第7話 ヒーロー達(ごめんなさい!課題に追われて更新遅れました)
数時間前ナインズを含めたヒーロー数名が革命軍の第八支部のビルの前に集まっていた。
「やぁ急な招集なのに来てくれてありがとう」
朗らかな笑顔が印象的なこの少年、ヒーローネームはワンといい、彼は見た目年齢12歳くらいの身長にもかかわらず実年齢23歳という合法ショタとして有名である。
「あんたからの招集命令を無視する命知らずがいるかよ」
少し粗暴な言葉遣いではあるがその言葉にはワンへの敬意が垣間見えた。
ここ日本にはヒーローランキングというものがある、それは全ヒーロー会社から選ばれた、上位10名のヒーローの格付けのことを指す。
審査するのはヒーローの実力のみ、名声や人間性などは度外視したただの実力のみで選ばれたのがヒーローランキングというものだ。
彼らはナンバーズと言われ、人々に尊敬と畏怖を与えている。
「で?なんで私達を呼んだのかしら?」
礼服を着た包丁を舌に当てながら喋る器用なこの女は第5位”ファイ”ヒーローの中で一番ぶっ飛んでいると言われている女である。大人っぽい雰囲気を持ちながらも今までやってきたことはシリアルキラーとなんら変わらない残虐的な犯罪ばかり、なぜそんな人間がヒーローをやっているかは長くなるので今は語らない。
「それはね、君たちにはこの第八支部を中心に半径5キロ以上離れて監視してほしい」
「理由はなにぃ?報酬はぁ?ていうか監視ならすでにしてるじゃない」
「ある人物がこのビルに入っていった、君たちに頼みたいのはその人物の監視だ、報酬はないよ、あと監視は続行してるけどその人物はとんでもない人間でね、不測の事態に備えて君たちを呼んだんだ」
「報酬なしで私が動くと思う?」
包丁を人差し指と親指でつまみながらワンの首筋に当てる。冷ややかな包丁の感触に情人なら身震いが起こるだろう所をワンはただめんどくさそうにため息を吐く。
「しょうがないなー、デズニーランドに連れてってあげるよ」
「………いいわぁ、その依頼受けてあげる」
「ありがと、ファイ」
優しく語り掛けるように言うワンの言葉にファイは持っていた包丁を下ろし、舌を舐めまわす。
「他の皆もいいよね?」
「一つ質問だワン」
「なんか犬みたいだね、ナインズ」
「それは仕方ねぇだろ!!?」
頭に血管を浮かべながら、拳を握りしめナインズは立ち上がる。
「で、質問は何?」
急かすようにワンが聞く。
「俺は待ちきれないかもしれないぜぇ?」
ニヒルな笑みを浮かべるナインズに対してワンはそうくると思ったように口角を上げる。
「もとより君が我慢できるとは思ってないよ、どうせさっきの話も聞いてなかったんでしょ?」
「あぁやっぱり大好きだよあんた」
ナインズは嬉しそうに目を細めた。
「あーでも一つだけ気をつけて、第八支部には抑止力がいるからね」
「ヨー・ヘイか」
「そう、あの傭兵がいる限りあの第八支部に手を出すことができない、まぁそれ以外にも理由はあるけどね」
「まぁどっちでもいいけどよぉ、突撃していいときは命令してくれよぉ」
ヒーローに抑止力とも呼ばれるヨー・ヘイの能力は強力だ、”ブラッティソード”は対能力者最強、しかも質が悪いのが自らを雇ってくれそうな場所に住み着くのだ。
だがその住み着く性質のせいでヒーローが近づかず、そのせいで仕事が入ってこないのだ。
「まったく、あの傭兵にも困ったものだ」
眼鏡をくいっとしてかっこつけるのが趣味の青年である彼、ヒーローランキング第7位”
「七、君は黙っていてくれないか?」
「………ふん」
七が喋りだしたらだるいを知っているワンはそれを止めようと少し口調を強めにして注意する。対する七はむんつけたのかを口をとがらせる。
「じゃあ俺は先に行って待機でもしてるぜぇ」
それだけを言い残して足に筋肉を移動させたナインズは一気に跳躍し、ビルの屋上に激しい音を立てながら着地する。
「行っちゃった………」
「じゃ、じゃあワン様?いいんだよね?始めていいんだよね?」
「うん、始めてくれゲマズ」
竹を握りしめた小柄な女性はおびえたように声を震わせながら竹を振るった。瞬間竹の先から出てきたのはなんの変哲もないただの葉っぱであった。
その葉っぱは風に乗りながらゆらゆらと第八支部の入口に入っていった。
「ねぇさっきから気になってたんだけど、そのゲマズ?って子は一体だれなのよ?さっきからびびってばっかりでヤっちゃっていいのぉ?」
ファイがけだるげに包丁を持ちながらワンに問いかける。
「彼女の能力は結構便利でね、飛ばした葉っぱと視覚を共有できるんだ」
「は、はい、ワン様のストーキングをしようと思っていたら、できた能力です、けひひひひぃ」
「それはいらない情報だよ、ゲマズ」
気色の悪い笑い方をするゲマズに注意をするワン、だがファイはゲマズに謎の親近感を沸かせていた。
(この子とはなぜか仲良くなれそうな気がする)
「よろしくね、ゲマズちゃん?」
「は、はひひひひぃぃぃぃ!!」
差し出されたハサミを持った手に対し、ゲマズは竹の先っちょだけを優しく当てた。ここに大分異様な握手が完成していた。
「ふっそういえば言い忘れていたが今宵は新月らしい、何かが起こるかもな」
「なぇねぇ、あなたワンのどこが好きなのぉ?」
「ふへぇ?そりゃもちろん顔………や!言っちゃった!」
「………いやあまりにも普通」
三者三様に騒ぐ彼らに呆れながら、これからの展開を憂い、ワンはため息を吐いた。
「はぁ」
・
そして時は現在に戻る。崩壊した壁の淵に立ち、第八支部幹部のポン・カーネの首元を雑に持つワンは下にいる、ただの少年を見下ろす。
「その後に君がヨー・ヘイを倒したことを確認してナインズを向かわせたんだ、さて、というわけで君にも僕が所属しているホロウ株式会社に来てもらおうか」
「いやどういうわけだ、今の話で俺がお前らについていかなきゃならない理由がないだろう」
「君は僕たちの仲間であるナインズを傷つけた、理由はそれで充分じゃないかな?」
「はぁ?お前んとこのこいつだって俺の大事な人を傷つけたんだ、なにもヒーロー様が一般人である俺を捕らえる理由にはならねぇはずだろ?」
「それでもね、君は捕えなくちゃならないんだ」
「そうか、それがお得意の”正義”とやらか?」
「そうだよ、これが理不尽な”正義”さ」
「そうか、なら俺がこれから理不尽なことしても文句ないよなぁ?」
「ふっ、かもね」
余裕を込めた笑みを浮かべるワンに冷や汗を流しながらも少年は力を込めて大きく跳躍する。
「いきなりボスはとれねぇだろうよい、だっけ?」
「がっ!」
一直線にワンに向かっていた少年に横やりをさしてきたのは第五位”ファイ”、靴裏につけたとげを容赦なく突きつける。吹き飛ばされた少年は風を切りながら空中を高速移動する。
「おー、いいボールが来た来た」
そして飛んだ先にいたのは第七位七、彼はニヒルな笑みを浮かべて拳を握りしめる。
「ぶっ飛ばすよぉ、”エンドレスセブン”」
七がそう静かに言いながら飛んできた少年の横腹にめり込むくらい強力な一撃を叩き込む。反転して逆方向に突き上げられた少年の体は二転三転する。
「行くぞ!」
第七位”七”の能力は範囲が自分に見える範囲でのクールタイムのない瞬間移動、つまり、相手の体を突き上げる、打ち上げられた相手の体を打ち落とす、どちらも可能にするということ。
「すっ!」
ばん!ばん!ばん!と、体を打ち上げられては落とされ、打ち上げられては落とされてを繰り返す、しかし無限に続くかと思われたその攻撃は突如打ち止めになった。
横方向に蹴りを入れ、少年の体を近くの家の外壁にぶつける。けたたましい音を立てながらがらがらと壁は崩れ落ちていく。
「どう?手ごたえはあった?」
「いや、まったくないな、まるでダイヤモンドみたいな体だ、まるで新月が泣いているようだ」
「それどういう意味よ………」
七の隣に立ったファイがため息交じりの言葉を漏らす。
「つまり、化け物ということだ」
「今度はわかりやすいじゃない」
二人が目を細めて眺めている少年はむくっと立ち上がった後、口角を歪めて………
笑った。
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