番外編① 罰ゲーム

 これは、本編より少し前の話。二階堂の視点で進みます。



 私は二階堂未奈美。いわゆるギャルだ。友達の三橋凛、四宮結衣とGENSHIで遊んでいた時のこと。


「ねえ、今からLogos行かない?」


 凛の提案で、私たちは近所のファミリーレストランに行くことになった。安定してうまいことに定評のあるLogosという店だ。


「未奈美も行くでしょ?」


 結衣が私に聞いてくる。断る理由もなかったし、もちろんOKした。


「ああ、もちろん行く」


 ☆


 私たちが店に着くと、一枚の張り紙が目についた。


【大食いチャレンジ! 山盛りハンバーグ】


 Logosの大食い企画なんて初めて見た。ハンバーグか……。キツイ。


「ねえ未奈美、凛。これやってみない?」


 結衣がそんなことを言い出す。


「私は嫌だよ」


 凛は同然拒否した。


「私だって」


 食べたくないのはみんな同じだ。写真を見るに、食べ切れる気はしない。


「じゃあ、じゃんけんで負けた人が挑戦する。面白そうでしょ?」


 確かに、面白そうだ。凛も面白そうだと思ったのか、賛同する。


「分かった」

「じゃあ、いくよ! ジャーンケーンポン!」


 結衣がパー、凛もパーだ。私だけグーを出している。1人負けは決まってしまったようだ。


「ま……負けた……」

「未奈美! 頑張れ!」


 自分は回避したからと、無責任なやつらだ。


「失敗したら罰ゲームとかどう?」


 さらに余計なことを……。


「クラスの陰キャに告るとかは?」

「面白い!」


 おい! お前らふざけんなよ! なんで私がクラスの陰キャに告らなきゃいけないんだよ! 勝手に決めるな!


「まあ、やってやるよ……」


 決まってしまったものは仕方ない。私もやるときはやる。罰ゲーム絶対回避!


「この大食いチャレンジやります!」


 店員にそう申し出て、チャレンジメニューを頼む。


 ☆


 数分後、ついに大盛りハンバーグのお出ましだ。


「なにこれ……」


 見るからにやばい。ハンバーグの見た目は悪くない。香りも食欲をそそる。だが、これほど多いと話は別だ。ここで負けたらクラスの陰キャに告ることになる……。それだけは何としても避けたいところだ。


「じゃあ、頑張ってねー」

「写真撮ろー」


 凛と結衣が隣で見ている。もう逃げられないぞ……!


「いただきます」


 私はハンバーグに手をつけた。普通においしい。量以外は問題なさそうだ。だが、半分くらい食べたところで飽きが来た。もうこれ以上食べたくない……。


「未奈美ー! 頑張れ!」

「未奈美ならいけるよ!」


 そんな声が聞こえたが、私はそっとフォークをテーブルに置いた。無理だ。食べられない。こんな拷問紛いの料理は生まれて初めてだ。これを完食したやつはマジで尊敬できるわ……。


「やっぱ無理……」


 そう呟くと、凛と結衣がこう言った。


「罰ゲーム決定!」


※この後、ハンバーグは凛と結衣がおいしくいただきました。


 ☆


 休み明け、クラスの陰キャに告る日だ。同じ陰キャでも、できれば顔がマシなやつがいい。一条とか。(かっこいいわけではない)

 とりあえず、ラブレター的なのを書いてきた。一条の下駄箱に入れておく。


『放課後、中庭に来て』


 としか書いてない。それしか書くことがなかった。


 ☆


 放課後になった。そろそろ来るかな? と思っていたら、本当に来た。走って来たのか息切れしている。


「私だよ。早く来いよ」

「あ、あの……二階堂さん?」

「なんだよ。ちゃんと目見て話せよ」


 キョドっててキモい。あと、キョドっててキモい。大事な事だから二回言った。


「私と付き合え」

「えー!?」


 まあ、一条が驚くのも無理はない。私ほどの女から告られるなんて。


「返事だけはして」


 後ろから凛と結衣が見ている。クスクス笑っているのが分かる。

 一条は嬉しかったのか、ニヤニヤしている。


「なにニヤついてんだよ! キモいなー!」

「あ……すいません……」

「それで、答え。早く」

「あ、あの……その……」

「早く!!」

「あっ……はい……お願いします……」

「はいはい、よろしくよろしく」

「う、うん」


 こうして私は一条と付き合うことになった。今までの彼氏の中で一番イケてない。罰ゲーム告白なんだから仕方ない。今から一ヶ月、耐えるのだ。

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