第5話 左から2番目の白いブラウス姿Ⅴ
「じゃあ犬っころと同じだ?」
ガハハと課長の杉本徹は笑った。
「そうですよ〜」
佐伯ナナミが総務関係の採用や入社、退職時の手続きを担当している為、新たに入社した人は自ずと佐伯に問い合わせたり相談したりすることになる。しかし、それこそが間違いの元凶である。
「適材適所ってもんがあるでしょう」本部総務の大津嘉人は佐伯ナナミのことを、ひいてはこの事業所そう批判した。彼女の悪評は、本部でも有名だった。
「佐伯さん、新しく入った人にど冷たいですからね。前にいた派遣の川本さんも佐伯さんのことキツい人って言ってたし、その前に入った藤山さんなんて、入って一週間くらいした時に、仕事たくさん覚えられるか不安でって佐伯さんに相談したらしいんですよ、そこで困ったことがあったら相談にのるので頑張ってくださいね、とか言うのが普通でしょう?あとは上司にそれも報告するべきですよね?なのに佐伯さん、無理して働くより自分の時間を大切にした方がいいですよ、って藤山さんに言ったらしいんですよ。せっかく入ってくれたぶんの人に。しかも、自分でそれを私に言ってきましたからね。そうやって言っときました〜って」
「え〜⁈じゃあ西沢さんにもそんな事言ってるってこと?」
「西沢さんにはしないと思いますよ。だって西沢さんは顧客から受け入れた出向者で扱い違うし、自分より格上じゃないですか」
そこで冒頭の犬っころと同じと揶揄されるのである。
「なんでそんなことするんだろうね?」
「派遣とか新しく入った人に、簡単な仕事取られたくないんじゃないですか?佐伯さん、簡単な仕事はやりたがるから。」
佐伯ナナミは派遣スタッフとしてこの会社に入った。派遣とは契約満了するかその会社に直接雇用されるか、いつかは決めなければいけない。私もこの事業所に異動となった時、
まだ派遣スタッフであった佐伯の初めて顔を合わせた時の表情を覚えている。
私は決して歓迎されてはいないと、すぐに察知したのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます