第6話 夢の中へ①
ポコンッ!
『
キチンとした物を食べましたでしょうか。
偏った食事は身体に良く有りませんよ』
おおう!
ってなんか内容がオカンみたいだな。
いやしかし、家族以外からでしかも異性からの初LINEだ。
これは消さずに永久保存しとこう。
そうだ、早速返信しないとな。
えーと『来小野木さんこんばんは、食事はコンビニ弁当ですがちゃんと食べましたよ。なんとサラダも食べてしまいました』っと。
こんな感じで良いのか?
うーん、LINEなんて殆ど使わないから良く分かんないな〜
あ、そうだ。確かスタンプってのが有るんだよな?
やっぱそう言うのも使った方が良かったりする?
むむ、最初から入ってるスタンプじゃ、イマイチ可愛げのある奴が無いな〜
どれどれ……ほうほう、結構色んなスタンプが有るんだな。
うお! こんなキャラのまで有るのか、これ欲しー!
ポコンッ!
『キチンと食べたのなら良いです。
私はこれからシャワーを浴びて寝ます。
また寝る前に連絡します』
これからシャワーか……
うっ! いかん、ついよからぬ妄想をしちまった。
おかしな事考えてないで、俺もさっさとシャワー浴びて寝る支度しよ。
※
『お預けした手帳は例の夢を見たら会社に持って来て下さい。
では私はこれで寝ます。
お休みなさい』
『お休みなさい』っと。
うわやべ、もうこんな時間だ。
ついつい時間を忘れて、来小野木さんとやり取りしちまったい。
でもこれって何か、付き合い始めのカップルみたいだよな!
そんな経験無いから、良く知らんけど。
……さっさと寝よ。
※
「んあ!」
……えーと、こりゃどっちだ?
今の状況は……ベッドの上か?
でもこりゃ「知らない天井」ってやつだ。
自分の部屋じゃ無いって事は、夢の中って事で良いな?
怪我してる訳でも無いから病院って訳でも無さそうだし、辺りを見る限りこりゃ宿の類いかな?
どれ、窓を開けて外でも見てみるか。
おー! こりゃまた異国情緒の溢れる街並みだな。
建物は木造の二、三階建てが支流で、それ以上高さの有る建物は近くには見えんな。
あ、でも道には石畳が敷いてあるのか。
馬車もそれなりに行き交ってるし、見た感じだとそこそこ大きな都市っぽいな。
まあこの世界の一般的な都市がどの程度か分からないけど、文化水準は思った程低く無いのかも。
うん、正に良く知るファンタジー世界の街並みって感じだ。
でも考えてみりゃ俺の夢な訳だから、俺の知識が反映されるのは当たり前だわな。
……いや待てよ?
来小野木さんと夢を共有してるって話しが事実だとしたら、これは本当に俺の夢なのか?
来小野木さんの見てる夢を、俺が見てるって可能性もある訳だよな?
……うん、考えても分からん事は分からん。
取り敢えず来小野木さんと会って例の実験を進めよう。
コンコン
「おーいライト、起きてるかー」
丁度良いところに来たな、筋肉ゴリラことルイ。
今の状況と来小野木さん、いやレムの事を聞いてみるか。
「起きてるぞ」
「おう、入るぞ」
相変わらずのゴリラっぷりだなオイ。
ほうほう、無地のシャツにズボンとブーツか。
冒険中より肌の露出が少ねーじゃねーか!
まあ街中で半裸に鎧じゃ、まるっきり変態だしな。
「じゃあ出掛けるぞ」
「は? 出掛けるって何処へ」
「何言ってるんだ、お前がもう一人仲間が欲しいっつったから、ギルドへ勧誘しに行くんじゃねーか。
この街に寄ったのもその為だろ?」
「あーそうだったな、すまんすまん」
俺そんな事言ったのか、まあ今は話しを合わせておくとして。
もう一人仲間ね〜
あ〜確かに今のメンバーだと、回復役が居ないよな〜
筋肉は筋肉だし、レムねーさんの魔法は攻撃特化っぽいし、リリに回復魔法的な物が使えるとも思えん。
もしかしたら、痛みを忘れて死ぬまで戦い続ける事が出来る、不思議なオクスリとかは持ってるかもな、
と言う訳で、やはり回復の専門職は欲しいよな。
でもこの世界で回復ってどうやるんだ?
何と無く回復魔法的な物が有るって思い込んでるけど、実際はどうなのよ。
「なあ、回復魔法って有るんだよな?
そう言うのが使えるのは、どう言った職業なんだ?」
「はあ? おいおい大丈夫かお前。
そんな、子供でも知ってるような事を今更聞いて来るなんざ……
まさか『
「そんなんじゃねーよ! チョットど忘れしただけだ、とにかく教えてくれ」
「まあ良いけどよ〜」
……
成程。
回復魔法ってのはやっぱり有るのな。
でも、それを使えるのは極稀に存在する『女神の
「じゃあギルドに居たりとかは……」
「そんな所にポンポン居る訳ねーだろ! 『女神の御子』を何だと思ってんだ、国に護られるレベルだぞ?」
「マジか〜じゃあ俺達みたいのが怪我したら、どうやって治すんだよ」
「んなもん、切る、縫うに決まってるだろ」
普通に外科手術かよ!
せめて回復薬とか無いのか?
って言うか、攻撃魔法は割と一般的っぽいのに、何で回復魔法は発達してないの!?
「あ〜あくまで緊急用だが、クスリも無くは無いぞ。
これを飲めば痛みを忘れて死ぬまで戦い続けられる……」
「ホントにあんのかよ! つーかそりゃ回復薬って言わねーよ!」
「戦えるって事は動けるって事だ、つまり他の仲間を抱えて逃げる事だって出来る。
もしお前らに万が一の事が起きたら、俺はその薬を使ってでもお前らを助けるぞ」
「ルイ……」
何このイケメン。
今まで筋肉だのゴリラだの思ってて済まなかった。
これからはちゃんと人間扱いするよう努力します!
「ま! そんなクスリも有るって話しだが、実際お目にかかった事は無いし、有ったとしてもバカ高くて手は出せないだろうがな!」
そう言うもんなのか、こりゃ旅の間は怪我に気を付けないとな。
前回も危なく死に掛けたし……
ん? いやいやこれ夢だぞ?
俺ってば何本気で心配しちゃってるかな〜
夢の中で怪我しようが、何しようが関係無いじゃん!
……関係無いよね?
それはさて置き、そうなるとわざわざギルドに行く用事も無くなった訳だが、どうしたもんか。
まあ単純にギルドってのがどう言う場所なのか気になるってのは有るし、観光がてら行ってみるのもアリか。
しかしギルドか、やっぱこの世界にも有るんだな!
所謂冒険者ギルドってやつだろ?
いよいよゲームっぽくて良いね〜
「あ〜そうだ、ところでレムは?」
「レムはリリと一緒に買い出しに出てるぞ、この前の戦闘で
「チャージ?」
「お前……まあ良い。
良いか? チャージってのは魔法の杖に特定の魔法を封じ込めて置く事だ。
本来魔法を使うには、とんでも無く長い呪文の詠唱とモノによっては七面倒臭い儀式を行ったりと、とにかく時間が掛かるんだよ。
当然そんなもん戦闘中には使えんわな、それを瞬時に発動させられる様に、前もって呪文やら儀式やらを済ませて、纏めて杖にブチ込んで置く。
後は杖に魔力を流し込んでやれば、魔法が発動するって寸法よ」
「そいつは便利だな! じゃあその魔法の杖が有りゃ誰でも魔法を使えるって事か!」
何だよ、そんな可哀想な人を見る目で俺を見んな!
知らないんだから仕方無いだろ!
「それがそう簡単な事じゃ無いんだよ、先ず魔法を発動させるのに使う魔力は、本来の手順で魔法を発動させる時と変わらないってとこだ。
だから、魔力の少ない奴じゃそもそも魔法を発動出来ない」
「そうなのか、じゃあルイは使えるのか?
この前『
「ありゃ魔法じゃ無ねー、お前の『脳加速』や『
んん? 魔法以外にも特技ってのが有るのか?
俺の『脳加速』や『次元収納』も特技って事は、他の人には使えない物って事か?
「な、成程。でも今の説明だと、魔力さえ有れば魔法を発動させられるんだよな?」
「残念ながらそうもいかん。
大前提として『発動させられる魔法は、使用者が実際に唱えられる魔法』に限るからだ。
つまりレムは杖なんか無くても、時間を掛けりゃ魔法を使えるんだよ」
「なんと! じゃあレムは……」
「おう、生粋の
すげー!
レムこと来小野木さん、メチャカッコいいキャラじゃん。
羨ましい〜俺も魔法とか使って見たい〜
「まあそんな二足の草鞋を履けるのも、レムがエルフだからだがな。
何せアイツらの寿命は気が遠くなる程長いからよ、剣だろうが魔法だろうが修行に充てられる時間はほぼ無制限だ」
「やっぱ魔法覚えるのって時間掛かるのか?」
「そうだな、素質にもよるがウン十年って掛かる事も有るらしいぞ」
「マジか……レムって実年齢はいくつなんだ?」
「命が惜しく無いなら自分で聞いて来い」
よーく分かった、レムに歳の話は絶対にしないでおこう。
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