っ! あたしが主人公だってよ! どうするよ!?』と、嬉しそうに言い始めた事があったっけ?


 正直、まるまる休日1日を使って、格ゲーの女キャラに弱攻撃を当てて『あっ!? あっ!?』という悲鳴を、あえぎ声に悪魔変換している我が家の不良債権が主人公の番組など、ハッキリ言って終わっている。


 なんなら、この国が終焉しゅうえんを迎えたと言っても過言ではない。


 ――って、あれ? なんの話をしてたんだっけ、俺?




「あっ! ようやく起きたべか、シロー君? もう10時だべよっ!」




 おっそ~い! と不満気に呟きながらも、寅美先輩は笑顔で俺を見てくる。


 ピッチピチのスクール水着が、現役女子中学生の肌に食い込むその光景は、朝から俺に健全なエロスを提供してくれる。


 ロリコンでは無いが、これには思わず俺氏ニッコリ♪




「おはよ、先輩。あれ? 今日、何か遊ぶ約束してたっけ?」

「いや、してないべよ? 今日は千和お姉ちゃんと一緒に、花丸㏌ポイントノートのお題をクリアするためにやって来ただけだっぺ」




 そう言って寅美先輩は、どこに隠していたのか、花丸㏌ポイントノートを取り出して、残り2つとなった本日のお題を俺に見せてきた。




『プールへ行く』




 そうか、今日はプールへ行くのか。


 カラッと晴れたいい天気だし、冷たい水に飛び込むのは、さぞ気持ち良かろうに――って、ちょっと待て!?




「えっ!? 寅美先輩、今から姉ちゃんとプールに行くの!? 待って、俺も一緒に行きたいんだけど!?」




 ガバッ! と、勢いよく布団から跳ね起きる。


 一気に眠気は消えていた。




「別にオイラは構わないべよ?」

『おーい、寅美ぃ~? 準備できたぞぉ~?』




 階下から姉ちゃんの間延びした声が、耳朶を叩く。


 こ、こうしちゃいられねぇっ!


 俺は寝間着の代わりに着ていた『ロリコン』Tシャツを急いで脱ぎ捨て、寅美先輩に向かって投げ捨てた。




「ちょっ、シロー君!? うわっぷ!?」




 バサッ! と、俺の『ロリ魂』Tシャツを頭から被り、フガフガ言っている寅美先輩。


 そんな先輩を尻目に、俺は急いでパンツも脱ぎ捨てながら、クローゼットへと突貫し、昨年買った水着を引っ張りだした。


 ふふふっ♪ プールと言えば、性欲旺盛なお姉さまの巣窟そうくつっ!


 そんな場所にナイスガイなショタボゥイである俺が特攻しようものなら、我がお股にブラックホールよろしく、お姉さんたちが吸い込まれるように近寄ってくるのは自明の理!


 その吸引力はダ●ソンの約10倍っ!


 ヤッベ、童卒しちまう☆




「し、シロー君っ!? お、お尻っ!? お尻が丸見えだっぺよ!?」

「あっ、寅美先輩! そこタンスの棚から、替えの下着を取ってくんない? 何でもいいからさ」

「ちょっ、前っ!? 前、隠して!?」




「ブラブラしてる!? ブラブラしてる!?」と、寅美先輩が俺の下半身を見つめながら、何かをほざいていた。


 が、俺は構わずフルティンのままプールへ行く準備を進める。


 待てよ?


 お姉さまとイイ感じになったら、ホテルへレリゴーする流れになる可能性もあるか?


 だとすれば、やはりここは、使い慣れたクタクタのパンツよりも、1軍選手(勝負下着)を準備するべきか!?




「寅美先輩、やっぱり替えのパンツは俺が選ぶわ。ちょっとそこ退いてくんない?」

「う、うわぁぁぁぁ~~~っ!? く、来るなぁぁぁぁぁ~~~っっっ!?!?」




 何故か発狂寸前でわめき散らす寅美先輩の右足が、大きく振り上げられる。


「うわぁぁぁぁ~~っ!?」と錯乱状態の寅美先輩のおみ足が、えげつない速度を持って、俺の剥き出しのムスコにせまる。


 そのまま先輩の霹靂一閃へきれきいっせんが、俺のバキバキ前●腺を勢いよく蹴りぬいて――





 瞬間、俺の意識がぶっつりと途切れた。

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