第23話 第三位
セカンドの死亡から3日後
都内にでかでかと構えられたビル、その大きさはホロウ株式会社よりも横にも縦にもでかいそのビルは外壁が黄金で塗りたくられており、太陽の反射によってより一層輝いて見えるそのビルにの目の前に立つファイは見上げながら目を細めた。
「相変わらず悪趣味なビルね、ほんとどんな考えを持てばこんなビルを作れるのかしかしら」
「さて、あいつは元気かな」
「第三位”ジュエリースリー”、金がすべてみたいなやつが私達の提案に乗ってくれるかしら?」
「必ず応じてくれるさ、あいつは金の大事さも知っているけど、なによりヒーローとしての誇りを大切にしている、大丈夫きっと乗ってくる」
ワンは少し俯きながら笑みをこぼす。
「無理しなくてもよかったのよ、私が行くから、あなたは会社に帰ってナインズ、七、テンヒの三人とゆっくりしていても止めないわ」
「だめだよファイが一人だけで行ったら誰が君を止めるんだい?それにこれが終わったら一緒に原宿に行くと約束したじゃないか」
「そうね!そのためならワンがどれだけ感傷に浸っていてもかまわないわ!」
大人げなくはしゃぐファイを横目に「少しくらいは心配してくれても………」と大きなため息をこぼした。
「さて、冗談はさておき行きましょうか」
「………あぁ、行こう」
ワンとファイは同時にジュエリースリーが保有するビルに足を踏み入れた。
瞬間鳴り響くびーっびーっという警告音、けたたましくなるその音に二人は思わず耳をふさぐ。
「うるさっ!なんなのこれ!」
「随分なおもてなしじゃないかスリー」
ワンが眉をしかめながら、自動ドアのその先、ただっ広い黄金に光るエントランスのその先にある、ド派手な赤色のエレベーターから降りてきたのは全身を宝石で彩った、褐色のがたいのいい男だった。
白いタキシードを身にまとい、分厚いサングラスをかけたその男は優雅に鼻歌を歌いながら警告音なり響くエントランスを堂々と歩く。
もはや周りの職員らしき人達は慣れているようで微動だにせず、悠長に自らの業務にいそしんでいた。
目の前に立ったその男の身長はワンの身長のおよそ二倍はあるだろう。首を下に傾けて、サングラスを傾けその獣のごとき荒々しい瞳が姿を現す。
「うーん!ミスターワン!久しぶりだーねっ!」
「あーほんと、なるべくなら君に会いたくなかったんだけどね」
「そんなことを言うな、さみしいじゃないか」
なれなれしく肩を組んでくるジュエリースリーの手をうっとうしそうに払う。
「なれなれしく触るのはやめてくれ」
「おいおいひどいじゃないか君のいちファンである僕からの熱烈なスキンシップをそんな風に流さないでくーれよっ!!」
ばっと後ろに体をそらしながら思いっきりワンの背中を叩く。体が揺れたワンは眉をへの字にしたまま冷たい視線を投げる。
「ほんとっ暑苦しい人間だね、君」
「お前の前だけさ、僕は興奮しているんだーからっ!」
「消えてくれないかなーほんと」
「ひどいじゃーないかっ!」
「ははっ」
白すぎて眼を閉じたくなるような歯を見てワンは乾いた笑いをこぼす。
そして密着する二人に隣のああの女が我慢できるはずがなく………
鋭い眼光をジュエリースリーにぶつける。それを意に介さず飄々と笑いながらスリーは眉を吊り上げる。
「スリーなぜワンに触れているのかしら?」
「うーん?そりゃあ友好の証だからさーあ!」
「いちいち勘に触るしゃべり方するのね、いいから手をどけろと言っているの」
「それを僕が聞かなきゃいけない理由は?」
「聞かないと死ぬからよ」
足に力を入れたファイは包丁を片手に瞬時にスリーの後ろに回りこむ。それをまるで目で追えていないように見えたスリーを見て(獲った)と勝利を確信したファイは顔に笑顔を浮かべる。
「あー、いいねっ!」
「あ?がっ!」
ファイは急激に重くなった自分の体を支えられず、地面に叩きつけられる。赤いカーペットの上に落とされたファイはその勢いのままに地面にひびを入れ、カーペットとファイはそのひびに吸い込まれていく。
「んー!血気盛んなのはいいことだ、だがね互いの実力を測れないのは弱者だーろうっ!」
「がっ!こんの重力使いが」
ファイは地面に這いつくばりながら決死の抵抗をしようと試みているがジュエリースリーの作る重力場によってまるで動けずにいた。
「僕の作りだす100倍の重力には並の人間じゃ歯が立たないだろうーねっ!」
「くっ、くっそ!」
「やめてくれないか?この後デートの予定があるんだ」
怒気を含んだ声色でワンがスリーを睨みつける。
「おー!ソーリー!でも殺そうとしてきたのはそっちだーろうっ!」
スリーは依然として余裕の表情は崩さないながらも重力の能力を解く気がなかった。
「あぁそうだね、それは謝るよ、ねぇファイもわかってくれるよね?」
ワンは重力で押しつぶされているファイの前でしゃがみ、笑みを浮かべ優しく語り掛けた。
「いやよ!そいつはワンに触れたのそれは重罪っ………ごめんなさい」
ファイはワンの無言の圧に負け、まるでハムスターのように頬を膨らませ媚を売るように上目遣いをする。
「スリー、私はあなたが何をしようと手を出さないと誓うわ」
「んー、一体なーにがあったのかーなっ」
ワンの後ろ姿しか見えなかったスリーは状況の把握ができずにいたが特に何も考えず能力を解く。
「ありがとうございます、今後はこのような真似は一切しないことを誓います」
重力が解けたかと思えばスリーの前で土下座し始めるファイを見てスリーは一歩後ろに下がった。
「本当に何があったのかーなっ」
スリーが視線をワンに移すとそこには不適に笑うワンの姿があった。
「ははっ、応接室に案内しよう」スリーは苦笑いを浮かべるほかなかった。
・
エントランスとは打って変わって落ち着いた茶色で染められたその部屋は真ん中に木目状の机が一つ置かれており、その机の両端に赤いソファーがある。
足を組み、胸を拡げながら座るスリーは一粒の汗をたらしながら目の前に座るワンに向けて口を開く。
「ふむ、ほんとにいいのかーなっ、彼女ハムスターみたいに縮こまっちゃってるけど………」
「よくあることだよ」
「あーそーかいっ」
ファイは応接室の端で縮こまりながら「くしくし」とピーナッツを前歯で砕きながら食べていた。
この状況にはヒーロー界の陽キャことスリーにとっても気まずさを感じずにはいられなかった。
「さて、じゃあ話をしよう」
ワンはファイの方には見向きもせずに会話を始める。
「うーん、まぁ今日ここに来た目的は見え透いているけーどねっ」
「そうなのか、じゃあ腹の探り合いはやめよう僕が今日君に会いに来たのはね、同盟を結ぶためさ」
「だろうーねっ、やはりそれはセカンドの死に関わっているのーかなっ」
無作法に踏み入るスリーの言葉にワンの眉毛がぴくっと動いた。
「そうだね、前僕の会社を襲った異端者クイックリンパサー、いや革命軍の目的がわからないのさ、最初は第8幹部ポン・カーネを奪還することだと思ったけど、第2回目の襲撃時にはポン・カーネとはまるで関係ないセカンドの暗殺だった、目的に一貫性がないのさ、まぁ奪還するために殺したともいえるけどね」
「フームっ確かにねっ!」
「けどね、クイックリンパサーの能力は煙を出す能力もしくは煙になる能力だとセカンドは言っていた、そんな能力を持っているのなら僕の会社からポン・カーネがどこにいるか、そして連れ出すことも可能だったはずだ」
「でもしなかーったっ、だろ?」
「あぁ、そして単に僕たちヒーローにびびっているわけじゃない、ぬぐえない不安が僕たちに纏わりついているんだ」
「それで同盟ねっ!だが今のところこっちにとってのメリットが見当たらないーんだがっ!」
ふはっと笑いながらスリーは天井を見上げる、というよりもワンを見下ろす。
「メリットならあるさ革命軍の目的がもし、ヒーローの殲滅だとしたらどうする?」
「うーんっそうか、確かにーねっ、今のところホロウ株式会社だけを襲っているように見える革命軍が急にこの僕に牙を剥くかもしれないーっとっ!そしてもし牙を剥かれたときにワン、君は僕のことを助けに来てくれるというこでいいかーなっ!」」
足組を解き、ワンの事を見つめるスリーの顔はサングラスのせいでよく見えなかったが口角は下がっていた。
「あぁ、悪くない条件だろう?」
「………いいかワン、僕たちヒーロー会社は市民の皆様の支援の上に成り立っている」
「うんそうだね」
急に何の話をしているんだとワンは首をかしげた。
「けどね、本当なら市民達も願っているのさ、お金を払わずとも、助ける利益がなくとも助けてくれるヒーローの存在を、それに元より特撮のヒーロー達はそういうものだっただろう?」
スリーは呆れたようにはっと短く笑った。
「けどヒーローは仕事として誕生してしまった、これがどういうことかわかるかい?」
ワンは依然としてスリーが言っている内容をつかめず首を振る。
「ヒーローへの価値観が変わってしまったということさ」
「それがどうしたの?しょうがないじゃないかヒーローだって人間だ、お金がないと生きていけない」
「生きてはいける、生活保護でも受ければいい、そしてたまにもらえる助けた人からもらったお菓子とかを食べて贅沢をするのさ」
「それはあまりに辛いことだ、それにそれを君が言うのかい?」
「ふっこれはその助けた人達からのお返しの塊さ、私はねもらったものはすべて身に着ける主義なんだ」
淡い笑みを浮かべながらスリーは指にはめていた指輪を抜き、ワンに見せびらかす。
「これは2年前、銀座五丁目の渡辺さんを強盗から助けたときにもらったものさ」
「そしてこれは渋谷の池ちゃんからの………」と次々に自分の身に着けているものを脱いでいく。そして最後に残ったのはワイシャツと真っ白なスラックスだけだった。
「そしてこのビルは親が残してくれた遺産さ」
「そうか、君のその装飾はすべて誰かからの………」
上に来ていた厚手のスーツまでも脱いだスリーのその姿はスーツを着ていたときとは比べ物にならないほど細かった。
「私はね、ヒーローとはかくあるべきだと思っているんだ、けどね君の言うようにすべてのことはそんな綺麗事じゃ済まない、すべてを救うには人員がいる、権力がいる、そしてそれを手に入れるにはお金が必要なんだ、どうあがいてもね」
「あぁそれが現実だ、この世界はフィクションではないのだから」
「それでもいてほしいと願うのさ、皆の理想を体現するような、そんな最高のヒーローの存在を………」
スリーは力なくソファーの背もたれに腰掛ける。
(僕はねワン、君がそんなヒーローになってほしいと思っているんだ、だってあのとき僕を助けてくれた君の笑顔は誰よりも理想のヒーローを体現していた)
(なのに今の君はなんだ、同盟だから助けるって、ふざけているのか?)
8年前、人造人間という言葉がまだ浸透していなかった時代、その時代は力におぼれた人間によって悪が跋扈していた時代、止まることなく悪が流動し、止めるべく正義はほとんど介在していなかった。
この時代から人造人間が急速に増え始めたのは自衛をするためという理由もあるだろう。
そんな時代にジュエリースリーこと八島蓮はただのヒーローオタクとして、そしてただの一般人として生きていた。
・
「ふふっ今日もヒーローフィギア買っちゃった」
全く今の世論は「人造人間になるべき」みたいな流れだけど、俺はなるより、見る派なんだー。
「今日もいっぱいヒーローアニメを………」
それは歩いている僕の視線を強制的に持っていった。ただのヒーローの衣装が飾られたショーケース、どこにでもあるようなありふれた仮面をつけた全身タイツの衣装だ。
「いやいや俺じゃなれるわけがっ」
そうやっていつも目を背ける。自分の気持ちに気付いていながらその気持ちに蓋をして、蓋をしている癖に仕事の帰りにはいつもこの道を歩いてしまう。
「お母さんっ!僕あれほしい!」
「っ!」
「僕ねっヒーローになりたいっ!」
俺の後ろを通ったのはただの親子連れだった。その親子連れのすれ違いざまの少年の言葉が俺をえぐった。
「………現実はそう上手くはいかないんだよ」
手に持っている革製の仕事用バッグを強く握る。
「もう帰ろう」
いつも通りアスファルトを眺めながら歩を進める。歩く度に見えるくたびれた革靴を見て眉を顰める。
「だれかぁぁぁぁぁっ!!」
そのとき響いたのは誰かの絶叫、思わず頭を上げて周りを見渡す。そして俺は見た、目の前から走ってくるナイフを宙に浮かせ振り回しながら走ってくるフードをかぶった男がいた。
近くにいた人はナイフで切り刻まれ、血を流して倒れている。は、始めて見た、人が倒れているところなんて………
なんだよ、くっそ、俺は何も悪いことはしてないぞ、なんでっ!
「くっっそ、なんなんだよあいつ」
逃げよう、そうだ早く逃げて、家に帰って特撮でも見て心を落ち着かせよ………っ。
「なんなんだよ、もうっ」
振り返って逃げようとしたときに目の端に先ほどの親子が映った。母親の方は腰が抜けたようでまともに立てておらず、少年が母親をかばうように通り魔に向けて仁王立ちしていた。
違うだろっ俺はヒーローじゃないだろ、自分のことだけを考えろよ、俺はただの一般人なんだ。
「お母さんには手を出させないぞ!僕はヒーローになるんだ!」
「幸人逃げて!」
「いやだ!僕は全部を守るんだ皆、皆守るんだ!」
くそ、あぁそうだよ、俺もヒーローになりたかったよっ!
「あっそ、まぁとりま死ねば?」
振り下ろされたナイフは僕の背中に刺さった。
「おにぃさん?」
少年のとぼけた顔が目の前にある、まったく助ける方がこうもぎりぎりだと少年も不安だよな。だって俺今多分笑顔じゃないもん。
ははっかっこよく助けるつもりがただかばうだけになっちゃった。
痛いなぁ、死ぬほど痛い。部活でこけたときだってこんなに痛くなかったぞ。
「大丈夫?」
「んーあぁ大丈夫さ俺はね、最強の社会人だからね」
「何お前、死にたいの?」
ははっ、最期くらいヒーローだって名乗ればよかったなぁ。
「死にたくない………」
「ざんねーん♪お前は今から死にます」
あぁ怖い、いやだ、まだ見たい特撮がいっぱいあったんだ、こんなことしなきゃ見れてたのになぁ。
「大丈夫、僕が来たよ」
柔らかい声が僕の後ろから聞こえた。
「なんだお前?」
「ヒーローさ」
「はっ!お前みたいなガキがヒーローの真似事かぁ!?ウケるわ!」
恐る恐る振り返ると俺の後ろには俺の座高よりも小さいまだ年端もいっていないような少年がそこにいた。
止めないとっ、こんな少年があんな成人した大人に勝てるわけがない。
「君もこっちにっ」その次の言葉は少年が伸ばした腕によって遮られた。
顔を見ればそこには不敵の笑みが浮かんでいた。
「小学六年生、
「はっ!俺様は小学生相手でも容赦しないぞ?」
「うん僕もどんなに弱いやつでも手加減はしないよ」
「あっはっはっ俺が弱いやつねぇ、はっはっこのガキぃ!!」
「君っ!」
俺はそう叫ぶしかなかった。けど少年を止める必要はなかったんだ、だって勝負は一瞬でついたのだから。
一撃、少年が体をひねってくりだしたその一撃はナイフでガードしただけで油断していた通り魔の男にクリーンヒットし、ナイフを砕いて通り魔を吹き飛ばした。
吹き飛ばされた男は生垣に突っ込み、足をぴくぴくさせている。
「うっそ」
意図せず言葉が漏れていた。それもそうだろう、俺よりもはるかに年下の少年が大の男を吹き飛ばしたのだから。
「ねぇ君」
「え、俺?」
まさか小学生から”君”と言われるとは………。
「うん君かっこいいな、ヒーローとから向いてると思うよ」
清々しいと思うほど綺麗な笑顔だった。
「っ!!」
その言葉は今まで言われたどんな言葉よりもうれしかった。この人から言われた言葉だったからうれしかった。
今は悪が跋扈する時代だ。誰もがその悪に恐怖する、そんな時代にまったく無関係の人のために悪と戦って、そして打ち破ってしまうなんて、そんな、そんなのまるでヒーローじゃないか。
「お兄さん!さっきは助けてくれてありがとう、その背中、大丈夫?」
「え、あ、いったぁぁぁぁぁぁっ!!!」
急に激痛が再発した。くぅアドレナリンでも出ていたのだろうか。
「さっきは本当にありがとうございました、私救急道具を持っているので治療します」
助けた少年が俺の体を支えるように手で押さえてくれながら、母親が俺の背中の治療を始めてくれた。
「うん傷は浅いね、これなら致命傷には至らないと思うよ、けどあっちの人達は………」
少年は犠牲となった人達を見て少し俯いた。
「あ、あなたのせいじゃない、そこで倒れている通り魔のせいだ、あなたが憂うことじゃ………」
「それでも僕は全部を救うヒーローにならなくちゃいけないんだ」
「あなたはヒーローだな、これあげるよ」
「ん?これは?」
俺は腕につけていた20万相当の腕時計をその少年に渡した。
「社会人のたしなみというやつさ」
「あはっ、色々大変なんだね社会人も」
少年は笑った、その笑顔は僕の背中に走る痛みを少し和らげてくれた気がした。
少年は腕時計をその場でつけて僕に見せてくれた。
「ねぇ似合ってる?」
「あぁ似合っているよ」
「にひっ!大事にする、ありがとね」
「それはこっちのセリフだ、俺の方こそありがとう」
「いいって、ヒーローとして当たり前のことしたまでなんだから」
少年は手と一緒に首を振った。
「じゃあまた会おうね」
そう言って彼はどこかへ行ってしまった。またどこかで人を助けているのだろうか、いやきっとそうさ、だって彼はヒーローなんだから。
そして僕は会社を辞めてヒーローになることを決意した。
僕は比較的暗い人間だったから、まずは人を安心させるような笑顔の作り方としゃべり方を学ぼうとした。
色々な本を見て学んだ。今ではもうかなり明るいキャラになっていると思う。
それから僕は人造人間手術を受けた。手術の結果僕の能力は重力操作というものになり、巷では大当たりと言われる能力の一つだった。
僕はその重力操作を使ってヒーロー活動をつづけた、続けていくうちに能力の使い方にも慣れていき、救える人の数も増えていった。
そして僕は第三位にまで上り詰めた。まぁ第一位の人間があのときの少年だと知ったときはかなり驚いたけどね。けど未だに僕があのときあげた腕時計をつけていたのはうれしかったなぁ。
・
(なぁワン、君はそんな人間じゃなかっただろう僕を助けるから自分のことも助けろだと?違うだろヒーローとはそんなものじゃないだろう)
(同盟なんかしなくても僕は君がピンチのときは助けに行っていた、そして僕がピンチのときは助けに来てくれると思っていた、なのに君というやつはっ!)
「今の君とは同盟なんか結びたくない、今の君はヒーローじゃない」
そこで茫然とするワンを目にする。
「………あぁそうかやっと気づいたよスリー、君あのとき少年をかばっていたかっこいい最強の社会人じゃないか」
「!!、それ覚えてっ」
「忘れるわけないだろう、あの社会人とヒーローとしていつか再開できればいいなと思っていたんだから、まさかもう再開していたとはね、雰囲気が変わりすぎてわかんなかったよ、あとでサインでも書いてあげようか?」
「あっはっはっ、うーん実にうれしいねーえっ!」
スリーは天を仰ぎ目頭を押さえる。
「スリーごめん、同盟はやめだ」
「え」と思わず拍子抜けした声が漏れる。
「僕達はヒーローだもんね、同盟だから助けるんじゃないよね、相手が誰であろうとも助けるのがヒーローだ」
「ワン………」
「これ僕の連絡先、もし僕の助けが必要なときここに連絡して飛んで行くさ、その代わり君の連絡先をもらってもいいかな?」
「もちろんだーともっ!!」
スリーはソファーにかけてあるスーツから自分のスマホを取り出し、ワンと連絡先を交換しあった。
「じゃあ僕はここらへんで帰るよ、ほらファイ行くよ」
「へけっ!!」
「じゃあなワン!また会おうーっ!!」
「あぁ、また」
ワンと四足歩行になったファイはそのまま部屋を出ていった。振り返るときのワンの顔はげっそりしているように見えた。
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