第5話 パーティーメンバーができた日
この世界には魔王のようなものはいない。それを知ったのは、この街に来た時に初めて知った。そのため、日常は大して荒れていなかった。しかし、魔物はいるのでいたずらや人を襲ったりと迷惑をかけるのでギルドと冒険者が存在している。
このことを知って未来は、こう考えていた。
「私が書いていた小説の設定通りだわー。」未来は、自分の設定ミスに心底ガッカリした。本当は、魔王討伐ものの主人公になりたかったのだ。
未来は、大魔法を行使した後、冒険者によって宿に運びこまれて寝かされていた。目覚めた時、知らない天井が見えたのでまた違う世界にでも転生したのかと思っていたがそうではなかった。
未来が目を覚ました時1人の冒険者が声をかけてきた。
「大丈夫か?昨日大魔法を使った後フラフラになっている体でよろけながら立ち去ろうとしてたから宿を紹介して一緒にいったんだが、途中で倒れたんだ。心配したぞ。」
「どうもすみません。ここは宿ですか?お代を払うのでどれくらいかかったか教えてください。」
「いい。いい。気にするな。昨日助けられたお礼ということでチャラにしてくれていい。」
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきます。」
未来は、疑問に思っていたことを冒険者から聞き、先ほどのことを知った。未来はその冒険者に名前を聞いた。
「あのー冒険者さん。お名前を聞いてもいいですか?」
「俺か?俺はルイだ。よく女と間違われる」
男っぽい風貌はしているが、顔は女性に似ているタイプだった。がたいも細マッチョタイプで防具の上からだとほとんどそのように見えない。女性に見えてもおかしくはない。
「こんな顔立ちでも俺は男だからな」
「そちらさんの名前も聞いていいか?」
「私は、未来です」
「珍しい名前だな。職業はウィザードってところか?」
「違うんですよ。このかっこではあるんですが、ハイウィザードなんですよ。」
「上級職か。なんで初期装備のようなかっこをしているんだ。」
事情をルイに話したら、ルイはびっくりしていた。
「そんなこともあるもんなんだな。適正レベルがEXだったら上級職に一気にジャンプアップできるのか。まあそんなやつはお前さんを除いてはいないとは思うがな」
「なんでですか?」
「考えてもみろ。なんで皆下級職から始めるのかというと、適正レベルを上げたいからだぞ。そんなやつがゴロゴロ居たら今の上級職不足は起こってないんだよ。」
未来は、新たな疑問が生まれたので、ルイに聞いてみた。
「そんなに上級職が足りてないんですか?魔王とかいないなら上級職はそれほど必要ないのでは?」
「何を言ってるんだ。他国が攻めてきたり、強い魔物が街に入ってきたりしたら上級職しか対応できないだろうが。」
「そういう事情があるんですね。私は、ミゼルスシティから来たのでこの国の領土内なので、そういったことに駆り出されることはあるんですかね?」
「おそらくあるだろうな。だから防具や武器などはちゃんとしたものを使っておけ。」
「防具とか武器と言われても何を使ったらいいか分からないんですよね。」
「じゃあ防具屋や武器屋などいっぱいあるからいいところを紹介してやる。」
「ありがとうございます。」
今まで未来は、初期装備と武器は魔法書で対応していた。これが未来が手加減できない原因になっていた。ちなみに防御力が極端に低いのもそれが原因となっている。当然のことである。
未来は、ミゼルスシティで上級職の装備がなかったため、こんな状況になっていた。初期装備で全く傷付くことがなかったのが不思議なくらいだった。
「体力は回復したか?じゃあ飯食ったら宿の前に集合だ」
ルイは、食堂の方に向かって行ってしまった。未来も食堂に向かった。しかし、食堂は相席するしかない程度にはいっぱいになっている。食堂で空いている席を探していたら、偶然とルイの隣の席が空いていた。
「相席していいですか?」
「いいぞー。って未来か。」
「一緒に食って一緒に出るか。」ってルイは言う。
「そうしましょうか。」と未来。
一緒にご飯を食べ終えて各自支度を終えてから宿の前に集合した。
「今日一日は、武器屋と防具屋を回るぞ。」
「お願いします。」
一日未来の武器と防具の買い物をして、目的のものを買いそろえた。ルイに武器屋と防具屋の回り方を教えてもらいながら未来は買い物を進めていった。ルイのおかげで武器と防具については必要なものはそろった。
何を買ったかというと、ローブと杖である。ローブは、ハイウィザードが身に着ける耐魔のローブを購入。そして、杖は魔法書を装備できるものを購入した。威力重視のスタイルだが前のように手加減が利かないということはない。
ハイウィザード用の魔法ばっかり乱発していたから手加減が利かなかったということを知ってからは、下級のウィザードから使える魔法を多用するようになったからである。
装備を変えてから、かなり魔法をコントロールすることができるようにもなったので狩りなども問題なくできるようになった。
ある日、ルイとまた同じ宿になった。その時に未来は、ある申し出をした。私とパーティーを組んでもらえませんか?
ルイは笑顔で「喜んで引き受けるわ」と返答した。そしてギルドに行ってパーティー登録をして旅に出て、初の未来にパーティーメンバーができた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます