第4話 新たな街へ

ミゼルスシティを出てまず何をしていたかというと、狩りをして食料調達をしていた。未来は、こういった狩りにはめっぽう向いているタイプでソロでも十分過ぎるほどのスキルを持っていた。


次の街に着くまで大体1週間といったところで、今は草原の道を歩きながら狩りをしている。出てくる魔物は、当然未来には敵わない。そのため、肉になったりポーションになったりするしかない。


狼型のウルフやウサギ型のフットラピットなど、雑魚といってもいい魔物しかミゼルスシティ周辺にはいないので、初心者にも安全な地帯になっている。ほとんどここで魔物にやられるということはない。


もちろん。上級職の未来にはそんな敵など魔法一発で消し炭にできるが、まず狩りのために戦闘を行っているので消し炭にしたら、意味がない。手加減が利かない未来にも流石に分かっていたため、最新の注意を払って戦っていた。


主に使っていた魔法は、火力が抑えられる魔法。炎系統は持っての他である。そのため、未来は氷系を選択していた。氷系なら威力を間違えても消し炭になったりしないからである。


未来は、氷魔法で凍らした魔物を常温で解凍するしかないため、一日目は何も食べられなかった。2日目の朝は木に火を焚いて調理した魔物を焼いて食べたり、虫系の魔物からのエキスでポーションを作ったりして過ごしていた。


今日も何事も起こらず、ただ草原の道を歩いているだけ。疲れたら休憩をして次の街を目指す。ただそれだけの事でも未来は、ワクワクしていた。こんな世界を歩いて旅をするなんてことを日本にいたらまずできなかっただろう。


未来の欲求は、旅をすることで完全に満たされていた。3日ほど歩いて辺りで山道に入った。街に行くためにはこの山を越えなければならない。この山からはある程度の魔物が襲いかかってくる。


未来自身もここの山でクエストをこなした経験はあったものの、少し緊張感はある。理由は、未来は魔法攻撃の才能はあるが極端に防御力が低いからである。そのために、防御魔法や支援魔法を自分にかけて防御を行っていた。


山の中には、敏捷が高い魔物もいないこともない。魔法攻撃で対処できなかった場合懐に入られてしまったら詠唱している時間だけでもダメージを食らってしまう可能性はある。


防御が低いという弱点を補うための大火力魔法である。精霊魔術や召喚魔法を使うこともできるが、どうしても大きく魔力を消費してしまうためできるだけ使わないようにしていたことを思い出す。


山に入ってからは、しばらく暗闇が続くため草原に生えていた木から松明を作り、進んでいた。ちなみに木は松明用に10本ほど枝を持ってきている。この山の洞窟を半日くらいかけて抜ける必要がある。抜けた後は夜になっているだろう。


ただ洞窟のなかで寝ることはできないので、早めに抜けるために比較的急いで出口に向かっていた。洞窟の中には、ゴーレムやこうもりなどの魔物が生息しているため、下手に休憩もしていられない。


未来は、洞窟の中腹辺りでゴーレムに遭遇してしまった。ゴーレムは、敏捷に優れないので、未来の相手ではないが防御力が異様に高い魔物である。比較的威力が高い光魔法で対処することにした。


「ホーリーランス」光の矢がゴーレムに向かって放たれた。ゴーレムは、避ける術もなく光の矢がささった。


ゴーレムは、一瞬で弾け飛んだ。一撃で戦闘は終わってしまった。他にゴブリンやこうもりなどにも遭遇したが、ほとんど心配することもなく倒せてしまった。


素材や食料の調達ができたので、今日の食事には困らないくらいだった。未来は、山を抜けるのに、20体ほどの魔物と遭遇して無傷で7時間ほどで山を抜けることができた。


山を抜けたときもう外は、夜になっていたため食事をとって寝る体制をとる。しかし、今日の天候はかなり良かったらしく星を眺めることにした。未来は、東京に住んでいたため、星を見るのはかなり新鮮だった。


「綺麗」未来は思わず声が出てしまう。東京では、星を見ることはできなかった。この世界に来て初めて星を見たのである。綺麗な星の風景を見て、心穏やかに眠りにつくのだった。


またしばらく草原が続き、森を抜けて少し歩いたら次の街が見えてきた。次の街に着く直前で事件が起きた。その事件というのが、大量の怪我をした冒険者が門の前で治療を受けていたのである。


おそらく、これほどの規模の人数だと中に収容できる場所がなかったのだろう。回復魔法を使える冒険者が少なかったことから、治療がほとんど進んでいなかった。


「回復魔法を使える人はおりませんか?」ギルド職員が街に入る人に声をかけていた。もちろん。未来にも声がかかった。未来は、ギルドの依頼という形でクエストを受注して治療にあたることになった。


未来は無料でやるといったが、ギルドがそれを許さなかった形である。未来は、固有魔法を使って治療をこなした。どんな魔法かというと、フィールド回復魔法である。エリア内にいる人に光の雨を降らしてそのエリア内の人間を回復させるというものである。


その魔法の名前は「慈愛の雨」これは未来が、独学をしていた時に偶然回復と雨に関連を見つけて開発した誰も使える人がいない魔法。ここでもどれだけ未来が規格外であるかが分かる。


流石日本で暮らしていた時に神童と言われていただけある。光の雨で怪我をしていた冒険者はみるみるうちに回復していき、やがて元気になった。未来は、1人で50人近くを救ってしまったことになる。


かなり奇跡だった。未来は、治療を終えるとすぐにその場を後にしようとした。それだけ目立つのが嫌だったのである。しかし、大勢の冒険者が未来にお礼を言ってきた。


「ありがとう」ほとんどの冒険者が未来にお礼を言った。冒険者であれば、あれだけの大魔法を使えば、どれだけの魔力を消費するか分かっているからである。洞窟で魔力を消費して全て回復もしていない状態で大魔法を使ったため、未来の疲労はピークに達していた。


そのため、立ち去ろうとした時によろめいてしまった。ある冒険者が、自分が泊まっている宿を紹介してくれ、その宿まで連れていってくれた。疲れがピークに達してしまったからか、歩いている途中で意識を飛ばしてしまった。


そのタイミングで未来を一緒にいた冒険者が抱えて、宿へと戻っていった。未来は疲れはあるが、いい顔をして寝ていた。その冒険者は宿に着くおと未来の分の会計もして部屋のベッドに寝かせた


「ありがとう」

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