第7話 夢の中へ②
「で? お目当ては『女神の
「ああ、まあ回復役を仲間にするのは無理って事は分かった。
でも取り敢えずギルドには行ってみるさ」
「そうかよ、じゃあサッサと行こうぜ」
「レム達を待たなくて良いのか?」
「杖のチャージにはとんでも無く時間が掛かるんだよ、アイツらは夜まで帰って来ないさ」
そんなもんなのか、回復役じゃ無くても新しい仲間を入れるなら、レムとリリにも相談したかったんだが……
ま、良いか。
まだどうなるか分からんし、後から相談でも良いだろ。
※
「ここがこの街の『冒険者通り』だ。
ギルドの他にも旅に必要な物を扱う、各種店舗が揃ってるぞ」
「ほえ〜こりゃすげーや、ちょっとした商店街って感じだな」
お! あっちに有るのはお馴染みの武器・防具屋だな。
その隣には、旅に役立ちそうな道具類が並んだ店が有る。
あ、でかい乾燥させた肉の塊が置いてある、これが保存食ってやつか?
美味いのかな〜そういや夢の世界に来てから、何も食った事ないけど夢でも味すんのかね?
あ、いや。ルイにクソ苦コーヒー飲まされたわ。
って事は夢でも味は感じるって事か。
それならこっちの食事もして見たい所だな!
お、何処からとも無く良い匂いが……アレは串焼き?
やべ美味そ。
「ギルドはこっちだ。ったく、お上りさんみたいにキョロキョロしてないでサッサと行くぞ」
「んだよ、折角何だから少し見学させろよ」
「はあ? 『冒険者通り』なんざ、どこでも同じ様なもんだろ」
こっちは初めてだっての!
はーやれやれ、心まで筋肉の奴には旅を楽しむって事が出来ないのかね〜おーやだやだ。
「よしここだ。おい何処行く、あっちは発行窓口の入り口。
俺たちゃこっちだろ?」
「発行窓口って何だ?」
「……分かった、もう何も言うまい。
お前の事は今後、何も知らない初心者と思って接する」
クソッ!
なんかすげー呆れられたみたいだけど、知らない事を知らないままにするよか全然良いだろ?
「良いか? 発行窓口ってのは、新規で冒険者になりたいって奴がライセンスを発行して貰うための窓口だ。
俺達は既に持ってるから、こっちの冒険者用入り口だ。
……因みにライセンスカードは持って来てるよな?
つーかまさかだが、無くしたりしてねーだろうな……」
「ななな無くしてねーよ!」
ライセンスカード!
冒険者の免許証みたいなもんか?
何処だ何処だ?
あの言い方からすると、割と大切な物っぽいよな。
だとしたら……『
いやだからね? まだ使い方良く知らないんだってば。
確か前剣を出した時はこんな感じで手をかざして、必要な物を思い浮かべた……ような気がする。
出て来い出て来い、ライセンスカード!
「フン、流石に無くしちゃいなかったか。しかしその『次元収納』は、いつ見ても便利そうで羨ましいぜ。
よし中へ入るぞ」
うはは! 本当に出て来た!
出て来たって言うか、何も無い空間に黒い歪みみたいのが現れて、そこからヌルッと出て来たぞ。
これが『次元収納』か〜
中はどうなってるんだろ。
歪みに頭突っ込んだら見れるかな?
まあ馬鹿な事考えてないで取り敢えず入るか。
ほうほう、これが冒険者ギルドか。
見た目だけで言えば、テーブルと椅子が並んでて飲み食いしてる奴がいて……なんかただの飲み屋っぽいな。
奥にはカウンター? 窓口って言うのか?
多分ギルドの職員なんだろうけど、何人かが冒険者風の奴等と話したり、あ〜口論してるのも居るな〜
それ以外には……うん、やっぱり有ったよ掲示板。
依頼書が貼ってあるんですね、分かります。
で、その依頼書を窓口に持って行って仕事を請けるって寸法ね。
「所でライセンスカードを無くしたらどうなるんだ?」
「カード自体はいくらでも再発行して貰えるが、今までの記録は全部白紙になって駆け出しから再スタートだな」
「ふーん……」
「イマイチ分かってねーみたいだな。
良いか? 冒険者にはランクってもんが有るんだ。
ランクはギルドから斡旋された仕事を請け負って、達成した回数や仕事の重要度で上がって行く、ここまでは分かるよな」
「おう、分かるぞ」
何ちゃら言う、モンスターを狩るゲームもそんな感じだったよな。
俺は根気が無いのと、一緒に遊んでくれる友達が居なかったんで、早々にリタイアしたが。
「で、ランクが上がるとそれに応じて稼ぎの良い仕事も斡旋して貰える様になる、当然危険度も跳ね上がるがな」
「へ〜じゃあ俺達は相当ランク高いんじゃ無いか?
何せ魔王を倒そうって言う、勇者様パーティーな訳だし」
「ん、いや。俺達は『銅の二枚目』だ」
「んん? それってどうなの?」
「下から二番目だよ」
何だよ! それだったら駆け出しと大して違わねーじゃんか!
でもおかしくね? 仮にも魔王討伐しようとしてんだよね?
それでそのランクって……
もしかして魔王討伐も、俺が勇者だってのもルイの冗談かなんかか?
「全員?」
「そうだ、俺もお前もレムもだ。
何ならリリに至っては冒険者ですらない」
「はあ!? いや可笑しいだろ、どう見たってお前ら強いじゃん。
それにリリが冒険者じゃ無いってどう言う事!?」
「リリは“抜けて来た”奴だからな、冒険者登録は難しいんだよ」
「抜けて来たって、何を」
「暗殺者ギルドだよ、アイツが
「知ってる」
良かった、暗殺者で有ってた。
いや良かったってのも変か、響き的に褒められた職業じゃ無さそうだし。
「普通に考えりゃ暗殺者ギルドを抜けて未だに生きてる、しかも暗殺者の技も普通に使えてるってのは、余程おかしな事なんだぜ?」
「そうなのか?」
「そうなんだよ! まあ俺も詳しい事までは知らねーが、本来暗殺者ギルドを抜けるのは、死んだ時位なんだとよ。
もし生きてる内に抜けるなんて言った日にゃ、その場で殺されるか、全ての記憶を奪われて捨てられるか。
そんな二択だそうだ」
壮絶だな、流石暗殺者ギルドって所か。
まあ色々汚い仕事も受けてそうだし、そのどれもが人の生き死にに関わってる事だろうからな。
そりゃそうもなるか。
「なるほどな……ん? ルイ、その話し誰に聞いたんだ?
やけに詳しいが……」
「リリ本人にだよ」
「は? いや可笑しくね?
リリは暗殺者の技を使えてるんだろ?
それにそんな話しをしたって事は」
「そう、リリは何も奪われて居ない。
確かに奪う為の施術は受けたらしいんだが、何故だか何もかも覚えてたそうだ。
何でかは本人にも分からんのだから、俺が知るはずも無いな」
あんな可愛いケモっ子なのに、なんて重い人生なんだよ。
リリは俺に随分懐いてくれてるみたいだったし、今度会ったら思い切り甘えさせてやろう。
まあ夜には会えるんですがね。
「冒険者ギルドや暗殺者ギルドに関わらず、ギルドと名のつく所は多かれ少なかれ横の繋がりってのが有る訳だ。
なので、リリが冒険者ギルドに登録すりゃ、暗殺者ギルドにその情報が行くかも知れない。
つまり記憶を失ってる筈の奴が、暗殺術を使って仕事してるってな。
そうすりゃ今度こそ間違い無く命を取られるだろうよ」
「なるほどな、それでリリは冒険者として登録出来ないって訳か。
じゃあレムはどうなんだ?」
「ああ。レムはって言うか、元々エルフは余り人里に降りて来るような事は無い種族だからな。
言ってみりゃ、そう言うもんに興味が無いんだよ。
冒険者ギルドに登録したのも、その方が仕事をし易いからって俺が無理矢理登録させたようなもんだしな」
「つまりレムはエルフの中でも変わり者って事か」
「まあそう言うこった」
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