第10話
「イッペンお祓い行っとくカ?」
作戦会議三回目にして参謀が匙を投げ始めた。
「こりゃもーいよいよ疑いよーもなくカンペキ取り憑かれてンゼ、キョーダイ。それも恋と笑いの神リョーホーカラ」
「どっちもいらんわい」
俺は金網に凭れて言う。
てか神って祓えんのか?
頭上は晴朗。なれど気分は波高し。
本日は遅刻したため、不承不承ながら毎朝恒例となっている『地獄』のぶら下がりはなかった。なら良かったじゃんと思うかも知れんが、それで問屋が卸してくれるなら蹂躙されるとわかっていて毎朝予鈴一〇分前に登校などしない。
朝俺をイジメることができずフラストレーションを溜めた『地獄』たちは、決まってその埋め合わせをすべく、昼になると給食時間だろうがお構いなく教室へ殺到するのである。当然ながらあんな話を一時間も聞かされてたら頭がおかしくなるので俺は逃走を図る。そうして恐怖の鬼ごっこの幕が上がる。
俺は迫りくる奴らの魔の手を紙一重で掻い潜り、三〇分かけなんとかこうして息も絶え絶え屋上へと逃げ延びてきたところ、昼食後の一服をしていた間部とばったり落ち合い、今朝の件を説明した。
それを聞き終えた間部が真っ先に口にしたのが冒頭の台詞である。
「イラネーって言ってもそーなっちまってンだから仕方ネーベ。カミサマが勝手なンは今に始まったことじゃねーンだシ」
「恋の神はまだ我慢するとして笑いの神ってなんだよ。間違いなくなんばグランド花月から派遣されてきてんだろそのゴッド。新幹線代出すからシュウマイ弁当買って速やかに帰阪いただくようお前からも口添えしてやってくれ」
「落ち着けキョーダイ、ムコーがその気ならコッチも毒を食らわば皿までヨ」
腹を鳴らして憤る俺を宥め、間部は他校と戦争するときの面持ちで小さな紙袋を渡してくる。
「こんなこともあろーかと奥の手ヨーイしといて正解だったナ?」
くわえタバコでニッと笑う。
「なんだこりゃ?」
マスキングテープでしっかり封印されており中身はわからないが、振るとカタカタと音がする。
「このタイミングで出てくンモンたら秘密ヘーキに決まってンベ? こいつをあとでエリちゃんに渡して『明日ウチでアソボーゼ』て誘やバッチリヨ」
「俺ん家で? ゲームにしちゃ妙に軽くねぇか」
「そー心配すンなヨ。軽くてもゲームなンざより百倍オモシレーモンヨ。オレもハマりすぎて終わる頃にゃ朝だったりするかンナ」
「ふーん」
コイツがそこまで病み付きになるということは、この秘密兵器とやらはよほど面白いものなのだろう。
俺は素直に礼を言い、有難く頂戴した。
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