【第六話:ジャイアント・キリング】
『はい、そこまで!! 第一ゲーム終了ですわよお!!』
サムライリチャードの法螺貝の音と共に終わりを告げるゲームマスター・レディ。
「はぁ、はぁ……ようやく終わったぞ、直樹君」
「和田さんこそ、お疲れ様です」
「結果はどうなったんだ?」「私達、助かったの?」
狂気の終わりを告げる法螺貝の音で我に返れたヨレヨレボロボロの9人はモニターに目をやるものの、先ほどまで縦棒グラフが表示されていたレディの頭上モニターは真っ暗になって何も映し出そうとしない。
『さて、集計結果が出たので……ランキング形式で発表と行きましょう!! まず第5位は……』
モニターに現れた1~9までの番号が振られた上下に重なる9個の長方形。ダダダダダと言う効果音と共に上から5番目の長方形内で文字がグルグルガチャガチャと動き出す。
『信濃 唄子 1469ポイント!!』
「よっ、ょかったぁ……」
ひとまず脱落確定の最下位ではない、その安堵感から床に崩れ落ちる信濃さんを牛田とRINKOが左右から支える。
『信濃さん、生存確定おめでとうございますわ! 続いては……4位と6位の発表です!』
続いて上から4番目と6番目の長方形枠内で文字がグルグルガチャガチャと動き出す。
『4位は岩谷君! 1530ポイント!!』
『6位は源太郎さん、1371ポイント!!』
生存確定した直樹と源太郎は安堵の表情で見合わせる。
『次はまとめて3つを発表、2位と3位と7位よ!! さあ……だれが生き延びるかしら、ランクオープン!!』
あれだけやれば1位確定で間違いない、そう確信しているチャンバラ刀を肩に乗せたヤンキー竜五郎と最下位脱落不可避な程にボコボコにされ、座り込んで呆然とするばかりのロン毛ニキビ男。
微妙なラインで残された牛田と和田、RINKOは番狂わせが生じない事を願いつつ上から2番目と3番目、7番目の枠を見守る。
『2位、牛田さん!! 2100ポイント、 3位、和田君!! 1890ポイント、7位、RINKOさん!! 940ポイント』
番狂わせが起こらなかった事に安堵する3人であるが、ここまで来てはあのロン毛ニキビ男は助からない。
目の前で犠牲となる他人を踏み倒して生き残る何とも言えない苦々しさに3人は胸が痛む。
『さあ、ついに最後のサプライズ!! その他残り3つの御開帳タイムよ! ここで脱落となる哀れな子羊ちゃんはだれかしら?』
「うわぁぁぁぁぁ! 死にたくない、じにたくなぁい!! だすけてくれぇぇ」
死刑宣告タイムを目前にして現実に戻って来てしまい、顔を押さえて泣き叫ぶばかりのロン毛ニキビ男。
しかし残り3つの長方形枠内の文字はダダダダと動き出し、ジャッジメントカウントダウンを始める。
『最下位脱落者となったのは…… 0ポイントの竜五郎君ですう!!』
「あぁ!? どういう事だこるああ!!」
1位が確実に勝てる方法を選んだ自分ではなく加藤少年、8位が10ポイントのロン毛ニキビ男、9位が0ポイントの自分と言う最後の最後での大番狂わせにチャンバラ刀を地面に叩きつけて激昂するまだら金髪男。
『そうねぇ、まずは君が最後に一撃を喰らわせた刀を見てくれる? 手元のモニターよ?』
「……何だこれ? ドクロが描かれているぜ?」
足下に散らばったチャンバラ刀の残骸、持ち手のモニターに表示された10/100/1000/等のスコアではないドクロの文様に竜五郎は頭を捻る。
『説明は省いたんだけど、それは使用した時点で手持ちのポイントをゼロにしてしまうトラップアイテム。もし、最後の数秒で君がそれを振り下ろして佐倉川君に一撃打ち込まなければ君が1314981ポイントで1位だったんだけど……ルールはルール、と言うわけで君は0ポイント最下位でえす!!』
「うっ、うそだ……ありえねぇ」
0とドクロ表示するばかりのスマートウォッチのスコア計測結果とチャンバラ刀の持ち手のドクロアイコンを交互に見てしまうがある意味では自業自得、悪因悪果なありえない結末に膝から崩れ落ちるまだら金髪の竜五郎。
「うぉぉぉぉぉ!!」「助かったぁぁぁ!!」「ありがとう、ありがとう! オレ生きてる、生きてるよお!!」
本人も気づかぬ間に蹴っていたチャンバラ刀が誰かの足に当たった事で10ポイント獲得し、まさかの予期せぬ番狂わせで生き延びたロン毛ニキビ男に駆け寄ったその他7人は胴上げとはいかずともおしくらまんじゅうの如く身を寄せあって抱き合う。
「ふざけんじゃねえぞぉぉぉぉ!!」
お互いの生還を喜び合う8人を他所に『脱落者』となったチンピラ男は突如壁に残っていたチャンバラ刀を掴み、激昂のままに安全な特等席で優雅に扇ぐゲームマスター・レディに殴り掛かる。
『リチャード』
『イェス、マドモアゼル』
背中に隠し持っていたアサルトライフルを瞬時に構えたサムライリチャードは強化ガラスを無茶苦茶に棒で殴るばかりの第一ゲーム脱落者に至近距離で銃口を向け、眉一つ動かさずに引き金を引く。
「いやぁぁぁぁぁ!!」「うっ、うう……」
テレビゲームや映画はとにかくとして凶悪犯罪の少ない平和な日本ではまずお目にかかる事の無いリアルな肉と血の汚物塊と化した人間。モザイク無しの至近距離でそれを見せつけられてしまった8人は悲鳴も出ず腰を抜かしたまま壁際にずり逃げる。
『おほほ、楽しいゲームの最後にお見苦しい物をお見せいたしましたわ……私も自衛させていただきましたのよ』
口元を扇で覆いつつ優雅に笑うミステリアス花魁レディ。
『さて、皆様のサムライ衣装はシャワールームに回収バスケットを置いておきますのでそこにおいれくださいまし。では次のゲームまでごゆるりとおくつろぎください……おほほ』
8人の腕に埋め込まれたスマートウォッチが24:00:00のカウントダウン表示に切り替わると共に固く閉ぎされていたゲームルームの扉がゆっくりと開いて行く。
【第七話:サバイバー・チームズに続く】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます