第10話 夢じゃない①
「……」
「……」
ここは昨日
俺が紙に書いた数字は“100”。
来小野木さんが書いた数字は“3018”。
夢の中でお互い言い合った数字と、ピタリ合ったと言う訳だ。
「これでハッキリしましたね。私達は夢を共有しています、昨晩見た夢の内容も覚えていますよね?」
「は、はい勿論です」
今日も来小野木さんは俺の分の弁当を持って来てくれた。二度も続けて作り過ぎる何て、来小野木さんてば意外にオッチョコチョイ?
俺的には美味しい食事に有り付けるんで、とても有難いですけどね!
「と、取り敢えず夢を共有しているのは分かりましたが……
これからどうします?」
「どうします、とは?」
「いえ、ですから病院に行くとか……」
「行ってどうにかなるとも思えませんね、良いところ夢を見ないで済む薬を処方される位でしょうか」
「そ、そんな薬が有るんですか!?」
「さあ、私は専門家では無いので」
まあそうだよな。
この場合は精神科とかになるんだろうけど、それってつまり心の病認定されるって事だよな、二人揃って。
俺だけならまだしも、来小野木さんをそんな目に合わせるのは嫌だな……
「私は……」
「はい?」
「私はこのままでも構わないと思っています」
「はあ……」
そうなのか?
……確かにあの夢を見たからって、特別何かある訳じゃ無いけど。
でもチョット気味悪いと思わないのかな?
「
疲れが取れなかったり、余り寝れていないと感じたりしていますか?」
「え! えーと、そんな事は無いです。寧ろ以前より寝起きはスッキリしている様な……」
「私もです」
そうなんだよ、あの夢を見る様になってから、寝起きが全く辛く無いんだよ。
前は朝起きた瞬間永眠したくなる程だったのに、今はそんな気持ち全然無いんだよな。
まあ正直来小野木さん効果かと思ってたけど。
「それに……それに、こう言う言い方は少し子供っぽいかも知れませんが、なんだかワクワクしませんか?」
「こ、来小野木さんもですか?
実は俺もです、夢を見るのが少し楽しみになって来てます」
「何せ『勇者様』ですからね」
「からかわないで下さい」
くうー! まるで悪戯っ子みたいな笑顔を浮かべる来小野木さんとか、メッチャ可愛いんですけど!
そうだよな、こんな事でも無けりゃ来小野木さんとここまで親しくなんかなれなかったんだ。
気味悪がるどころか、感謝しても良いくらいじゃ無いか。
「ああ、そうでした。秋月さん、次のお休みご予定は?」
「へ? あ、床屋に行って来ようと思ってますが……」
うん、この前約束したからね!
心配しなくても、ちゃんと行って来ますよ。
「そうですか、では私の行き付けの美容室が有りますので、そこへご案内します。何時が良いですか?」
「時間は何時でも、他に用事も無いですから……」
「そうですか。では10時に予約を入れておきます、待ち合わせは9時に駅前で如何でしょうか」
「はい……はい!?」
待ち合わせ! 誰と? 来小野木さんと!?
俺が!? そういや「ご案内します」って言ってたわ!
それってまるでデートみたいじゃん!
いやいや落ち着け先走るな。
そんな訳無いだろ、俺と来小野木さんがデートなんて。
ほっときゃ1000円カットで適当に済ますんだろ? って思ったんだよなきっと、ハイまさにその通りですけど!
だから少しでも見苦しくならない様に、美容室へ連れて行こうって魂胆ですよね!
ふふ、ボクはちゃーんと分かってんだー
「他に用事も無いのでしたら、その後はどこかで昼食にでも致しましょうか」
デートじゃん!
もう紛れも無くデートじゃん!!!
「いいい、良いんですか? 俺となんか」
「何がです?」
「いえ、その貴重な休日を俺とのデ、あ、いや俺の為になんか使って……」
「そうですね……」
あ、余計な事言わなきゃ良かったか……
何でこうフラグをへし折る様な事言うかな。
いやいや思い上がるな、そもそもフラグなんて……
「ではお昼を奢って下さい。それでチャラと言うのは如何でしょう?」
立ってるんじゃね?
もう勘違いでも良いよ! 少しの間この気分に浸らせて貰うよ!
「わ、分かりました。では当日宜しくお願いします」
「はい」
何だか来小野木さん嬉しそう。
なんかとんでも無く高いお昼とか奢らせられたり?
……そんな顔見れるんなら幾らでも奢りますけどね。
「ではそろそろ戻りましょうか。今日は残念ながら
「い、居なくても戻らないのはマズイと思いますよ」
「フフ、そうですね」
「そ、そう言えば、チョット気になったんですが」
「何ですか?」
「何故あの時ロミを見て微妙な顔をしてたんです?」
「そ! それは……内緒です!」
あ〜もう、なんでこの人はイチイチ可愛いんだろ。
は〜〜〜俺にもう少し勇気が有ればな……
……? 有ったら何だってんだ?
烏滸がましい事考えるなよ俺、告白なんかできる訳無いだろ!
勇気とかそう言う問題じゃ無いんだよ!
※
「秋月〜お前とうとうなんかやらかしたな〜」
うわキモ!
戻って早々に係長が、何時もみたいに怒鳴るんじゃ無くキモい猫撫で声で何か言ってきたぞ。
え? 俺なんかやったっけ?
「情シスの
情シス(情報システム統括部)の部長?
なんだ? 全く身に覚えが無いぞ。
「お、いらっしゃったぞ、頭下げんか!
これはこれは塚本部長、わざわざお越し頂かなくてもこちらから出頭させたものを」
「いや、気にしないでくれ。たまには現場も見ておきたいんでね、君が秋月君かな?」
んん? なんか何処かで聞いた事の有る声な気が……
「ははは、はい。私が秋月ですが……」
「そんなに畏まる必要は無い、頭を上げてくれ。
……君はいつまで彼の頭を押さえ付けている気かな?」
「ああ、これは私とした事が!
何やってる、ほれ部長に顔をお見せしろ」
「は、はい……!!!!」
「ふむ。係長、すまんが彼を少し借りるが大丈夫かな?」
「はいはい、それはもうお好きなだけどうぞ。(秋月〜如何わしいサイトでも見てたのがバレたんじゃ無いか〜)」
くっ!
わざわざ耳元で俺だけに聞こえる様に言うな!
つーか口がクサイから近くで喋んな!
いやそんな事どーでも良いんだ、なんでここにお前が居るんだ、ルイ!
「なに、少し話しをしたいだけだ。
それと係長、名前を何と言ったかな?
ああ、いやそんな事はどうでも良い。情シスでは内部外部に関わらず全ての通信を記録し監視している。
君のPCから、そう君の言う所の“如何わしいサイト“への接続が頻繁に報告されている、少し加減した方が良いと思うがね」
「そ! そそそそれは、そうだきっとコイツが、この秋月が私のPCを勝手に使って……」
「ほう、君は自分のPCにパスワードも掛けていないのかね?
それとも秋月君は、12桁のパスワードを
何れにせよ君には何らかの処分が言い渡されるだろうから、今から机の整理をしておきたまえ、では失礼する」
「ぶ、部長! 私は悪く有りません! 部長ー!」
係長の声は俺達が部屋を出るまで続いてたけど、ルイ、塚本部長はそれ以降振り返りもしなかったよ……
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