第14話 無情の夢①
ポコン!
『では明日九時に、遅れない様気を付けて下さい』
『はい。ではお休みなさい』
フゥ。今日もリア充の様なやり取りをしちまったぜ。
いよいよ明日は
昼食も食べに行くけど、それはお礼だからな!
デートだなんて、そんな浮ついたもんじゃ無いぞ俺。
しかし女の人と二人でお出掛けか〜
デートじゃ無いと分かっていても、やっぱソワソワしちゃうよね。
だって男の子だもの。
あ! そういや何着て行こう。
俺まともな他所行き何か持ってたっけか?
え〜と何か無いか……
クソ! こんな事なら通販で買っときゃ良かった。
おっと、勿論『服を買いに行く服が無い』から、直接買いに行くなんてのは無理ってもんだぜ?
そんな事言われなくって分かるだろ?
って誰に言ってんだよ俺。
やべ〜マジで着て行く物無いぞ……
……まあ良いか、それこそ気合い入れた格好してっても『何勘違いしてんだ?』とか思われるだけだし。
うん、デートじゃ無いんだデートじゃ、もう普段着で良いや。
うお! 色々やってたらもうこんな時間。
せめて待ち合わせには遅れない様にしないとな。
サッサと寝よ。
※
ガタゴトガタゴト……
「う……、ん?」
はいはい、毎度お馴染み夢の中ですね。
流石の俺も五回目ともなれば慌てません。
そりゃもう慣れたもんですから。
さて、今の状況は……?
宿のそれなりに寝心地の良いベッドでは無く、地べたに布を敷いただけの野宿って訳でもなさそうだな。
この不規則に揺れる感じは乗り物の中か?
木製の簡素な腰掛けに、周りを取り囲む様な布製の屋根か。
これはアレですね、馬車ってヤツですね?
起きてるのは俺とルイ、それにロミか。
レミとリリはお互いもたれ掛かる様にして寝てる……
なかなか
起きてるロミも物珍しいのかじっと外の景色を眺めてるけど、小さな身体のロミがそうしてると、まるで子供が電車の窓から外を眺めてるみたいだ。
それはそれで良いね!
よしよし大体の状況は把握した。
じゃあ次にやる事と言えば……
「おはよう
「おう、起きたと思ったら随分な言い草だな……まあ良いけどよ」
ホウホウ成程、隊商の護衛か。
ギルドの仕事って訳ね。
「丁度進む方向に向かう隊商が有ってな、路銀稼ぎと足の確保を兼ねて受けたって訳だ。今は丁度国境の峡谷だな」
ほえ〜すげー眺めだ、両脇が切り立った崖になってるのか。
現実世界じゃなかなかお目にかかれないよな〜
……崖崩れとか無いよね?
「路銀稼ぎはともかく、足だったら馬車でも馬でも買えば良いんじゃ無いか?」
何だよその、ヤレヤレ分かってねーなーみたいなの。
「馬車や馬がいくらすると思ってんだ? それに世話もしなきゃなんねーし、それだってタダじゃねーんだぞ?」
「ああ、そっか。つまり現実の車みたいなもんか」
「そう言うこった」
夢の世界でまで金の心配とは、夢がねーなー
夢なんだからもっとこう、パーっと行きたいもんだよな。
リアルに寄せ過ぎると、糞ゲー臭がして来るぞ?
「ところで護衛って俺達だけなのか?」
「この馬車に乗ってるのはな、他の護衛も当然居るがそいつらはずっと前だ。前後で挟む様にして護ってるからよ、俺達は一番後ろだ」
所謂しんがりってやつね。
それで幌の隙間から見える後ろの風景に、他の馬車が見えなかったのか。
じゃあロミは景色を眺めてたんじゃ無くて、後方警戒。つまりちゃんと仕事をしてたのか。
小さな子供みたいとか思ってゴメン!
「ロミご苦労さん、変わろうか?」
「あっ! 勇者さ……いえライトさん。ボクは大丈夫なので休んでて下さい」
そんな良い笑顔で元気いっぱいに返されたら、無理に代わるのもちとアレだよな。
後、勇者様呼びはなかなか抜けないのな。よっぽどインパクトが有ったのか、スッカリ刷り込まれちまったみたいだ。
「疲れたら言うんだぞ、俺達は仲間なんだから」
「了解です!」
うんうん、今のはなかなかリーダーっぽいセリフだったんじゃ無いかな?
普段こう言う事言うのはルイの仕事だからな、俺だってそろそろ自覚ってのが出て来たんだぜ?
「言う様になったじゃ無いか『勇者様』」
「流石に慣れて来たさ、それに今のは勇者としてじゃ無く、リーダーとして仲間に言ったんだよ」
「はっはっは、こりゃたまげた。まあ自信を持つ事は悪い事じゃ無い、どうせなら現実世界でもその位自信持ってみたらどうだ?」
「それが出来れば苦労しないよ」
それが出来る位なら、俺ももう少しマシな人生送ってたかも知れないな。
でもまあ無理なもんは無理、夢の中で味わえた事をせいぜい感謝しとくさ。
「ライトさん、ルイさん」
「ん? どうしたロミ」
そういやロミの前で、現実世界だのなんだの話してて平気だったのか?
まあ夢の世界の住人に聞かれたところで、何がある訳でも無いか。
「後ろから何か来ます」
「何か? 何かって……ルイ!」
「俺の『
「来ます!」
……ズドン!!!
な、何だ!? ロミが叫んだと思ったら、馬車の直ぐ後ろに何か落ちて来たぞ! ぬわ!
つつ、何だどうなった? って衝撃で馬車がひっくり返ったのか!
なんつー勢いで落ちて来たんだよ、隕石か何かか?
「みんな無事か!?」
「お、おう」
「イタタ、一体なんなのよ。やっと寝れたと思ったのに!」
大丈夫だレミ、夢見てるって事はちゃんと寝てるって事だ。
「ぼ、ボクも何とか平気です」
「リリは? おいリリ!」
狭い馬車の中だし、そりゃ直ぐ見つかるよね。
リリは馬車の奥で逆さまになって気を失って……
いやあれ寝てるな、なんつー豪胆な。
「ルイ、リリを起こしてくれ。ロミは怪我人が居ないか確認を、でもなるべく“
「了解です。 ! ライトさん、あ、あれを!」
何だ? ロミが指差した方って何かが落ちて来た所だよな?
舞い上がった土埃が晴れてきたけど……ん!?
なんだ? 人? え?
おいおいマジかよ。土埃が晴れたと思ったら、爆心地の真ん中に誰かいやがる。
黒い……
じゃあ人間があの勢いで落ちて来たってのか?
しかもそいつ、事もあろうかヒーロー着地を決めてるじゃ無いか!
おい、どこの主人公だよ!?
あ、立ち上がった。そんで手をこっちに差し出して……
「みんな危ない! 私の後ろに!」
「ヘルライトニング……」
「シールド!」
バヂン!
「ぐっ! 何だ、魔法?」
「攻撃魔法よ、しかも相手はアイテムを何も使って居なかったわ」
それってどう言う事だ? 魔法使うにはクソ長い呪文やら、何やらが必要だったよな。
それを省略するために、
それを使わないで魔法撃つとか、どんなチートだよ!
チート……“特技”か!
だったら化けの皮を剥いでやるぜ!
『
『名前:*]“|>*[”.!,・m
種族:!>%}!‘・あljb
性別:・cすいjvるqjっkl
年齢:!,!\“
職業:・あvfjcbsqきっj
レベル:・ん>;
特技:・”]>||]%“,!’ ・!,[#?!#!\” ・!_=‘!|“[・fk ・bsjxjっkjgっhj ・^_^あひうっhk「「 ・}#€!|_*”“n』
は? 何だこりゃ、文字化け?
レムやロミを見た時みたいに、知られたく無い所だけ見えないとかじゃ無い。
何一つ見えない!
しかもこれ、俺の思い違いじゃ無いとしたら……
「どうしたライト! 惚けてる場合じゃ無いぞ、さっさと戦う準備をしろ!」
「あいつ……」
「あ?」
「あいつ”特技“を六個持ってやがる……」
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