第13話 夢じゃない④
「勇者様、ルイさん、お早う御座います」
「呼んできたよー」
「リリご苦労さん! レムもな」
「別にこの位いどうって事無いけど」
おお!
普段の来小野木さんも良いけど、ツンツンエルフもまた魅力的ですな〜
やっぱアレってレムを演じてるんだよな。
今朝の感じだと、素がレムって事はない気がするし。
かと言って会社にいる時の、真面目モードも違う気がする。
あれはあれで、どこか無理してる感じが有るんだよなー
……酔った時のが素だったらどうしよう。
確かにあのデレ甘な来小野木さんも嫌いじゃ無いけど、正直童貞には刺激が強過ぎます。
それからロミ。サラッと俺の事勇者様って呼んだけど、小っ恥ずかしいのでやめて下さい。
「よし全員揃ったな。リリ、必要物質の買い出しは終わったな?」
「バッチリだよー」
「レム、
「完了よ」
「ライト、この街で他に何かやっておきたい事は?」
「特に無いな」
「ロミ、俺達と一緒に行く事に後悔は無いな?」
「はい!」
「よし、次の冒険へ出発だ!」
ジリリリリリリリ!
「んあ!……あ〜知らない天井だ……」
あれ? ここ何処?
……あ、そうだそうだ。来小野木さんの家に泊まったんだっけ。
ん? と、言う事は……
「いっつ……昨日は飲み過ぎたわね、途中から記憶が無いわ」
「あ、こ、来小野木さんお早う御座います」
「おはようございます……って!
「わー! いいいいえななな何もしていません!
って言うか、この
「! そ、そうでしたね……私とした事が」
「あ、お水でも持って来ましょうか? ……来小野木さん?」
なんだろ、俺の事じっと見てるけど、しかも何か不機嫌そう。
「ハァ……本当に何もしなかったんですね」
「え、あ、はい勿論です」
「意気地なし(ボソ)」
「え? な、何か言いましたか?」
「何でも有りません! 私はシャワーを浴びて来ます」
「じ、じゃあ俺は時間がまだ早いんで、一度帰ってから出社します。で、では後ほど」
ふっ……まさかこの俺が女性の家から朝帰りとはな。
太陽が黄色いぜ……ってな事も無く、いやまあ何も無かった訳だし?
何せ俺は紳士だからな!
酔い潰れてる女性に手を出すとか、そんな犯罪めいた事絶対しないぜ。
……でも少し勿体無い事したか?
イヤイヤ、これは正しい事だ。
本当か? 実は来小野木さんもチョット位はは期待してたとか……
んな訳あるかー!
全く、これだから童貞は。
良からぬ妄想してないで、さっさと帰るぞ!
※
「お、おはよう御座います、来小野木さん」
「お早う御座います。一度帰って良く間に合いましたね」
「ちょっ! ……そう言う事は余り大きな声で言わない方が」
「何故です? 何もやましい事は有りませんから、特に問題ないのでは?」
「あ、有りますよ!」
来小野木さんって天然なのか?
そんな事を大きな声で話して、周りから変な誤解を受けたら……とか思わないの?
って言うか、なんか怒ってる?
……俺の気のせいか?
「それと秋月さん。お昼はいつもの会議室で、今日は
「そ、そうですか……」
ルイも来るのか……
来小野木さんと二人が良かったな……
っと、そういや。
「か、係長は?」
「貴方が来る前に呼び出されて何処かに」
あーあ、死刑宣告受けに行ったか。
ご愁傷様です。
さ! 今日も頑張ってお仕事お仕事っと。
※
「ほーん、愛妻弁当ってやつか?」
「違います、作り過ぎてしまったので食べて頂いてるだけです」
「そ、そうです! 残すと食材が勿体無いからな!」
来小野木さん、今朝は結構辛そうだったけど、良く弁当作って来れたな。
しかもまた作り過ぎるって……
やっぱお酒が残ってたのかな?
「は〜〜〜もうお前らサッサとくっ付けよ」
「な、何か言ったか?」
「何でもねーよ。ところで昨日の夢、何だありゃ」
「な、何が……」
「終り方だよ! まるで打ち切りエンドみたいな終り方だったじゃねーか」
あ〜確かに、どっかに「◯◯先生の次回作にご期待下さい」って書いてありそうだったわ。
「で?」
「で? って、不安にならねーのか? もしかしたらあの夢はもう終わりかも知れないってよ」
「……い、いや。だとしても別に不都合無いし」
「何だよつまんねーなー! 折角夢を通じてこうやって出会えたってのに、ちっとは感謝の気持ちとか無いの!?」
ルイは本気で心配してる感じだけど、俺は別にって感じだな。
大体感謝って言うけど、誰に感謝しろって言うのさ。
そりゃこの不可解な現象を起こしてる張本人に会えるって言うなら会ってみたいけど、何のつもりか問い詰める事は有っても感謝する事は無いと思うぞ?
それにこんな訳分からん事、無くなるに越した事無いだろ。
「お、俺は特に何とも思わないな」
「酷い! お酒まで一緒に飲みに行った仲なのに、俺との事は遊びだったのね!」
いやマジでキモいんで、本気でやめて下さい。
筋肉ゴリラが泣き真似とか、何処に需要を求める気だよ。
「まあ俺との事は良い。だがよ、来小野木とそこまで仲良くなれたのは、夢のおかげなんじゃねーの?」
「お、俺と来小野木さん?」
確かに前に比べれば話す機会は増えたけど、仲良くなったって言うのはどうだろ。
夢を見始める前でも、来小野木さんは俺の教育係として色々教えてくれてたし、お昼を一緒に食べるのも、作り過ぎた弁当を消費する為だ。
美容院に連れてってくれるのも、余りに見苦しい俺を少しでもマシにする為だろう。
そうでもしないと、一緒に居る来小野木さん自身が不快な思いをするからな。
うーん、やっぱ特別仲良くなっては居ないんじゃ無いか?
何より俺と仲が良いなんて言ったら、来小野木さんが迷惑するよ……
「と、特に仲良くはなってないと思うけど」
あれ? なんか胸が苦しい、やだな〜変な病気じゃ無いだろうな。
「お前またそんな事を……来小野木、苦労するな」
「何のお話でしょうか? 私は別に……
ですがそうですね、彼のあのネガティブ思考は少々行き過ぎていると思う所は有ります。おそらく自分への自信の無さが起因しているとおもわれますので、何らかの方法で自信を取り戻させてあげれば、もう少し前向きな思考にもなるのでは無いでしょうか?」
「そりゃそうかも知れんが、あの自信の無さっぷりはちょっとやそっとじゃ、どうにかなるとも思えんぞ」
何か凄い好き勝手言われてるけど、実際そうなんだから仕方が無いよな。
自分でもこの性格を治せたらって思うけど、今更治せる気もしないんだよな……
「そこで私に少々考えが有ります」
「ほう、どんなだ?」
「彼を化けさせようと思います」
え? なに、どう言う事?
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