【第十五話:ルーム・エスケイプ】
「どっ毒ガスですって!? どこかに逃げないと!!」
「でもどこへ逃げるんじゃ!?」
ひとくちに毒ガスとは言っても色々あり、どんなモノかはわからないが……ほぼ100%このゲームの脱落者を殺すためのものに違いない。
そしてどこか避難場所があるわけもないこんな狭い部屋にとどまっていてはゲームクリア条件を満たしたはずなのに助からないと言う理不尽な状況に5人は出口か安全地帯を探して右往左往するばかりだ。
「そうだ、確かあの時……!!」
「もしかしたら7人全員でクリア条件を満たせば脱出口が開くとか、毒ガス攻撃が止まるとか……」
「そうに違いない!! とにかく牛田さんも早く正解の人形を探さないと!」
「あっ、ああ……だが、この状況では彼女を解放するわけにはいかない!!」
「ぐぁぁぁぁ、おぎゃあああ!! あぁぁぁぁアァぉォん!!」
牛田にヘッドロックをかけられてもなお、血走った眼で獣のようにうなりながら火事場のバカ力でもがき続けるRINKO。
「こうなったらやるしかないっすよ!!」
命あっての物種。死のカウントダウンを前に覚悟を決めた男衆は牛田に取り押さえられた発狂RINKOの右手の凶器を上着で包み込んで無力化し、不器用ながらもどうにかこうにか4人がかりでRINKOを押さえ込む。
「すまない、リンさん!!」
「信濃さんは早く正解ドールを探してくれ!! 2番と4番だ!!」
「わっ、わかったわ!!」
暴れるRINKOを4人に任せて正解人形を探し始める牛田と信濃さん。
02:14:35まで減ってしまった残り時間を前に焦って探すものの、ごちゃごちゃになってしまったガスマスクドールの中から正解を探すのは困難を極める。
「RINKOさん、落ち着いて聞いてください! 根拠はありませんが僕達5人は間違いなく助かります。ただ、貴女と牛田さんだけは絶対に助かりません」
取り押さえたRINKOの耳元で落ち着いた声で説得を試みる聖。
「そんなのいやだぁ!! 皆もおっちんでよぉ!! 2人だけなんて寂しいよぉ!!」
「どんな叫ぼうとそれはもう無理なんです! 1人で旅立つのが嫌ならいますぐこの凶器を捨ててゲームに戻って下さい!! そうすればまたチャンスは訪れますから」
「そんなのムリよぉ、だったらこの場で全員刺し違えてやるぅ!! だから放せ、放せぇ!!」
凶器をがっちりと掴んだまま罵詈雑言を吐きまくるRINKO。
『ソウダヨ ソウダヨ、オマエラ ミンナ シヌンダヨ!!』
『ハヤク シンジャエ! シンジャエ!』
『レクイエーム♪ レークイエーム♪』
『デン・デデン♪ デン・デデン♪』
「きゃあっ!!」
いきなり眼の部分をピカピカと光らせつつ甲高い声でモーツアルトのレクイエムを歌い出すガスマスクドールに信濃さんは思わず後ずさる。
「信濃さん!!」
「はいっ!!」
牛田の声に歯を食いしばった信濃さんはぐちゃぐちゃになったキャビネに置かれた残り2体のガスマスクドールを探す。
『アト イップン! ポイズン・カウントダウン オーケェィ?』
『イエース!!』
『ゴウロク……ゴウゴウ……ゴウヨン……』
「助けてぇ!! 死にたくないよぉ!! 助けてぇ!」
(くそっ、ここまでなのか!!)
最期の瞬間まで発狂して叫び続けるRINKOと見つからない人形、ガスマスクドールによるカウントダウン直樹がリアルな死を覚悟したその時だった。
「あっ、ありました!! これです、これです!!」
息も荒く2体のガスマスクドールを掴んだ信濃さんはその1体を牛田に渡す。
「ありがとう信濃さん!! これを戻す箱は……どこだ!?」
「リンちゃんも早く!」
「うっ、うん!!」
信濃さんのオーラで魔が去ったかのように冷静になってガラス片を投げ捨てたRINKO。
男衆に解放された彼女は慌ててぐちゃぐちゃになった室内のどこかに転がったトランクを探す。
「これは違う……ええと、どのトランクだ!?」
『ジュウ……キュウ……ハチ……ナナ……ロク』
脂汗と冷や汗だらけになりつつもトランクの番号を確認する7人を煽るガスマスクドール軍団のキーキー声多重奏。
「あった!! 2番のトランクだ」
「アタシのは4番だ!! おっさん、交換だ!!」
『ニイ……イチ……ゼロォォォォン!!』
ガスマスクドール軍団の歓喜の叫びに合わせて天井から落ちて来た気体とは思えぬ『塊』の如き重量圧毒ガスで地面に叩きつけられた7人は全身の激痛と共にそれを一気にすいこんでしまう。
【第十六話:ワット・ハップンに続く】
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