第9話 夢の中へ④
「まあ落ち着いて話しを聞け。
良いか? 先ず大前提として『勇者』何てモノは存在しない。そんなもんガキを寝かし付ける時に読み聴かせる、御伽話の中位にしか出て来ねーんだ。
勿論国にだって認められてる訳じゃ無いから、援助を受けれたりする事も無い」
何てこった! じゃあ旅立ちの日に王様に呼ばれて、端金を貰って放り出されるなんてイベントも無かったって事か。
いやそれは無くて良いけど。
「そもそもお前を勇者と言ったのは、お前の特異な“
「どう言う事だ? 俺の“特技”って『
それとも他にまだなんかあんのか?
今知ってるのだけでもやっと使える様になった位なのに、これ以上増やされても困るんだが!?
「お前を勇者たらしめてる“特技”はズバリ『
『奪取』?
何その悪そうな“特技”
「『奪取』はな、文字通り相手の“特技”を奪って自分の物にする“特技”だ。
俺の知る限りそんな“特技”を持ってる奴は、お前以外見た事が無いし聞いた事も無い。
それこそ『女神の
うわーマジかー
俺の中の勇者像が音を立てて崩れてくよ〜
相手の“特技”を奪うとか、何か悪い奴っぽくね?
それってどっちかって言うと、魔王の方が使うんじゃね?
「つまりお前はその気になりゃ、幾つでも“特技”を保有出来るんだよ。
普通“特技“は一人に一つ何なら持ってない奴が大半だ、稀に複数持ってる奴も居るがそう言うのはほんの極一部だ」
「じゃあ三つ持ってるルイも実はすげー奴って事か?」
「まあな、自慢じゃ無いが三つ持ちはかなり稀だ。俺が知ってる限りだとお前を抜かせばレミ位だな。
まあお前が元々持ってた”特技“がどれなのか、今となっては分からんが」
確かにそうだな、少なくとも『奪取』は最初から持ってたんだろうけど、他のは誰かから奪ったのかも知れないし……
「所で”特技“ってのは、どうやって身に付けるんだ?
なんか特別な修行するとかか?」
「そんな事しねーよ。
”特技“ってのは持って生まれる物。
神様からのギフトなんだからよ」
「つまり後から増える事は有り得ない?」
「そう言うこった、だからお前は特別なヤツって意味で『勇者』と言ったんだ」
「あ、あの〜」
あ、ごめん。話しに夢中になってロミの事放ったらかしだったわ。
「えーと、そう言う訳なんだけど……どうかな?」
何だその誘い方!
いや俺だってもっと自信を持って誘いたいよ?
何ならさっき迄は自信も有ったさ。
でも真実を聞いちゃうとな〜
もうさ〜勇者勇者言われても舞い上がってた自分が恥ずかしいわ!
「はい……ボクで良ければ仲間に入れて下さい!」
「えっ! 良いの? ホントに?
俺の“特技”聞いたよね?
言いたくは無いけど、下手すりゃロミの『女神の御子』だって奪われちゃうかも知れないんだぜ?
勿論そんなつもりは無いけど」
「大丈夫です。これでも人を見る目に自信は有ります、ライトさんがそんな悪い人には見えませんから!」
いやそんな眩しい笑顔で言われても。
ついさっき金メッキ野郎の所に行って酷い目に合わされた事、ロミの中では無かった事になってるのか?
大丈夫か? この子。
なんかもう仲間云々は置いといて、近くで見守ってあげないといけない気がして来たぞ……
これが父性ってやつか?
「信用してくれて嬉しいよ。じゃあロミ、これからよろしく頼む」
「はい!」
「しかしまさか『女神の御子』が仲間になるとはな。
良いかライト、ロミが御子持ちって事は間違っても外部に洩らすなよ?」
「分かってるよ」
『女神の御子』は国に保護されるレベルって話しだろ?
ロミが御子だってバレたら一体どうなるか、いくらこの世界の事に疎い俺だって想像が付く。
「んじゃ新しい仲間も増えた事だし、歓迎会って事でパーっとやろうじゃねーか。
そろそろレム達も帰って来るだろうしよ!」
「私達がどうしたって?」
おおう、噂をすればってやつだね。
丁度良いタイミングでレムとリリが帰って来たわ。
でもノックもせず部屋へいきなり入って来るのは、人としてどうかと思うぞ?
特に男の子の部屋にノーコール、ノータイムで入るのはダメゼッタイ!
そうだ! 二人の実力を知る上でも『識別』使っとくか。
決してやましい気持ちなんか無いぞ!
『名前:レム
種族:エルフ族
性別:女
年齢:??
職業:
レベル:44
特技:・
フム、“特技”に関してはルイが言ってた通り三つ、近接戦闘系が二つと魔法系が一つかな? 多分。
年齢は……種族年齢どころか人族換算のまでナイショかよ。
よほど年齢には触れて欲しく無いんだな。
あ! そう言う事か。つまり『識別』で分からない項目って、本人が他人に知られたく無いと強く思ってるって事か。
だとしたら、ロミは性別を知られたく無い?
でもそれなら“特技”の方を隠すと思うんだけど……
うーん、違うのかな〜
『名前:リリ
種族:獣人族
性別:女
年齢:17
職業:??
レベル:31
特技:無し』
リリは職業……って言うか、暗殺者だって事を知られたく無いか。
まあ当たり前だわな、あんな過去が有るんじゃ……
でもそうなるとやっぱ、俺の予想は当たってると思うんだけどな〜
“特技”は無しか、
年齢は十七歳か、人族換算ってのが出てないとこ見ると寿命は俺達と大して変わらないって事何だろうな。
おっと、勿論
えーと俺の書いた数字は……
「おう! 帰ったか。レム、リリ紹介するぜ、新しい仲間のロミだ」
「わーよろしくー! リリはリリだよ〜」
「……」
どうしたレム、そんな微妙な顔して。
あ、睨まれた。何で?
「フゥ……レムよ、よろしくねロミ」
「聞いて驚くなよ? 何とロミは『女神の御子』持ちだ!
これで格段に冒険がし易くなるぞ!」
仲間内なら言っても大丈夫だよな、寧ろ言っておかないと後々面倒な事になりそうだし。
「それ本当!? 御子持ち何て初めて見たわ」
「ロミちゃん凄いんだねー……『女神の御子』て何?」
うっそだろ!
まあ良い、きっと後で懇切丁寧に教えてくれるよ。
解説役のルイがな。
しかしアレだな、レムの中の人が来小野木さんって知っちまってると、普段とのギャップが凄いな。
ホントに来小野木さんなのか?
それを確かめる為にも……
「レム! 俺の数字は100だ!」
レムが俺の顔見て頷いた、あれは俺の言った事を理解してる顔だな。
「私の数字は……」
ピピピピ……
ヤバイ! この音は……待て俺、もう少し起きるな!
「3018! さんぜんじゅうh……」
ピピピピピピピピピッ!
「3018か〜」
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